PROFILE: 澤田宏太郎社長兼CEO

ゾゾタウン開設20周年を迎えたZOZOは、今年さらに進化する。来期に新たな取り組みの発表を予定し、事業領域の拡大のためM&Aにも積極的に取り組む。2026年ごろには独自開発のAI(人工知能)を用いてパーソナライズされた“似合う”を提案する次世代店舗のオープンを検討するなど、野心的で先進的な構想の実現に向け、アクセルを踏む。
「ゾゾタウン」開設20周年
来期に新たな取り組みを発表

WWD:2024年を振り返ると?
澤田宏太郎社長兼CEO(以下、澤田):ファッション業界全般に言えることだと思うが、天候には苦しめられた。3月は気温が上がらず春物が動かず、かと思えば4月以降に急に暖かくなり、それが10月、11月まで続いた。
WWD:いわゆる「長い夏」だが、対策は?
澤田:気温の変化に対してネットならではのスピード感で対応した。「ウェザーニュース」とのAPI連携やスマホのGPSと連携して、ユーザーの地域の気温に応じてプロモーションやリコメンドのアイテムを変えるような仕組みをスタートさせた。いわゆるパーソナライズだが、9月のように全国的に暑いと、それすらも効かない(苦笑)。ただ、天候に関しては万能で強力な解決策はない。0.01%でも改善できるような施策を10個、20個と積み上げていく。
WWD:抜本的な解決策はないものか?
澤田:そのアンサーの一つが、「メイドバイゾゾ(Made by ZOZO)」のような受注生産の仕組みだ。売れたものを素早く作ってお客さまに提供する、いわゆる無在庫モデルだ。現在の「メイドバイゾゾ」の仕組みをもっと磨き上げる必要があるが、結局はそこに行き着くと感じている。
WWD:コスメ販売の「ゾゾコスメ」は?
澤田:順調に拡大している。取扱高が100億円を超えた時点で日本最大級のコスメECにはなっていて、上期(24年4〜9月)も2ケタ増で推移している。ファッションとの併せ買いということもあってメイクアップが特に強い。ただ本来ECと相性が良く、収益にもつながるスキンケアをもっと伸ばしたい。コスメはこれまで培ってきたアパレルの施策やノウハウが生きる部分とそうでない部分は分かってきた。今はコスメならでは、ZOZOならではの施策や売り方を確立するステージだ。
WWD:26年ごろのお披露目を示唆している、AIと組み合わせた次世代店舗「シン・似合うラボ」の進捗は?
澤田:構想動画で見せた世界に一歩二歩くらいは近づいた。ただ、裏側のテクノロジーはかなり進んでいる。当社のAIエンジンは、基盤となる汎用AIに独自開発のAIを組み合わせて開発しているが、汎用AIが文字通り日進月歩で進化して、やれることが広がる。AIはとにかく進化が早い。動画で示唆した「“似合う”を提案する次世代店舗」は、実はかなり野心的な構想だったが、現在はかなり現実に近いものになっている。今のAIの進化のスピードを見ていると、いずれは誰かが実現する。そんな世界になりつつある。だから一番近い立ち位置にいるわれわれが最初にやらないと。売るための大まかなスキームは、ほぼ見えてきた。実装の際は、開発中のAIエンジンによる商品リコメンドだけでなく、ユーザーに対しておすすめする理由などを説明する「おしゃべりbot」のような機能も必要になりそうなことが分かってきた。すでにこの「おしゃべりbot」の開発にも着手している。
WWD:AIエンジンの実装はいつごろになりそうか?
澤田:開発中のAIエンジンは、「似合うラボ」店舗だけでなく、「ゾゾタウン」や「WEAR」も含めた全事業の基盤になる。ロードマップはあるが、公表する段階ではない。ただ、この数年で「ゾゾタウン」の売り方や使い方、見え方が大きく変わることになるだろう。
WWD:今後、服の売り買いはどう変わる?
澤田:人間が頭の中に浮かんだワードを検索するという時代は終わり、ユーザーをよく理解し、ユーザーに代わって行動する、あるいは相談相手になるような「AIエージェント」「パーソナルエージェント」の時代が近づいていることを実感している。ただ、一つの汎用AIが何でもする、とはならず、ファッションやビューティ分野にはそのアルゴリズムや特性を深く理解した特化型AIが必要になるだろう。この数年「ファッションの『こと』ならZOZO」と言い続けてきたが、AIでも同じことだ。
WWD:04年12月に開設した「ゾゾタウン」は20周年。25年をどう位置づける?
澤田:「ゾゾタウン」開設20周年を機に、来期から新しいサービスや機能、新企画など、派手に打ち出していく予定だ。この数年は「WEAR」のリニューアルや受注生産プラットフォーム「メイドバイゾゾ」などを通してファッション購買の上流から下流を強化してきた。いわば事業領域を縦に延ばしてきた。20周年の新たな取り組みは、もっと横に、つまりもっとウィングを広げ、新しいユーザーを取り込みたい。その一環でもあるが、M&Aも積極的に行う。専門組織をつくり、国内外の企業をリサーチしている。ファッションが中心になるとは思うが、今は特定の領域に絞らず、幅広く情報を集めている。
実現の可能性はゼロじゃない私の夢
ハイエースにバイク、自転車、釣り道具を積み込んで、全国を放浪したい。CEOになってからは、何も考えない時間がとても貴重に感じている。好きなものを全部積み込んで一人気ままに過ごしたい。
1998年に輸入レコードの通販を目的にスタート・トゥデイ(現ZOZO)設立。2000年1月に輸入レコードのオンライン通販を開始、04年12月「ゾゾタウン」スタート、07年12月東証マザーズに上場、12年2月東証一部(現東証プライム)に変更、19年9月にヤフー(現LINEヤフー)の傘下入りを発表。24年3月期の業績は商品取扱高5743億円、売上高1970億円、営業利益600億円、経常利益597億円、純利益443億円。従業員数は1681人(平均年齢33.8歳、24年3月末時点)
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