PROFILE: 福垣学/社長

「ポール・スミス」で知られるジョイックスコーポレーションは、今年11月に設立55周年を迎える。2025年4月に就任した福垣学社長は、同社が培ってきた歴史と顧客基盤を大切にしつつ、新しい種を蒔くことの重要性を強調する。最大のテーマは20〜30代の次世代顧客の獲得だ。
主力の「ポール・スミス」で
次世代顧客の獲得に挑む
WWD:11月に設立55周年を迎える。
福垣学社長(以下、福垣):1982年の「ポール・スミス」導入に始まり、「ランバン コレクション」「ランバン オン ブルー」「ザ・ダファー・オブ・セントジョージ」「サイコバニー」を全国の約200店舗およびECで展開してきた。個性的なブランドをマーケットイン発想と高水準なモノ作りで磨き上げる。これが半世紀以上もお客さまに支持されてきた当社の強みである。
WWD:主力の「ポール・スミス」をどう再成長させるか。
福垣:ロイヤルティーの高いお客さまに支えられているブランドだが、半面、顧客の年齢が次第に上がり新規の若い世代の獲得が一番の課題と言える。現在、顧客分布の山は40代後半。今後は20〜30代に「ポール・スミス」の良さをもっと知ってほしい。「ポール・スミス」を全く知らない人、あるいは知っているけれど購入したことがない人たちにアプローチしたい。
取り組みは既に始まっている。一つは日本独自企画。ディフュージョンライン「PSポール・スミス」では2025年秋に「ジャパン リミテッド プロジェクト」を開始した。ボリューム感あるアウターやボトムスなど若い世代の流行も取り込み、好評を博している。二つ目は人気ブランドとのコラボ商品。スニーカーの「リーボック」「コンバース」、デニムの「リー」、キャップの「ニューエラ」とのWネームの商品は話題を呼び、新しい層へリーチできた。中でも10月の「バブアー」とのコラボ企画“ポール・スミス ラブズ バブアー”は、10月の単月売上高を押し上げるほどだった。「リーボック」「コンバース」「リー」「バブアー」は伊藤忠グループが担うブランドである。グループの強みも生かし、26年も魅力的なコラボを予定している。
WWD:20〜30代にリーチする武器を増やすと。
福垣:さらに言えば20歳前後の大学生も狙いたい。24年ホリデーシーズンのキャンペーンにSEVENTEENのジョンハンを起用したが、これは20歳前後に照準を合わせた販促策だった。25年ホリデーシーズンでは、フォロワーがそれぞれ数万規模で特定の分野に強いマイクロインフルエンサーを100人以上起用し、発信力を高めている。主力販路である百貨店の店舗だけでなく、ファッションビルや駅ビルなど若い世代が多く訪れる場所へのポップアップ出店も積極的に行っていく。
WWD:若い世代に何を買ってもらうのか。
福垣:入り口として大切なのは、服飾雑貨だ。価格で言えば財布などの革小物は2万円以下、ジュエリーは1万円以下で比較的買い求めやすい。革小物やバッグ類はそれまでサブライセンシーの企業に任せていたが、25年からジョイックスが製造・販売する体制に変更し、よりマーケットインの商品を提供できるようになった。服飾雑貨を入り口にしてファンになってもらい、スーツやジャケットといった重衣料にも袖を通してほしい。スーツでは8万円台のエントリープライスを充実させている。「ポール・スミス」ファンの50歳前後の父親に連れられて、成人式のスーツを買いに来るケースも少なくない。そんな継承ができるのも、このブランドの魅力だ。
WWD:「ポール・スミス」以外では?
福垣:26年は「ランバン」のメンズ部門が誕生100周年の節目となる。当社の「ランバン コレクション」「ランバン オン ブルー」もこれを契機にマーケティング施策でブーストをかける。両ブランドとも段階的にリブランドを進めている。ウサギとスカル(どくろ)のキャラクターで知られる「サイコバニー」は、新規顧客のためのシンプルな商品を増やす。長年の顧客の期待に応えるために、気がつけばキャラの濃いデザイン、インパクトの強い商品がだいぶ増えていた。一方でキャラが濃すぎて新規顧客の間口が狭くなってしまった側面がある。
WWD:福垣カラーは出せているか。
福垣:ジョイックスには長年培われてきた社風がある。コンバースやレリアンといった事業会社で社長をした経験上、突然やってきたリーダーが「俺の言うことを聞け」では社員の共感を得られないことは分かっている。大切なのは目線合わせだ。私よりも経験豊富な社員たちの意見をよく聞き、ジョイックスの考え方を理解する。その上で変えるべきことは変える。誰でも自分の意見が言い合える環境にしたい。その意味で私はムードメーカーを心掛けている。ファッションの会社は明るく楽しい雰囲気でなければ、面白い発想なんて出てこない。店頭だって笑顔で接しないとお客さまは買ってくれない。ジョイックスは喜び(JOI)と未来(X)を掛け合わせた社名だが、福垣流に解釈すれば喜びMAXでジョイックスとしたい。喜び最大級。楽しく仕事をして結果を出す。そんな環境を整えるのがトップの仕事だ。
個人的に今注目している人
私は大阪生まれで根っからのタイガースファン。就任1年目に独走でセ・リーグ優勝に導いた手腕に驚いている。岡田前監督から引き継いだ戦力が整っていたからなのか、それとも彼自身のマネジメントの賜物なのか。熊谷敬宥ら抜擢した選手がことごとく期待に応えているのもすごい。追われる立場になる26年は藤川監督の真の指導力が試されると思う。可能な限り、球場に足を運んで応援したい。
1971年11月設立。82年に英国ポール・スミス社と提携。その後、海外の複数のブランドとパートナーシップを結び、現在日本に約200店舗を運営する。2025年3月期の売上高は293億円。伊藤忠商事のグループ会社の一つ
ジョイックスコーポレーション
03-5213-2500