多くの百貨店が苦しんだ2016年初売り・セール
2016年は、厳しい初売りで幕を開けた。元日以降始まった各百貨店の初売りは、“目玉”級、もしくは実需に徹した手頃な福袋こそ早々に完売したが、主力の婦人や紳士は売れ残った店舗も多いという。大半の百貨店でスタートしたセール商戦はさらに厳しく、正月三が日の紳士・婦人服売り場では2ケタマイナスや、店舗によっては「半減」というショッキングな言葉さえ聞こえてくる。
原因はいくつかある。今年は1日のそごう・西武、2日の阪急や髙島屋、そして3日の伊勢丹や三越と、初売り商戦が例年以上に分散化。さらにセールについては、ルミネは6日、三越伊勢丹は13日と昨年に引き続き、他店に比べスタート時期を後ろにずらしている。業界全体から一丸となった熱気を感じにくかったのは否めない。
また、例年以上の暖冬は重衣料が並ぶ紳士・婦人服フロアへの客足を遠のかせた。東京は、1月3日には16.2度の最高気温を記録。4月並みの陽気は秋冬物の購買意欲を失わせ、セールのスタートを「即死」と称する業界人もいたほどだ。この秋、そして冬は、10年前には全く存在せず、数年前ですらひっそり行っていた“フライング・セール”がウインドーやポスター、POPまで駆使し、大々的に行われたシーズンでもあった。“フライング・セール”という名前には、一斉スタートに先駆けて、という多少の罪悪感が潜んでたように思うが、この秋冬は、なりふり構わずの印象だ。
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「サザビー」が雑材風の生地を使い提案するオン・オフ兼用バッグ。クロスボディーにもなるタイプだが、通勤バッグとしても提案する。
提案次第で輝く商材も
昨年は、季節対応MDやオケージョン対応の商品・企画が通用しなくなっている。もしくは、改善の余地が大いにあることを痛感した1年だった。「バッグ&シューズ別冊」(定期購読者限定の15年11月23日号付録)では、多くの百貨店が夏物商材の花形だったサンダルの苦戦を指摘。同別冊では半年前、バイヤーの大半がロングブーツの不振を指摘し、ひざ丈ブーツは今季も低調だった。かつて百貨店のバッグ&シューズ売り場は、春にはフレッシャーズ対応の財布&定期入れとパンプス、初夏には母の日向けのプレゼント、夏には雑材のバッグとサンダル、秋にはレザーバッグとロングブーツが並び、冬のギフト商戦に突入という季節とカレンダーに基づいたMDを組んでいたが、これらの商材は、いずれも盛り上がりを欠いて久しい。
ただ注目すべきは、こうした商材が全く売れないのではなく、従来通りのタイミングと提案では響かなくなっている点だ。その一例として、「サザビー」の雑材を使ったオンにも使える新バッグの話をしたい。雑材のバッグと言えば、従来通りのカレンダー型MDに基づけば盛夏のオフアイテムだが、「サザビー」はオフでしか使えない商材に関するニーズの長期低落傾向を感じ、ブランドのターゲットである働く女性のニーズに合わせ、天然素材と皮革を組み合わせた、A4サイズの書類も入る“かっちり風の雑材バッグ”を提案。きちんと感とキレイめテイスト、幅広いオケージョンで使える汎用性が支持され、継続アイテムになった。同ブランドは、15年春夏には雑材のような生地を作るイタリアンメーカーの素材を使い、オン・オフ兼用のバッグを強化。同ブランドを手掛けるバゲージハンドラーズの青木香保里マーケティング部販売促進課課長は、「日本の夏はますます暑くなり、通勤着もカジュアルになっている。働く女性のバッグにも天然素材の持つ涼しげなリラックス感を提案したい」と話す。従来通りの季節型MDでは苦戦アイテムにカテゴライズされる商材でも、提案次第では輝くことを示す好例だろう。「雑材だから夏。ファブリックだからオフ対応」と決めつけるのは、もはやナンセンスだ。
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消費者を驚かす新しい提案を
また、この秋冬は暖冬にもかかわらず「ヘルノ(HERNO)」や「カナダグース(CANADA GOOSE)」など、デザインとクオリティーにこだわったアウター専業のラグジュアリー・ダウンが引き続き堅調だった。こうしたブランドの強みは、秋冬シーズンに2回も売り上げのピークがあること。秋冬が立ち上がる8月、残暑が厳しく、ダウンになんて袖さえ通したくないころにはデザイン性の高いコレクションピースが売れ、11月以降には実需に即した定番が売れる。こうしたブランドの存在と売れ方は、商品そのものが良ければ、消費者はいつでも、たとえ、それが今すぐ着られるものではなくても買うことを示している。要するにブランド力があって、商品力が高く、その提案方法が消費者にとって妥当なら、モノは売れるのだ。
今は皆が時代の変化を痛感し、進化しなければ生き残れないと危機感を募らせている。しかし、その割にわれわれは、今なお、過去の商習慣に縛られすぎだ。旧態以前のカレンダーは、すでに業界の指針ではなく、足かせになっているような気がする。もっと単純に、消費者の気持ちを予想し、彼・彼女たちが半年先に欲しくなるような商品・スタイルを提案する、で良いのではないだろうか?かつてない時代を迎えるに際しては、かつてないモノ作り、売り場作りがあって当然だ。なのに業界全体は、さまざまな情報を持っている消費者を驚かす新しい提案ができず停滞している。