「WWDJAPAN WEEKLY」11月1日号は“地方特集”。まだ見ぬ地方ブランドを発掘すべく、大西洋・羽田未来総合研究所社長と、高谷健太・山本寛斎事務所代表に向けたプレゼン大会を企画した。総計32社から選ばれた7社が、自分たちの魅力をオンラインで力説。ストーリーは異なれど、共通するのは「現状を打破したい」という熱い想い。そして、多くの人に知ってもらうためアクションを起こしたことだ。当事者のビジネスヒントだけでなく、小売店から消費者、媒体まで、地方の“良いもの”に意識を向けるきっかけになれば幸いだ。前編は、加賀友禅をファッションに落とし込むために奮闘するデザイン事務所から、地元の花火大会に想いを馳せて知識ゼロからオリジナル花火を作った経営者まで、個性あふれる4社を紹介する。
【ウルトラシー】
加賀友禅を洋装へ デザイン会社が伝統をつなぐ
ウルトラシーは、工業製品やファッションアイテムのデザイン、コンサルティングなどを行うデザイン事務所。同社は4年前、拠点である石川・金沢の工芸、加賀友禅を洋装に落とし込むブランド「コウメ」をスタートした。「仕事がなくて諦める作家たちを目の当たりにして、どうにか貢献できればと始めた」。ふわりと浮き立つ色彩でアートとも呼ばれる加賀友禅を、着物の生地幅を生かした設計と平面的なパターンで、高揚感が得られるブラウスやワンピース、パンツにすることを目指している。作家の意見を尊重しながら、「現代的なプロダクトにするため最低限のサポート」を実施。東京や大阪、ミラノなどで展示会も行い、フィードバックをもらって製品クオリティーを上げている。「プロモーションに課題があり、まだ完成されたブランドじゃない。ビジネスとして成り立たせることを目指し、今後もプロジェクトを続けていく」。
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<感想・講評>
着物市場は年々縮小している。その課題解決に取り組む姿に大いに共感する。伝統工芸や文化を、単発で盛り上げる試みは多いが、あらゆるリソースをつなげる取り組みは少ない。大きなビジョンが良い(大西社長)/さすがは加賀友禅。発色も濃淡もとても美しい。ハレの場での装いをイメージしているとのことだが、どういったハレの場で、どんな人が着る服なのかぼやけてしまっている。コンセプトは骨太なので、デザインのピントをしっかり合わせられると、より可能性が広がるはず(高谷代表)
【福光屋】
酒蔵で仕込む先端コスメ 14代目が起こす新風
福光屋は、1624年に石川・金沢で創業した老舗酒造だ。米酵母は美容有効成分や必須アミノ酸が豊富で、中でも自社で発見した酵母“FT15”は、ノンアルコールでアミノ酸も多く含むという。14代目の福光太一郎専務は、発酵技術を応用すべく、今年2月にコスメキッチンとビューティブランド「フレナバ」を共同開発した。「廃棄していた酒粕を活用し、原材料は米と米麹のみ。添加物ゼロで、日本オーガニックコスメ協会(JOCA)と日本ナチュラル・オーガニックコスメ協会(JNOCA)の認証も得ています」。地元の名山・白山に生成するクロモジの抗菌作用も特徴で、売り上げの一部は山の保全に充てる。家訓は、“伝統は革新の連続なり”。14代目の推進力で事業成長を狙う。
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<感想・講評>
福光屋とは15年ほど前に日本酒のデザインコラボをした。今回の話を聞き、霊峰白山の風景、金沢に暮らす人々の営みが感じられた。昨日オイルを試したが、保湿性の持続力が“ハンパなかった”(高谷代表)/専務が先陣を切ってトライアルしていることが何よりの強み。「フレナバ」は酒粕を有効利用したオーガニックな商品で、時代にも即している。東京の店舗を起点に、独自の発信を強化すると良いのでは(大西社長)
【島精機製作所】
ニットのトップメーカーが古紙に目をつけた
縫製なしでニットを編み上げる“ホールガーメント”をはじめ、高い技術力で国内外に知られる島精機製作所(和歌山)。同社の社内ベンチャーとして、岩崎伸哉ら担当者2人が立ち上げたのが、“リサイクル紙で作った靴下”だ。輸入規制により古紙の行き場がなくなるというニュースを聞き、「せっかく分別し、回収した資源がゴミになる。そんなもったいないことがあるのか」と、古紙から作る糸を開発した。「古紙を数ミリに切り、ねじり合わせて作る。トウモロコシ由来の生分解性素材を含み、麻のようなシャリ感と高い吸湿性を併せ持ちます。気になるにおいも防ぎ、洗濯もOK」。5月に実施したクラウドファンディングでは目標超えを達成。プロダクト拡充に熱を注ぐ。
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<感想・講評>
和紙を製品化するアイデアは40年以上前からあるが、“古紙のリサイクル”という点でオリジナリティーを持つ。商品としての価値をどこまで高められるか。同社ならではの開発力・企画力に期待したい(大西社長)/同社のニットウエアは宇宙船内用として採用されるほど。紙は高い機能を持っているので、それを生かした同商品も、非常に高いポテンシャルがあると思う(高谷代表)
【 アクア】
「思い出の火を絶やすな」ゼロから作った線香花火
アクアは、食品サプリの輸入・販売を行う広島・廿日市の企業だ。同社の中島賢一郎代表は今、サプリとは無縁の企画に熱を注いでいる。「地元民に愛される『宮島花火』打ち切りのニュースを聞き、『あの情景を絶やしてはダメ。なによりも自分が困る』」と、同イベントに想いを馳せた線香花火「宮島を想う花火」を考案。「1社、気を吐いている花火企業があり、すぐに直談判した。すると、『線香花火はできます』と返答され、知識はゼロなのにコンセプトや色、パッケージ案などを伝え、がむしゃらに突き進んだ」。5月に始動し、夏には製品化。アンテナショップやECで販売する。「亡くなった父の声が聞こえたようだ」など、全国から反響が舞い込む。現在、地域イベントに積極的に出店し、生活者の思いを聞きながら、次の企画を進める。「もっと大きな事業につなげられたら」。
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<感想・講評>
日本の伝統である祭りや花火が、コロナで自粛されるのは寂しい。この線香花火はパッケージがすてきで、市場ニーズもある。地域創生の別の取り組みともコラボするなど、大きなうねりを作ってほしい(大西社長)/お客さまや友達に配ったら喜んでもらえる商品で、日常を豊かにするファッションの要素も感じる。宮島を想うだけでなく、先祖の送り火や、夏の楽しみの一つとしても需要がありそう。特に海外の人はこういった体験が大好き。ツーリズムなども含め、体験できる企画になれば素敵(高谷代表)