有力な素材見本市の一つである「プルミエール・ヴィジョン(Première Vision)」が2月11-13日にパリで開催され、126カ国から3万人が来場した。40カ国から1100社が出展した同見本市を、テキスタイルデザイナーの梶原加奈子KDS代表が、どこよりも早く詳細レポートする(写真・文ともに梶原加奈子)。
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コンセプトとテーマ
「プルミエール・ヴィジョン」の2026年春夏シーズンの全体をカバーするコンセプトは、「リフレッシュメント(REFRESHMENT)」。「暑い夏&長い夏」に象徴される温暖化は、日本だけでなく地球全体の大きな課題。「爽やかにする」「涼しくする」という意味での「リフレッシュ」は、そうした地球規模の課題へのメッセージだ。一方で、リフレッシュには「初期化する」「アップデートする」という意味もある。消費や生産における商慣習を見つめ直し、気候変動の解決を促そうという考え方だ。
会場は水や氷を連想させる透明感のある什器や、涼しげなサックスやミントグリーンをメーンカラーに使用。また、メーンビジュアルを筆頭にカラー同士が溶け合うような、境界線の曖昧な色合いを組み合わせた。
トレンドテーマは、1.RE-FRESH(リフレッシュ)、2.RE-SET(リセット)、3.RE-STORE(リストア=修復)の3つ。
トレンドテーマ1:RE-FRESH
主なキーワード:光沢感、シルバー、ミントカラー、サックスカラー、透明感、色落ち加工、薄い色のデニム
背景:温暖化などの解決に向けてテクノロジーや産業を刷新し、新しいエネルギーを吹き込むテーマ。製品や素材の開発、製造において気候や原料への影響が懸念されている中で、ファッション分野のサプライヤーにも規格や規制、モラルの遵守が求められている。
全体的にホワイトとミントグリーンの爽やかな色合いが多い。パステルイエロー、サックス、ラベンダーカラー、アイスグレーなど寒色系の微妙な色味が並び、涼しげな新鮮な色合いを演出。
ジャカードやプリント、レースの柄には、薄いグリーンを基調に透明感がある景色や植物柄が新しい柄として台頭している。
一方で氷をイメージした透明感やシルバー光沢も。透明感を表現するレースや光沢素材が打ち出されていた。また、白や生成りのオーガンジーで透け感がある柄物や透明素材のシワ加工、メッシュ加工も注目。
後加工系では顔料プリントして洗い加工をした使い古したようなビンテージライクな素材が継続。デニム素材は、ブリーチ系や加工系が強い。凹凸感などのデザイン性が高いものが台頭しつつある。
トレンドテーマ2:RE-SET
主なキーワード:コーラル(珊瑚色)、ピンク、カラフルな幾何学、レース、ツイード、大胆な花柄
背景:喜びや感覚的に感じとる瞬間を軸にテーマ。体験を喜びとし、ヘドニズム(快楽主義)の実感が、素材やテクスチャー、フォルムの表現に影響する。「自由」や「遊び心」という前シーズンから継続するトレンドを反映。また、バーチャルやデジタルによるイマジネーションの世界の高まりも反映。
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