米国発のハンズフリーシューズブランド「キジック(KIZIK)」が日本に本格上陸した。丸紅コンシューマーブランズが独占販売代理店契約を結び、主にECで売る。5月18日まで、東京・代官山でポップアップを開催している。
「キジック」は2017年、マイク・プラット(Mike Pratt)により誕生した。ハンズフリーシューズのみの取り扱いながら、直近3年間の米国における累計販売個数は300万足を突破。実業家のイーロン・マスク(Elon Musk)やミシェル・オバマ(Michelle Obama)元米大統領夫人の着用でも話題になった。元々はECブランドだったが、現在はソルトレイクシティーやボストン、フィラデルフィアなど米国内に約10店舗を構えている。今春には、日本を初めとする東アジア、イギリスやフランス、イタリアなどの欧州、中東や東南アジア、カナダまで事業領域を拡大した。
ハンズフリーシューズとは、その名の通り「手を使わずに履けるシューズ」のこと。近年、妊婦やシニアを中心に人気が高まっており、その熱は日経MJが発表した「24年ヒット商品番付」にもランクインするほど。日本でブームとなるはるか前の17年からハンズフリーシューズを手掛けていた「キジック」を、丸紅コンシューマーブランズの木下陽平 経営企画室 副室長は「ハンズフリーシューズの先駆者的存在」とアピールする。
「キジック」は、一足のシューズを作るために、200以上の獲得済みまたは申請中の特許技術を使用している。その技術力の高さはナイキのお墨付き。立ち上げから2年目となる19年にナイキから出資を受けてライセンス契約を締結し、ハンズフリーシューズシリーズの開発を支援してきた。
代表的な技術は、“スプリングバックヒール”だ。一般的なハンズフリーシューズは、かかと部分が靴ベラのような構造になっているため、履きやすいが脱げやすい。一方、「キジック」はかかと部分を潰すようにして履く。その際、“スプリングバックヒール”がバネ(スプリング)のように働き、踏んだかかと部分を一瞬にして元の状態に戻す。結果、足が固定され、フィット感が生まれる。木下副室長も「数あるハンズフリーシューズの中でも、脱げにくさまで徹底しているのは『キジック』くらい」と誇る。
一方、耐久性にも自信がある。「どのシューズも、かかと部分は3万回の脱ぎ履きに耐えられる樹脂素材を使用している。これは、1日に5回脱ぎ履きすると仮定して、10年以上履き続けられるほどの強度」と木下副室長。実際に、米国ではこれまで「脱げやすくなった」「かかと部分が壊れた」という声は届いていない。現時点でリペアサービスを提供していないのも、耐久性への自信の表れだろう。
「ハンズフリーシューズは
高齢者だけのものではない」
「キジック」のコア層は、仕事から子育てまで日々を忙しく過ごす30代女性で、一般的なハンズフリーシューズブランドと比較すると若い。トレンド感を抑えたデザインが功を奏していると分析する。一方、木下副室長は、「日本における最初のターゲットは効率性やスタイリッシュ性を重視するIT業界やスタートアップ業界の人。そこから知名度を上げていき、ゆくゆくは1億2000万人の日本国民全員に履いてもらえるブランドに育てたい」と顧客層のさらなる拡大に意欲的だ。
木下副室長は「日本には靴を脱ぐ文化が根付いている。『キジック』を受け入れる土壌がある」とブランドの成長に期待をかける。慌てて忘れ物を取りに帰ったとき、訪れた居酒屋が小上がりだったとき、日々積み重なるちょっとしたストレスを解決する術として、「キジック」を選んでほしいと語る。
今回開催するポップアップの会場は、訪日客で溢れる原宿や渋谷ではなく、日本人の比率が比較的高い代官山を選んだ。1ヶ月という比較的長い期間を設けたのは、より多くの潜在顧客とのタッチポイントを確保するため。主販路はECではあるものの、「『キジック』の良さは履いてこそ分かる」。今後も当面、積極的にポップアップを仕掛けていく考えだ。
◾️「キジック」ポップアップストア
期間:4月19日~5月18日
時間:11:00〜19:00
場所:東京都渋谷区猿楽町25-3