ゴールドウインが手掛ける「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」が早くから取り組んだDXは2019年11月、渋谷パルコにオープンした「ザ・ノース・フェイス ラボ」が象徴的だ。3Dスキャンを使用したカスタムオーダーサービス「141CUSTOMS(ワンフォーワンカスタムズ)」(システム開発はSYMBOL)で、「ザ・ノース・フェイス」のアイコニックなアイテムを一人一人の好みに合わせてカスタマイズできる。客は、まずウェブサイト内のシミュレーターでアイテムを選択して好きなカラーでデザインした後、来店して3Dスキャニングマシーンで作成された3Dアバターを使って画面上でフィッティング。専門スタッフのカウンセリングを受けながら生地スワッチや副資材を決定して、できたオリジナルのデザインをゴールドウインテック・ラボの専門スタッフが1着ずつ制作するというものだ。(この記事はWWDジャパン2021年3月1日号からの抜粋です)。
「ザ・ノース・フェイス」のODMを担う三井物産アイ・ファッション(MIF)とのDXも、「ザ・ノース・フェイス ラボ」をきっかけに進展した。ゴールドウインの大坪岳人=ザ・ノース・フェイス事業一部副部長は、「一着一着を大切に作ることによって長く愛用してほしいという思いで、カスタマイズサービスをスタートした。このサステナブルな発想で、従来の商品開発にもデジタルサンプルを活用することはできないか」とMIFの米﨑尊路・商品開発室室長に持ちかけた。「両社には長く緊密なパートナーシップがあり、スムーズにチャレンジできた」と米﨑氏。
両社のDXを進化させたのは、MIFが過半出資して2019年に設立したデジタルクロージングだ。従来、展示会用、テスト用、プレス用など、約1000点を制作していた実物のサンプルの多くを3DCGによるバーチャルサンプルに置き換えたことでコスト削減につながり、デジタルカタログにしたことで営業活動も効率化できた。「ブランドの世界観や商品構成の密度は、デジタルイメージで分かりやすく伝えることができる。3Dサンプルを活用することにより、営業担当者が実物のサンプルを携えて卸先を回る必要がなくなった。展示会の開催期間に関係なく、コロナ禍で来場できないバイヤーにも営業活動を行うことができる。その他、商品情報の共有、プロモーション、プレス活動などさまざまなプロセスで業務が改善された。現在、パタンナーだけでなく、デザイナー、販売職、研究職も3Dソフトを操作できるように研修を重ねている」と大坪氏。全社でDXを推進中だ。
今後の課題は、「人材不足。デジタルメイクアップやデジタルスタイリングができるスタッフも必要となる。そして、多くの人がまだデジタルサンプルで判断する目が養われていないことだ」。デジタルサンプルをリアルに近づけるための3DCG技術の進化が求められている。
三井物産と日鉄物産が繊維事業統合は業界再編の号砲
日鉄物産と三井物産は、両者の繊維事業の統合に向けた基本合意書を締結した。日鉄物産の繊維部門と三井物産の繊維事業の子会社である三井物産アイ・ファッションが来年1月をめどに統合し、新会社を設立する計画だ。売上高1300億円の日鉄物産の繊維事業と、同約1100億円の三井物産アイ・ファッションが手を組んだ一大企業の誕生だ。デジタル技術を駆使した新サービスやサステナブル事業に積極的な両社のパワーが、どんなビジネスモデルを創出するのか注目したい。