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特集 CEO2025 ファッション編

【クレイジー 森山和彦CEO】人生の節目に寄り添い、人や企業の未来を共創する

PROFILE: 森山和彦/CEO

森山和彦/CEO
PROFILE: (もりやま・かずひこ)1982年東京都生まれ。大学卒業後、人材コンサルティング会社で6年半勤務。2012年にCRAZY設立。組織づくりでは、全社員が入社時に自身の理想の生き方をプレゼンする“ライフプレゼンテーション”や人生を豊かに生きるために必要な休暇を1カ月取得できる制度“グレート ジャーニー”を導入するなど、ユニークな企業文化を育んでいる PHOTO:SHUHEI SHINE

“人生を祝う空間”を通じて新たな価値を創造する企業CRAZYが手掛けるのは、ウエディングからファッションやビューティの企業のイベントプロデュースまでさまざまだ。2025年は新たにさらなる事業拡大を図る。

イベント企画サービスなど
法人向けサービスで事業が飛躍

WWD:創業時からウエディングブランドの「クレイジー ウエディング(CRAZY WEDDING)」を手掛けているが、他の企業と異なる点は?

森山和彦CEO(以下、森山):その人の人生を祝うという独自の哲学をベースにしたウエディングを提供している。私たちが提案する結婚式では、従来見られる高砂も装飾もない。自社で運営する施設の「IWAI OMOTESANDO(以下、IWAI)」もグレーが基調の落ち着いた空間で、一般的な結婚式場とは異なる。オープン当初は疑問の声もあったが、今ではお客さまからの口コミ評価が高く、毎年予約枠が埋まる状況だ。追求したのは、主催者二人だけでなく、式場に集う全員が“祝う”ことのできる空間づくり。主催者から参列者に宛てた手紙を入れる“レターギャラリー”を設置したり、パネルには参列者の名前だけでなく紹介文を添えたりしている。“セレブレーションホール”は丸窓から外光が差し込むシンプルな空間で、花は一点、旬のものを飾るだけ。既成概念に捉われず、参列者が主催者二人の人生を知り、心から祝えるような空間づくりを重視した。

WWD:現在のブライダル市場をどのように分析するか?

森山:人口が減り、価値観が多様化している。結婚式を挙げない人が増え、間違いなく衰退産業の一つだ。ただ、その中における成長企業になれる余地はあると考える。

WWD:2024年を振り返ると?

森山:前年比130%増で過去最高の売上高だった。ブライダル事業に加えて始めた法人向けのサービス“クレイジー カルチャー エージェンシー”に注力。それが大きく伸長した。ビジネスの成功の一番の理由は社員。挙式するお客さまと同様に対法人であっても、一人の人間として深くつながり、企業やブランドの思想をくみ取りサービスを提供したからだ。

WWD:法人向けサービスとはどのようなものか?

森山:今までも、ブランドの展示会やイベントスペースとして「IWAI」を提供してきたが、イベントの企画段階から入るコンテンツづくりのサポートも増えている。重要なのは、商品の背後にあるメッセージやストーリーをユーザーが理解し、ファンになること。展示会やイベント用の空間は、「商品を美しく見せる」以上に「ブランド体験をどう届けるか」が大切だ。だからこそ、単なる会場提供ではなく、企業やブランドの未来を共に形づくるパートナーでありたい。ブランドを深く理解し、法人のお客さまと同じ目線で空間づくりをしている。

WWD:今後の課題は?

森山:23年にキャリアエージェント事業として“クレイジー キャリア”を始めた。法人向けサービスも、企業のカルチャーや組織まで踏み込んだプロデュース事業を拡大させる。また、「IWAI」に続く新たな婚礼会場を作るつもりだ。そのため、23年にブライダルと法人の運営を一体化した。今後、さらなる事業拡大に向けて、採用に注力する。

WWD:組織再編後の変化は?

森山:法人向けのサービスは23年春まで、社員やお客さまの紹介による受注の割合が5%程度だったが、24年には約6割まで伸長、8割を超えることもある。婚礼のお客さまがビジネスでも利用するなど、婚礼と法人事業の垣根を取り払ったことで、相乗効果が生まれている。

WWD:広告戦略は?

森山:創業時から大手結婚情報誌に出稿していない。体験価値を重視しており、口コミがビジネスに結びついている。昨年7月、表参道駅に「伝える勇気」をテーマにした交通広告を出した。「ごめんね」「ありがとう」「愛してる」という伝えることが難しい3つのワードに着目し、伝えたい人の気持ちを切り取って表現。シンプルな広告だったが、足を止めて眺めたり、携帯電話で撮影したりする人の姿が見られた。直接的ではないが、私たちらしいメッセージの伝え方で反響があった。

WWD:サステナビリティやダイバーシティーに関して注力していることは?

森山:20年からダイバーシティー&インクルージョン(D&I)に取り組む企業を認定・表彰する「D&I アワード」を複数回受賞している。23年からは、最高評価の「ベストワークプレイス」の認定を2年連続で取得。LGBTQや障害のある人の結婚式の支援はもちろん、多様性の感覚の共有やそれら人々の理解を深める研修などを実践してきた結果だと思う。

WWD:未来の可能性については?

森山:「IWAI」で挙式したお客さま向けに記念日のための宿泊サービス“クレイジー アニバーサリー”も提供している。結婚式がゴールではなく、節目節目でそれぞれの人生に寄り添ったサービスを提供したいという考えからだ。法人にとっても、そのような存在でありたい。

実現の可能性はゼロじゃない私の夢

『大きな愛に包まれた大家族をつくること』

家族の概念を拡張して、孫まで含めたら100人くらいの大家族をつくりたい。そして、家族みんなで帰って来られる家が欲しい。

COMPANY DATA
クレイジー

2012年設立。ウエディングブランド「クレイジー ウエディング」を運営。19年には東京・表参道に自社の施設「IWAI OMOTESANDO」をオープン。21年以降、大手業界クチコミサイト「ウエディングパーク」で、東京エリア900会場中で1位を3年連続で獲得。24年には人材エージェント事業 “クレイジー キャリア”の提供を開始するなど、人の人生に寄り添う企業としてサービスを拡大している


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CRAZY
0120-181-904