「ドラえもん」「キテレツ大百科」「パーマン」など、数々の国民的まんが作品を生んだ藤子・F・不二雄。その作品原画や関連資料などを展示する文化施設、川崎市 藤子・F・不二雄ミュージアムは、2023年の生誕90周年を機にユニホームを刷新した。製作を担ったのは、ユナイテッドアローズだ。施設側の担当者である道場絵里子チーフは、「ユナイテッドアローズは藤子先生の作品の上品かつさりげない遊び心と通じるところがあると感じた」と話す。(この記事は「WWDJAPAN」2026年4月20日号からの抜粋です)
川崎市 藤子・F・不二雄ミュージアム
ユナイテッドアローズ

POINT
・「ドラえもん」を想起させる“藤子ブルー”が基調
・ネクタイには人気キャラのシルエットをデザイン
たどり着いたのは「寄り添う」デザイン
ユナイテッドアローズの法人向けユニホームレーベル「ID ユナイテッドアローズ」で企画を担当する鈴木脩(すずき・まなぶ)デザイナーは、「最初はテーマパークの制服のようなものをイメージしていた」と明かす。しかし、同施設はあくまで美術館。「施設の大事なコンセプトは、かつて子どもだった大人たちへの恩返し。先生の作品を連想させる品のあるたたずまいは外せないポイントだった」と道場チーフ。単に目を引く“コスチューム”でもなければ、ブランドらしさを前面に押し出す“ファッション”でもない。作品の世界観に溶け込みながら、施設の顔としての品格と特別感を担う、そのバランスが求められた。
鈴木デザイナーは、あらためて藤子作品を読み込んだ。「作品に登場する主人公は、完全無欠のヒーローではない。独特の優しさや完璧ではない人間らしさが根底にあると気が付いた」。社内で約4カ月ほどのコンセプトワークを経て出てきたキーワードは、「寄り添う」。子どもから大人、訪日客まで幅広い来場者に寄り添うデザインが軸となった。
着用者はアテンドスタッフ、ショップスタッフ、カフェスタッフ。動作時も肌が見えない丈感や、性別や年齢を問わないシルエットなど、実用性を追求した。その上で、ネクタイにはキャラクターのシルエットを忍ばせ、エプロンには“四次元ポケット”を想起させるディテールを配し「さりげない遊び心」を表現。基調となるカラーは、“藤子ブルー”だ。
「僕たちが制服を手掛ける最大の意義は、着る人の心を動かすエモーショナルな部分だ」と鈴木デザイナー。ステッチの糸の太さやのりづけの仕上げといったわずかな差異にもこだわり何度も工場とやりとりを重ねた。
完成した春夏用制服の好評を受け秋冬用の制服も手掛けることに。「何よりスタッフのモチベーションが違う。結果として離職もしにくくなっていると感じる」と道場チーフ。鈴木デザイナーは、「施設の世界観と自分たちの知見が、最も良い形で融合した事例だと思う」と自信をのぞかせた。