ファッション

メタバース先行組! 大丸松坂屋とビームスが3回目のバーチャル出店で得た知見とは?

 世界最大のVR(バーチャルリアリティー)イベント「バーチャルマーケット2021(VIRTUAL MARKET 2021)」が2021年12月4〜19日に開催された。約80企業と約600サークルが参加し、さまざまな展示や体験のほか、3Dアイテムやリアル商品も販売。過去に三越伊勢丹ホールディングスやウィゴーなどが参加したが、大丸松坂屋とビームス(BEAMS)は3回連続で出展している。両社がバーチャル出店で得ている知見とは?担当者に聞いた。

 大丸松坂屋は前回(21年8月開催)、前々回(20年12月開催)の屋台風からグレードアップし、“パラリアル渋谷”のセンター街の奥に城のようなビルを構えた。毎回、ローストビーフや華やかなスイーツなどのグルメ商品をそろえており、来場者から“飯テロ”と賞されるなど、「美味しいものが並んでいる」と認知されている。

 「12月は一番商品がそろっているタイミングで、気合を入れた」と大丸松坂屋百貨店の田中直毅ギフト企画担当。今回はオススメの商品が席の前を通る回転グルメカウンターを設置し、商品の3Dモデルを手に取れるようにした。ECサイトへ誘引するデジタルカタログも用意し、グルメ2700点以上が購入可能。また、滞留時間を伸ばすべく、座敷やビアサーバーも作った。

 回転グルメカウンターでの一番人気は「海鮮ずわいがに鍋」(7560円)。手に取られた回数は9万以上だったという。「前回の10倍以上手に取ってもらえた」。カウンターの中にいるキャラクターに手にした3Dモデルを近づけると、その食品のついての解説が出てくるギミックも用意した。しかし、全体の売り上げは好調だった前回とほぼ変わらずという結果。「いろいろと仕掛けた割には、売り上げにはつなげられなかった。費用をかければよいというものでもなさそうだ」。

 とはいえ、新たな発見も多かった。「(ハイスペックPCのユーザーが多いこともあり、)思っていた以上に高額品が売れるが、今回は割引特典のあるギフト商品を掲載したデジタルカタログも用意したところ、クリックが明らかに多かった。それほど目立つ配置にはしなかったにもかかわらず、やはりこうした特典はお客さまの関心を集めることが分かった」。

 今回は店内で「メタバース大宴会」も実施し、YouTubeで配信した。そこでヘービーユーザーたちの声を直接聞く機会を得た。「コアなファンの方々がいることも分かったし、販売した食品3Dモデルが実際にどう使われているのか、需要があることも実感できた」。「私たちに接客販売をさせてもらえませんか?」というオファーもあったという。

 「商品を用意して、コンバージョンばかりを見ていたが、ソフト面とのバランスが良くなかったのかもしれない。3回目にして、欠落していたのはそこの部分かなと思った。ヘッドセットをして、来場者と同じ目線でコミュニケーションするというのが大事だと感じた。来場者との交流や彼らに喜んでもらうことの中に、何かわれわれができることがあるのではないか。もしかしたら来場者の方々と何か一緒にできるかもしれない。そんな風に頭を切り替えて、ファン作りの場としても活用できそうだ」。「Vケット」内にコミュニティーの輪ができ始めているのは、3回目だからこそ。社内でも理解者や興味を持つ人が出てきているという。「ECに飛ばさず、ゴーグルをしたまま決済ができるようになるとよりショッピングがスムーズになると思う。メタバースへの注目が高まっているし、引き続き知見を増やしていきたい」。

オリジナルアバターの販売で広がった可能性

 主催社HIKKYとxR領域における業務提携を結ぶビームスは、ネットフリックス映画「浅草キッド」の舞台、昭和の浅草をショップの2階に再現した。「今回もコミュニケーションの場となることを意識した」とビームスクリエイティブの木村淳プロデューサー。フランス座では自分のアバターが舞台に上がってタップダンスする姿を見ることができる仕掛けを用意したり、煮込み屋ではビールを片手に飲み会が楽しめる空間に。「Vケット」は多くの外国人が訪れるが、皆大喜びで、大いに拡散されたという。また、日本での映画の公開プロモーションと相まって、「映画を見た人がその世界観を楽しもうと訪れてくれた人もいたり、バーチャルで昭和の浅草を体験して映画を観たくなった人もいたようだ」と木下香奈VR担当。監督の劇団ひとりがバーチャル体験をした様子を配信したり、ネットフリックスとのコラボTシャツも発売。「リアルとバーチャルを連動させられるようになってきた」と手応えを語る。

