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ネガティブな意見も受けとめ前進 「シロ」の「世界で戦えるブランドに」という想いの源泉

 コスメティックブランドの「シロ(SHIRO)」は昨秋、ロゴの変更やパッケージのリニューアルを含むリブランディングに着手。後述の通り売り上げは伸び続けているが、ファンの一部はリニューアルに驚き、SNSでは当初ネガティブな投稿が相次いだ。それでもなお、「シロ」がリブランディングを貫いたのは、何故か?「WWD JAPAN.com」の村上要が、シロの今井浩恵社長に聞いた。

リニューアルの理由は単純
良い製品を世界で
使ってもらいたい

 
村上要「WWD JAPAN.com」編集長(以下、村上):改めて、昨年リニューアルに挑んだ理由は?
今井浩恵シロ社長(以下、今井社長):ものすごく単純で、「世界で戦えるブランド」になるためです。素晴らしい素材を使い、良い製品を作っている。だから、世界中の人に使ってもらいたいのです。「ラグジュアリーブランドになりたい」とか「海外ブランドのようになりたい」ではなく、「良い製品を作っている自信があるから、それを多くの人に使ってもらいたい」。ただそれだけ。でも去年までの「shiro」は、その魅力をごくごく一部のお客様にしか伝えられていないから、このままでは「世の中をしあわせにする」というブランドの想いが伝えきれない。そう思ったんです。

村上:Jビューティに注目が集まる中、「SHIRO」ならではの製品をさらに広く伝えたいという想いだったんですね。確かに以前の「shiro」のままでは、ナチュラルな生活を志向する女性にしか届かなかったかもしれません。強くなった「SHIRO」からは、モードな人、国際的な感覚の持ち主、男性など、より多くの消費者を魅了できるかもしれないという可能性を感じます。
今井社長:海外に店舗を構えたとき、ロゴを含むかつての「shiro」はどこか弱々しかった。正直、「世界では戦えないな」と感じました。「華奢で繊細」は、日本ではある程度のニーズがあるかもしれませんが、イメージの強い個性的なブランドがひしめく海外では戦えない。2016年、ロンドンに海外1号店を構えた時から「変わらなければいけないな」と感じ、「コスメのメインストリームに挑むとしたら、どのように製品をブラッシュアップし、どんな世界観を築いていくべきか?」と考え続けていたんです。

「お客様は聞き飽きたかも?」は
「全然伝えられていなかった」

村上:ということはリブランディングで変えたのは、ロゴやパッケージ、店舗デザインにとどまらない?
今井社長:もちろんです。製品では、素材にさらにこだわりました。例えばフレグランスシリーズでもスキンケア同様に自然由来の高品質な原料を、しかも顔を知っている生産者の、一番良いものを使うようになりました。祖母が農業を営んでいたので馴染みがあるのですが、農家の皆さんって、「家族のため、孫のための畑」を持っている方が多いんです。そこでは、他の畑以上に丹精込めて、作物を作っていらっしゃる方も(笑)。「シロ」のスキンケア、コスメ、フレグランスには、そんな素材の良さを最大限に感じてもらいたいという想いを込めて配合しています。素晴らしい材料を使わせていただいている私たちには、それを生かした製品をより多くの方に広める責任があると思っています。そこで国内にとどまらず、世界中で使っていただくための努力を始めたんです。

村上:確かに「信念」を発して「共感」してもらうビジネスは、日本のみならず世界で戦えるビジネスですね。ただ、そんな想いは伝わっていなかったのかもしれません。素材へのさらなるこだわりに伴い、一部製品の価格が上がったことも手伝ったのでしょう。リニューアルは当初、「#改悪」なんてハッシュタグが付されるほど、SNSではネガティブな意見もありました。
今井社長:「私たちの想いを、消費者の皆さんには伝えられていなかったんだ」と反省しました。製品に使っている素材や生産者さん、ブランド理念については10年も言い続けてきたから、「聞き飽きさせてしまったかな?」と心配するほど「伝わっている」と思い込んでいたんです。販売終了をお知らせしてガッカリさせてしまった製品については、「こんなに多くの方が愛用してくださっていたんだ」と痛感しました。「シロ」はこれまでずっと、「自分たちが欲しいもの」を作り続けてきました。自己中心的という意味ではありません。自分たちが心から欲しいと思えるものだけを作ることこそが、お客様にも環境にも真摯であり続けることと考えていたんです。お客様により喜んでいただき新しいものをご提案し続けたいと思い、常に前進してきました。でも、販売を終了した製品にも多くのファンがいてくださったことを再確認し、正直、驚きました。製品が、多くの皆さんの生活に根付いていることを気づかせてくださいました。

