ファッション

山本耀司が示す、自らの目で体験することの大切さ 「ヨウジヤマモト」とスタジオジブリの名曲に見る共通点

山本耀司は82歳の誕生日を迎えた10月3日、「ヨウジヤマモト(YOHJI YAMAMOTO)」2026年春夏コレクションのショーを開いた。会場は、ウィメンズでは恒例となっているパリ市庁舎のホール。それぞれの座席には、1枚の黒いカードが置かれている。

カードに記されていたのは、「Yohji Yamamoto encourages you to be present and experience the presentation with your eyes rather than your screen. Let the moment, the movement and the clothing speak to you — they are meant to be felt with your senses, not merely digitally recorded」(「ヨウジヤマモト」は、今この瞬間に集中し、画面ではなく自らの目でプレゼンテーションを体験することをお勧めします。その瞬間、動き、そして服があなたに語りかけるままに — それらは単にデジタルで記録されるためではなく、あなたの感覚を通して感じ取ってもらうためにあります)という文章。それはスマートフォンで撮影することが当たり前になり、多くの観客が会場にいるにも関わらず小さな画面越しに服を見ているという、ある意味“異様“なファッション・ウイークの現状に対するデザイナーとしての抵抗だろう。その思いを汲み、ショー中にスマホを掲げるゲストはいつもより少なかった。

山本は以前から年々暑くなる夏に向き合い、シアー素材や素肌を見せるデザインなどのアプローチを見せてきたが、今季も薄く透け感のある素材を多用。ダイナミックな書を白でプリントしたドレスに始まり、布を結んだり重ねたり編み込んだりといった手法から生地が解いたような糸状のフリンジ、控えめにきらめくビーズ刺しゅう、素肌をのぞかせるカットまで多様なテクニックを生かし、黒を軸に白と赤を交えたアシンメトリーなスタイルを作り上げている。それは、山本が促したように、実際に目を凝らして見ることで初めて味わえるものだ。

また中盤には、親交のあったジョルジオ・アルマーニ(Giorgio Armani)への追悼を捧げる2ルックを披露。その一つには、アルマーニが山本に送った50周年記念ショーへの招待の手紙をプリントし、背面には「ジョルジオ アルマーニ」の象徴的なキャンペーンビジュアルをあしらった。さらに昨シーズンに続き、娘の山本里美がデザインした「リミ フゥ(LIMI FEU)」のルックも4体登場した。

今回のショー音楽は、スタジオジブリ(STUDIO GHIBLI)作品のために作られた楽曲のカバーが中心となった。「おもひでぽろぽろ」の「愛は花、君はその種子」、「千と千尋の神隠し」の「いつも何度でも」、「天空の城ラピュタ」の「君をのせて」、そしてジブリ作品の曲ではないが山本自身が歌った秋川雅史の「千の風になって」と、じんわりと心に染み渡るメロディーは「ヨウジヤマモト」のクリエイションと通じるところがあるように感じる。今回のショーは、いつも以上に強い余韻を残した。

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