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特集 CEO2025 ビューティ編

【BCLカンパニー 大村和重カンパニーエグゼクティブプレジデント】主力ブランドの拡大と並行し、新領域に果敢に挑戦

PROFILE: 大村和重/カンパニーエグゼクティブプレジデント

大村和重/カンパニーエグゼクティブプレジデント
PROFILE: (おおむら・かずしげ)2007年、BCLカンパニーの前身であるB&Cラボラトリーズに入社。18年にBCLカンパニー国内事業部の事業部長に就任する。19年からカンパニーエグゼクティブを兼任し、21年6月にカンパニーエグゼクティブプレジデントに昇格。スタイリングライフ・ホールディングスの執行役員も務める PHOTO : KAZUSHI TOYOTA

スタイリングライフ・ホールディングスのビューティ&ウエルネス事業を担うBCLカンパニーは、主力ブランドの「サボリーノ」を筆頭に、生活者のライフスタイルに彩りを添えるコスメを提供している。2025年は「+1の発想で、美しさを塗り替え 毎日を彩る」という理念のもと、さらなる挑戦へ踏み出す。

「サボリーノ」を筆頭に
スキンケアカテゴリーが成熟

WWD:24年は主力製品の「サボリーノ」をリニューアルした。

大村和重カンパニーエグゼクティブプレジデント(以下、大村):「サボリーノ」は15年のデビュー以来、“朝用シートマスク”という新習慣を提案してきた。当時は、日本でシートマスク文化がどこまで浸透するか半信半疑だったが、若年層から年配層まで多くのお客さまに愛される製品となった。しかし、幅広い人に届けるチャンスはまだまだある。そこで、10年目を迎えるにあたり、お客さまのライフスタイルにさらに寄り添うべく、初のリニューアルを決断した。その一環として、ブランド認知度をさらに向上させることを目指し、テレビCM戦略を本格的に強化した。24年1月から秋にかけて3度放映したテレビCMでは、50~70代の新規顧客を開拓。「サボリーノ」の認知度が10%上昇しただけでなく、地方のドラッグストアでも売り上げが増加し、テレビの影響力を改めて実感した。まずは“知ってもらう”ことに注力した結果、売り上げの底上げにつながった。

WWD:第二の中核を担う「乾燥さん」も急成長している。

大村:21年に誕生した「乾燥さん」は、日本人特有の乾燥肌や敏感肌の悩みを、キャッチーなキャラクターで表現するなどして親しみやすさを強めたところ、乾燥に悩む人たちの共感を得られた。また、23年からインフルエンサーに取り上げてもらうなどして、急激に売り上げを伸ばしている。製品そのものの品質に対する信頼とともに、自然と口コミが拡散され、コアなファン層を生み出している。

WWD:この好調の波をどう次につなげていくか。

大村:スキンケア市場で安定した成長を続ける「サボリーノ」と「乾燥さん」という両ブランドが確固たる地位を築けたことは、当社にとって大きな成果だ。しかしここで安心しているわけではない。当社はチャレンジ精神が非常に強い会社だ。ニッチな市場を積極的に攻めていこうと考えている。24年はサプリ市場に参入し、4月に夜の美容プロテイン提案「オヤスミタンパク」を発売した。25年には美容機器の発売も予定している。化粧品だけではなく、ライフスタイル全体をトータルでサポートできる企業でありたい。まず日本の各市場でしっかり地盤を固めて、3年後には海外進出も見据えている。

WWD:海外戦略の現状と今後の方針は?

大村:中国、香港、台湾が厳しい中、EUや北米が好調だ。中でもドイツは50店舗で「サボリーノ」の取り扱いをスタートしたが好調に推移し、隣国のポーランドを含めると500店舗にまで広がっている。また、イタリアの見本市に出展した際も、ECや小売りのバイヤーからオファーが殺到した。EUなどでも韓国コスメが流行っているので、一巡してやや飽きが出たところにJビューティがうまく入り込めたと感じている。これを延ばすためには日本向けの製品を輸出するのではなく、ローカライズした製品が必要になってくる。チャンスのある市場なので、慎重に見定めたい。また、韓国コスメが席巻し、メード・イン・ジャパンの強みが薄れる中、“食”はまだまだ強い。インナービューティという分野は戦っていく価値や可能性を感じる。24年は世界的にビジネスとして戦っていくための戦略をスタートし、よい形で進みだすことができた。

WWD:競合の韓国コスメも勢いに乗っている。

大村:韓国ブランドに負けない“かわいい”ビジュアルとアイテム作りをする「カワイイプロジェクト」を立ち上げた。宣伝や営業などのメンバーも参加する。韓国では長期のブランド維持よりも3年程で大きな売り上げを狙う企業が多い。スピードで勝つために、現在1年半の開発期間を短縮し、3カ月から半年でトレンドに対応した製品開発を目指している。

WWD:未来にどんな可能性を見出しているか。

大村:BCLはアイデアの会社。これまで数々のアイデアを試し、その過程で多くの失敗も経験している。サプリや美容機器といった新領域においては、知見の不足を認識した上で、失敗を恐れず、その結果を次の改善へと結びつける作業を積み重ねていきたい。25年に限らず継続してチャレンジを続けていくが、それは根本に「人を笑顔にするものを総合的に提供できる会社になりたい」という思いがあるから。BCLが目指すのは、単に若さを追求するアンチエイジングではなく、年齢を重ねたその時々で、その年齢としてもっとも素敵でいられるライフスタイルを支えることだ。化粧品はもちろんのこと、健康をサポートできる製品にも注力していく。世代、ジェンダー、地域を問わず、全ての人が健康で笑顔になれるような製品を提供できる企業になることが理想だ。30、40年先を見据え、実現させるための基盤づくりに取り組んでいく。

実現の可能性はゼロじゃない私の夢

『自社製品を持って宇宙へ』

子どもの頃、宇宙飛行士になる夢を視力が基準に満たないため諦めた。でも、今なら別の形で宇宙に行くチャンスがあるのではと期待している。宇宙関連の製品を自社で作って、それを持って宇宙に行ってみたい。片道切符でもいいので(笑)。

COMPANY DATA
BCLカンパニー

1979年、ソニー・クリエイティブプロダクツの一事業部門として、フランス・スタンダール社との技術提携により、化粧品ビジネスに参入。96年、化粧品事業のさらなる拡大を目指し、ソニーシーピーラボラトリーズとして分社独立。親会社であるスタイリングライフ・ホールディングスと合併し、スタイリングライフ・ホールディングス BCL カンパニーを発足。「サボリーノ」をはじめ、「ベキュアハニー」や「ロアリブ」「乾燥さん」などのコスメブランドを擁する

TEXT : MIKI IRIMAJIRI
問い合わせ先
BCLカンパニー
0120-303-820