「ゴアテックス(GORE-TEX)」は防水・透湿・防風性を備える素材として、アウトドアシーン向けのシェルとしてはもちろん、街着のアウターとしても支持を広げている。同ブランドは2025年秋冬で、全製品をPFAS(ピーファス)フリーに切り替えた。これに合わせ、日本ゴアは登山家の竹内洋岳氏、渡邊直子氏を招いたトークイベントや「ゴアテックス」製品の修理受付などのイベントをメディア関係者向けに開催。本国WLゴア&アソシエイツのサステナビリティ担当者によるプレゼンテーションも実施した。
PFASは1万種以上あるとも言われる有機フッ素化合物の総称で、安定性が高く水や油をはじく性質が重宝されて、衣料品のはっ水・防水加工にも長らく使われてきた。しかし、分解されづらく環境残留性が高い点が指摘されており、欧州や米国の一部州で規制やそれに向けての議論が進んでいる。
「ゴアテックス」では、まずは生地表面の加工に使うはっ水剤を18年からPFASフリーに順次切り替え、防水・透湿・防風性能のキモであるメンブレンと呼ばれる膜についても、PFASフリー化を模索。PFAS不使用の延伸ポリエチレン(EXPANDED POLYETHYLENE、略称ePE)のメンブレンを開発し、22年秋冬から一般アウトドア向け製品で切り替えを始めた。25年秋冬に、極限のアウトドア環境での着用を想定した「ゴアテックス プロ」製品もePEメンブレンに完全に切り替え、これによりPFASフリーを達成した。
WLゴア&アソシエイツのサステナビリティステークホルダーエンゲージメント担当というマリー・マウェ氏はプレゼンテーションで、製品のライフサイクルアセスメントにおいて、「製品をリサイクルをすることで減らせる環境負荷は最大でも20%であり、それよりも製品の耐久性(durability)を高め、長く使い続けることが重要」と強調。課題として、「衣服の耐久性を測定する業界共通の評価方法がない」ことを挙げ、スウェーデンのミッドスウェーデン大学で行われている機能性テキスタイルの研究に、「ゴアテックス」をはじめアウトドアブランドやワークウエアメーカーなど45企業・団体が参加していることなどを紹介した。
ePEメンブレンへの切り替えで、防水・透湿・防風性能は以前と変わらないが、フッ素化合物由来のはつ油性だけは失われる。ゆえに、洗濯など日々のケアが耐久性向上のためにはますます重要となる。それで、世界の8000メートル峰全14座の登頂に日本で初めて成功した竹内氏と、日本女性初の全14座登頂者である渡邊氏という、「ゴアテックス プロ」製品愛用者を招いてのトークショーを行った。
竹内氏は、1996年のエベレスト・K2連続登頂時に着用していた、「ゴアテックス」使用の「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」のシェルを紹介しつつ、「あえてコインランドリーで、洗剤なしで洗う」という自身の「ゴアテックス」製品ケア方法を紹介。日本女性初の8000メートル峰全14座登頂者の渡邊氏は「私は手洗い派」と紹介しつつ、遠征中にシェルが破損した際のケア方法なども語った。