 初回はロケットを発射できるギミック、前回は東上野にある銭湯を再現と、「Vケット」の中でも「ビームスは毎回面白い」という認知が高まっている。リピーターも増えており、ショップへの来訪者数も前回比55%増と大きく伸びたという。

 期間中、何度も訪れる人のために店外にアドベントカレンダーを用意するなどの工夫もしたが、スタッフによるリアルタイム接客もファンを増やしているようだ。今回も総勢44人のスタッフが交代でバーチャル接客。バーチャルショップ専用のツイッターアカウントも設けて、接客したスタッフの紹介や来店者のツイートのリツイートなど、積極的に発信した。その甲斐もあり、「バーチャルで接客したお客さまが、その販売員がいる店頭に来てリアルなコミュニケーションが生まれた」(木村)。SNS投稿で確認できただけでもリアルな来店が10件以上あったという。リアル店舗とバーチャル店舗をつなげられるのは、店頭スタッフが接客するからこそだ。

 スタッフのバーチャル接客スキルも上がっているという。「ショップにお客さまがいない時は、店外でも人がいるところに行き、そこで会話したりして、来店を促すスタッフもいた」(木下)。コロナ禍でインバウンド客の来店がなくなり、語学のスキルを生かす機会が減ってしまったスタッフにも喜ばれている。リアルで培った接客ノウハウをバーチャル空間で発揮できる人材が社内に育ってきている。

 さらに今回、初めてオリジナルアバターを用意。2021年秋冬の実際の商品をまとったアバター男女1体ずつ(各3000円)を販売した。「前回販売したPUI PUI モルカーの3Dモデルほどは売れなかったが、ビームスの基幹であるファッション領域に関する今後の展望が見えてきた」(木村)。購入したアバターにマフラーを加えて、さらにオシャレを楽しんだユーザーもいたという。「そもそもカスタマイズを前提にせずに作ったが、もっと着替えられたり、改変できる要素を加えたらよさそうだと思った」(同)。「ニットのモヘア感がよく出ている」「スカートのすけ感がいい」といったリアクションから、「着替えとしてほしい」「パーツだけほしい」という要望もあったという。

 「すでに販売されている3Dアイテムをセレクトしてそろえてもいいだろうし、クリエイターとコラボで3Dアイテムを作ってもいいかもしれないということが、今回アバターを販売してみて分かった」(木下)。いよいよビームスの本領が発揮されるようになりそうだ。

 昨年秋にビジネスプロデュース内に専門チームもできた。「メタバース」への注目が高まっていることもあり、VRゴーグルを被って自ら体験する社員も増えたという。「いろいろな部署から関心が集まるようになってきた。インサイトも増え、広がりを感じている。メタバースでのファッション的なニーズを満たすビームスでありたい」(同)。「やりたいことは、たくさんある。ただ、容量に制限があったりするし、技術的にどうやれるかが問題。トライ&エラーを重ねながら、さらに発展させたい」(木村)。

 次回の「Vケット」は夏に開催予定だ。

最新号紹介

WWDJAPAN Weekly

“衣食住働遊”を掲げ、5年で売上2.5倍! 躍進するスノーピークの秘密

5月23日発売の「WWDJAPAN」は、スノーピーク特集です。アウトドアメーカーとして知られる同社は、今最も勢いのある企業のひとつ。コロナによる自然回帰の流れもあり、2021年12期の売上高は過去最高の257億円を達成し、ここ5年で2.5倍に成長しています。キャンプ道具だけでなく、アパレルや住まい、温浴施設、オフィス開発など、“衣食住働遊(どう・ゆう)”を掲げた多様な事業でアウトドアの価値を発信し…

詳細/購入はこちら