村上:たくさんの意見が、想像もしなかった気づきを与えてくれたのですね。その後は改めて、「ちゃんと伝える」ことに注力している?
今井社長:はい、お客様の気持ちに寄り添いながら、ブランドの想いを精一杯お伝えしたいと思っています。ですから、改めてお話させてください(笑)。例えば保湿・整肌の目的で配合するタマヌオイルは、海外産から沖縄産の素材に切り替えました。この沖縄の生産者がつくるタマヌオイルは、20工程くらいのプロセスを経て抽出されています。手間暇をかけると、エグみのないオイルが採れるんです。毎年最高の品質のタマヌオイルを手に入れるため、生産者の拠点や畑を台風から守れるよう、周辺には木を植えています。一時は自社農園を作り、自分たちで原料を育てることも考えましたが、やはり「餅は餅屋」。最高の原料は、その道のプロである生産者の手に委ねるべきだと気づきました。そこで今は生産者から定期的に原材料の供給を受け続けることで彼らの素材研究や継続可能な体制づくりをサポートする環境を整えています。こういった取り組みについては、お客様に伝えていなかったので、改めて「ちゃんと伝えよう」と思っています。

村上:素材を作る生産者と二人三脚で製品を生み出しているのですね。ネガティブな意見もたくさんありましたが、リニューアル後の売り上げは?
今井社長:リニューアルした昨年9月以降、毎月前年同月比170%前後で推移しています。リニューアル前より多くの方に気づいていただける存在になったのか、もしくはリニューアルでの話題を契機に「今まで知らなかったけれど、試しに製品を使ってみようか」と思ってくださった方が増えたのかな、と思います。ロゴやパッケージの変更にはたくさんのご意見をいただきましたが、一方で、ブランドに初めて触れていただいた方の中には、ロゴが大文字に変わったことを知らない、気づいていない方も多いように思います。かつてブランド名を「ローレル」から「shiro」に変えた時は、このようにたくさんの意見をいただくことはありませんでしたし、当時に比べて現在は、はるかにたくさんの方に注目していただいていると実感しています。

村上:「シロ」と言えばスキンケアやフレグランスが話題になることが多かったが、メイクアップアイテムもかなり増えて目にする機会も増えた。売れ筋に変化はあった?
今井社長:リニューアルのタイミングで、ブランド初のリップスティックを発売したこともあり、メイクアップアイテムの売り上げは伸長しました。カテゴリーで見ると、ブランド全体におけるメイクアップアイテムの売上構成比は2.5倍まで広がりました。

村上:業界人の反応は?
今井社長:百貨店バイヤーの皆様は、大勢がリニューアルに賛同してくださいました。今後も続くであろうインバウンド需要への期待感や、海外での認知度やロイヤリティーを高める日本ブランドの挑戦に対して、大きな声援をいただきました。大変ありがたく思っていると同時に、期待にしっかり応えなければと思っています。ありがたいことに売り上げも順調なので、継続して皆様に恩返しをしていきたいと思っています。

3つの“レス”が特徴の
ニューショップオープン

村上:逆境を乗り越えてリニューアルがひと段落した、次の戦略は?
今井社長:2020年3月、「人はいないけど、愛がある。」をコンセプトに、スマートフォンを駆使した新感覚デジタルストアの「シロ セルフ(SHIRO SELF)」をルミネエスト新宿店に併設しました。“接客レス”“パッケージレス”“ジェンダー&ランゲージレス”な新業態の店舗です。混雑や言語の問題から満足な接客を受けられなかった方や、外出するときはイヤホンをつけっぱなしで接客を望まないという方がいらっしゃいます。一方で環境問題への意識は総じて高く、すぐに捨ててしまうパッケージは不必要という声も多かった。そこで、紙箱なしの製品を購入いただくと本体価格から3%をお値引きさせていただく「エシカル割」を設けたんです。酒かすを筆頭に「シロ」の製品に活用している素材は、副産物であったり、見た目の問題で捨てられたりしていたもの。栄養があるのに、それを活かせないのはもったいないこと。かけがえのない自然の恵みを大切に使うという考え方は、今の時代の価値観にリンクしていると思うんです。

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シロ
0120-275-606