ファッション

奄美大島出身が語る、地方から飛び出して自分らしく生きる「EverWonderなライフ設計」

 人々の心に火を灯す機会を提供することを目的に、クリエイティブディレクターにGReeeeNのHIDEを迎えた一般財団法人渡辺記念育成財団は、EverWonderプロジェクトを発足した。構想中のプロジェクトは、同財団による「みらい塾」の奨励生が企画進行している。今回は、「みらい塾」奨励生で看護師の木田美智子が同郷の奄美大島出身者たちと「地方を飛び出して自分らしく生きる」をテーマにディスカッションした。

木田美智子「みらい塾」奨励生(以下、木田):今日は奄美大島出身で、現在は東京で自分らしく活動している方々にお集まりいただきました。故郷を離れて都会に出てきたきっかけや理由を教えてください。

若師孝之アンテナショップ「奄美」店主兼パーカッション奏者(以下、若師):大学のときに上京してパーカッションをはじめますが、それだけで食べていくことは難しく、色々な職を転々としました。現在は、居酒屋で奄美の料理を振る舞っています。本格的に飲食店で料理を提供し始めたのは10年前です。当時は、祖父が亡くなったときに故郷の奄美のことをもっと知りたいと思い、奄美料理に挑戦しました。最初は適当に作っていたんですが、次第に有名な店のインタビュー記事を読んで勉強して、パパイヤの漬物なども自分で一からちゃんと作るようになりました。たぶん、奄美の代表的な家庭料理「油素麺」は、東京なら僕のが一番美味しいです(笑)。

池田むつみ歌手(以下、池田):私は幼少期から歌手になりたいと思っていたので、18歳のときに音楽の専門学校に進学するため上京しました。進学先には八王子校と蒲田校があったのですが、都会での暮らしは不安だったので、八王子校に通いました。でも初めて八王子を訪れたとき、街頭ビジョンや人の多さに圧倒されて、間違えて「渋谷に来てしまった」と思ったんです(笑)。現在は、奄美の料理やお酒を提供するバーで働きながら、歌手活動をしています。

木田:私も18歳のときには芸能に携わる仕事に憧れていましたが、奄美の人は手に職をつけることを重要視するので、自分の想いをなかなか素直に伝えられませんでした。兄弟も多く芸能を学ぶための学校に進学することは経済的にも難しく、看護の専門学校に進んだんです。池田さんは両親の反対とかなかったんですか?

池田:もちろん大反対されました。高校生の頃から芸能の専門学校に進みたいと思っていたけれど、看護師や歯科衛生士、調理師など手堅い職につくべきと言われ、とても揉めました。

若師:奄美の人には歌が身近な存在だからこそ、音楽が仕事になるという発想があまりないですよね。

池田:そうなんです。どうしても芸能がやりたいなら、手に職をつけられる学校に進学し、放課後や休日に活動をしなさいと言われました。しかし、私は中学生のときから芸能への思いが強く、最終的には応援してくれました。

木田:お二人のように地方を飛び出して自分のやりたいことを実現するにはどうしたらいいと思いますか?また、そのモチベーションはなんですか?

若師:自分は特に何かをやりたかったわけではないし、今も夢があるわけではないのですが、色々なことを経験するなかで「おもしろい」と感じたことをやってみようという思いは強いかもしれません。パーカッションも、大学生のときに留学生の友人とダンスパーティーに行ったのに踊れなかったから、近くにあった打楽器をノリで演奏してハマったのがきっかけです。奄美の料理も好奇心によるところが大きいです。

池田:私は祖父の応援です。歌が好きになったのも祖父の影響。彼は「自腹で孫のCDを出す」と言って家族から猛反対されるほど、私を応援してくれています。一方で地元の友人をみていると、「仕事の選択肢が少ない」と思い込んでいる人や、一度島を離れても都会に馴染めずすぐに戻ってしまう人が多いなとも思います。

木田:私も手に職をつければ、島に戻っても仕事に困らないという周囲の考えに影響されて看護師になりました。もっとも看護師の大変さに何度も挫けそうになりましたが、逆に中途半端に島に戻れば後ろ指を刺されて恥ずかしいと思っていたので、頑張れました。

若師:今は奄美にLCCが飛ぶようになって、気軽に行き来できるようになりましたし、スマホで色んな情報に触れられる。島と都会の垣根はどんどんなくなっていますよね。

池田:いつでも帰れる場所がある安心感や、会いやすくなった地元の友達は、外に出て何か挑戦したい人にとって後押しになりますよね。

木田:いつでも帰れるという安心感があるので、自分の価値観を広めるためにも、みんな一度は島を離れて自分のやってみたいことに挑戦するのは大事ですね。島にずっといると、視野が狭くなってしまって勿体ないと思います。最後に、今後みなさんがやっていきたいことなどがあれば教えてください。

若師:自分は既にやりたいことを自由にやれているので、これからも変わらずにエンターテイナーであり続けられればなと思います。

池田:私は歌を通じて、奄美のことを多くの人に伝えられればと思います。歌い方が「島の人っぽい」と言われることが多いので、そこから興味を持ってもらえたら。また、黒糖焼酎という奄美のお酒がとても美味しいのでコラボイベントを開いて、奄美の人たちや奄美に興味を持ってくれる人が集まる機会を作りたいと思います。

木田:いいですね!私は仕事でメンタルヘルスの相談を受けることが多いのですが、原因の多くは孤独や無趣味なので、「みらい塾」で新しいエンタメやコミュニティーを作って、そういった課題を解決したいなと思っています。せっかくのご縁ですので、是非そのイベントを一緒に開いて、奄美の良さを伝えましょう!

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