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賛否両論だった「シロ」のリニューアル 伊勢丹新宿本店の化粧品バイヤーは、一体どう思ったの!?

 コスメティックブランドの「シロ(SHIRO)」は昨秋、ロゴの変更やパッケージのリニューアルを含むリブランディングに着手。ファンの一部はリニューアルに驚き、SNSでは当初ネガティブな投稿が相次いだ。しかし、「世界で戦えるブランド」を目指したリニューアルについては、百貨店バイヤーは大半が賛同。特に伊勢丹新宿本店はその決意に共鳴し、同店の化粧品フロアを改装した昨秋、リニューアルした「シロ」を地下2階から地上1階に移設。以降同ブランドは、大幅な売り上げ増を記録している。「WWD JAPAN.com」の編集長を務める村上要が、フロアの改装を手がけた岡部麻衣・化粧品統括部 新宿化粧品営業部マーチャンダイザー(取材当時。現在は、三越伊勢丹ホールディングス 海外事業統括部 海外MD部マネージャー(化粧品担当))に移設の狙い、「シロ」の魅力、今後への期待などを聞いた。

村上要「WWD JAPAN.com」編集長(以下、村上):化粧品フロアのリニューアルに際して、「シロ」を地下2階のビューティアポセカリーから1階に移設した理由は?

岡部麻衣・化粧品統括部 新宿化粧品営業部マーチャンダイザー(以下、岡部MD):実はビューティアポセカリーで販売していた頃から度々、「『シロ』として、世界を目指したいんです」と伺っていました。当時の「shiro」はスキンケアとフレグランスがメーンのブランドでしたが、「伊勢丹の1階を拝見すると、メイクブランドのパワーを感じます。私たちも、より多くのお客様を笑顔にできるような高揚感のあるメイクアイテムを揃え、世界で戦えるブランドを目指します」と言ってくださって。その後、伊勢丹新宿本店のリニューアルで1階をメイクワールドに刷新し、日本発のコスメブランドが並ぶ「ジャパン メイクゾーン」のエリアには日本を代表するメイクブランドを揃えると決めた時、「今、日本で一番勢いのあるブランドの1つである、『シロ』を導入できたら」と考えました。

村上:ビューティアポセカリーで販売していた時の「shiro」は、どんなブランドでしたか?

岡部MD:「ナチュラルさ」「素材へのこだわり」「おしゃれな抜け感・空気感」で支持を得ていたブランドだったと思います。でも当時のままでは、「海外で戦えない」とずっと思っていらっしゃったことを伺っていました。

村上:当時のイメージは、日本に限っていえば多くの女性を魅了できる特徴かもしれませんが、世界中の女性、男性、さまざまな志向の消費者にアプローチするには少し物足りないかもしれません。正直、日本の女性の多くと、世界の女性のブランドに対する感覚には、大きなギャップがあると感じています。

岡部MD:特に海外市場はボーダレス化が顕著で、ブランド側が既成の手法だけに基づいて消費者をセグメントしたり、顧客像を決めたりなんてナンセンス。世界のトップブランドはあらゆる年齢、国と地域、ジェンダー、志向のお客様が愛用しています。リニューアル後の「SHIRO」は、モードな印象のメイクアイテムや個性的な香りのパフュームなどを取り揃え、若い女性が好むブランドから、凛とした意思を持ちつつ、誰もが使えるトータルブランドに進化した印象です。

村上:確かにリニューアルでブランドイメージはガラッと変わりました。とはいえ、このリニューアルが賛否両論でした。

岡部MD:何かが変わった時、賛同する方と、違和感を覚える方がいらっしゃるのは世の常です。どちらの意見も真摯に受け止めるしかありません。その意味で「シロ」は、ネガティブな意見にも耳を傾けつつ、「それでも私たちは、こうなりたいんです」という意志を示された。結果、新たなビジョンでブランドの成長を加速しておられると思います。

村上:「シロ」を、改装した1階に移設してからの売り上げは?

岡部MD:想像以上です。リニューアル後は、常に売り上げ上位にランクインしています。ビューティアポセカリーでもパワーのあるブランドでしたが、「こんな力が、まだ眠っていたの!?」と思うほどです(笑)。ナチュラルコスメのファンはそのまま、ファッションへの関心が高くてトレンドに敏感なお客さまが増えていると感じます。海外のお客さまの購入も増えています。「シロ」は現状にとどまらず、まだまだ伸びると考えています。一方で伊勢丹新宿本店に「シロ」があることをご存知なかった方も多く、「顧客になり得る、新しいお客様はまだまだいるんだ」と実感しています。伊勢丹限定のリップやイベント限定のキットの反響は絶大で、フレグランスのアイテムはギフトとしても人気です。「シロ」は自前の生産網を持っているので、小回りが効くんです。ここまで規模を拡大させながら、限定品や追加注文にも柔軟なブランドは、私たちにとって本当にありがたい存在。自然由来にこだわり、酒かすやがごめ昆布など日本の素材をたくさん活用しています。まさに日本を代表するブランドといえるでしょう。

村上:これからの「シロ」に期待することは?

岡部MD:世界で戦うには、突き抜ける強さが必要です。「素晴らしい素材を使い、良い製品を作っている。だから、世界中の人に使ってもらいたい」という信念は、曲げないで欲しいですね。その部分はこれからも変えずに、より良い製品をお客様にお届けし、海外にも店舗を持つ伊勢丹と世界を目指していただけたら嬉しいです。

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シロ
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