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メルヘンの次は“和モード”  アイジーエー五十嵐社長の「とことんニッチ」な生存戦略

「アクシーズファム(AXES FEMME)」などを展開するアイジーエーの新ブランド「リゼン(REZEN)」が好調な滑り出しを見せている。2025年1月の立ち上げから1年半。27年2月期売上高は5億円規模に到達する見込みだ。同ブランドが標榜するのは「和モード」。漆黒を基調とした和服のようなリラックスシルエットに、繊細な花柄や和のモチーフが浮かび上がる。日常着の枠を越えた独特の世界観が、アニメカルチャーを好む層や訪日外国人客の心を鷲掴みにしている。

ニッチを研ぎ澄ませ、濃い支持を集める。そんな「リゼン」のアプローチは、メルヘンやフェミニンなテイストでファンダムを築いてきた主力ブランド「アクシーズファム」の手法にも通じる。「世間で売れているモノに迎合していては、生き残れない」と言い切る五十嵐昭順社長に、「リゼン」の戦略と会社の未来像を聞いた。

福井の高校との産学連携が原点

「リゼン」は2023年に始動したユニセックスブランド「アクシーズエックス(AXES-X)」の派生ブランドにあたる。同社発祥の地である福井県の地元高校との産学連携企画として、「アクシーズエックス」が大河ドラマをイメージした「桔梗(ききょう)の刺しゅうシャツ」を高校生と共同開発したところ、あっという間に完売。手応えを得て、25年1月に和に特化した「リゼン」として独立させた。

工場の専用ラインを確保、本格派を意識

ブランドディレクターを務めるのは、自らOEM会社ヴェリーズを経営し、五十嵐社長と10年来の取引がある奥村正道氏だ。京都出身で着物に囲まれて育った奥村氏のデザインは、日本の伝統文化へのオマージュ。素材選びからデザイン、生産までを一貫して手掛け、福井・永平寺の天井絵や蓮の花など、現地に足を運んで集めた文脈をデザインに落とし込んでいる。着物の構造美を意識したアシンメトリーな配置と、繊細な刺しゅうが黒地に映える。

縫製と刺しゅうは、高い技術力を持つ中国の1工場に依頼。専用ラインを確保するため、高額な機械の購入費を先行負担した。「社内基準から見れば原価はかなり高い。最初はおいおいと思った」と五十嵐社長は苦笑するが、妥協はしなかった。「アクシーズファム」で学んだ「本物志向でなければファンにそっぽを向かれる」という教訓があるからだ。

発信は動画に全振り

発信面では、インスタグラムのショート動画に特化する戦略を採った。2023年入社の澤真人ブランドリーダーの主導で、リールやストーリーズなどショート動画に「全振り」。生地のとろみや動いたときのドレープ感が視覚的に伝わったことでアルゴリズムに乗り、台湾をはじめ海外フォロワーも急増した。

弾みをつけたのは、23年夏のラフォーレ原宿・地下0.5階でのポップアップだ。地下1階のサブカル系と地下1.5階のロリータ系を結ぶ動線上で、ターゲット層の視線を的確にキャッチ。この成功を足がかりに、25年2月末の大阪ヘップファイブ、同8月のラフォーレ原宿と、半年ピッチで常設化を果たした。

「変身欲求」と「共存欲求」、服が“参加証”になる

ただ、街中では見かける機会がそう多くない「和モード」の服。このテイストを求めるのは、どんな人たちなのか。

澤ブランドリーダーの分析によれば、「リゼン」の中心顧客である20〜30代の男女たちの購入動機は、大きく2つに分かれる。1つは「変身欲求」。サブカルチャーに根ざす和装カルチャーや、「誰とも被りたくない」という個性を求める層に刺さっているのだという。

もう1つの動機は、舞台やアイドルの現場へ向かう推し活層が抱く「共存欲求」だ。「推しのアイドルが和系の衣装を着ている」「和装が自分の好きなキャラクターと親和性がある」といった理由が中心にある。また、「彼岸花刺しゅうの服を着て彼岸花畑へ行く」といったような、アニメ作品の「聖地巡礼」の晴れ着としても好まれる。服を着ること自体が、作品や推しの世界観への参加証になっている。

京都の古刹に開いた“隠れ家”

大衆向けではなく、濃いファンダムを築く。「リゼン」は、「アクシーズファム」のコミュニティー形成手法を受け継ぐことで成長を遂げている。

一般的にマーケティングの定石は「パイの大きい市場」を狙うことだ。だが五十嵐社長は、そこにある種の“罠”があると見る。「市場に同じようなものがいっぱいあると、本当に見飽きてしまう。売り上げを追いかけるから、ひたすら『今は何が売れてるの?』という思考に陥って、同質化して、結果売れなくなる。自分たちが信じたものを作って、発信するブランドにならないといけない」。

古寺を改装した店舗でレイブイベント

その思想を具現化したのが、26年5月にオープンした京都店だ。新京極通りの路地奥、時宗の古刹「染殿院」の境内に佇む築100年の建物を改装した。オープンイベントとして仕掛けたのは、「現代の踊り念仏」と位置づけたレイブイベントだ。DJやラッパーの重低音が響く境内で、「リゼン」の羽織を着て踊るファンたち。通常のトラフィック型店舗とは異なる隠れ家的な立地ながら、SNS経由で訪日客が流入した。インバウンド比率は40〜55%に達し、ブランドの拠点として確かな手応えを得た。

目指すは「グローバルニッチブランドの生態系」

現在のアイジーエーは、全社売上高55億円の大半を「アクシーズファム」が占める一強体制に近い。五十嵐社長は、「大衆ウケする100億円ブランドを作るつもりはない」と語る。目指すは、国境を越えて「分かる人には熱烈に分かる」スモールブランドを束ねる「グローバルニッチブランドの生態系」だ。

「リゼン」も売上高10億円、20億円と先を見据える中で、海外展開のアクセルを踏む。足元で最も熱量が高いのは台湾。現地法人の基盤を生かして実店舗展開を計画し、その先には中国本土も視野に入れる。また、近頃出展した米ロサンゼルスの「アニメエキスポ(ANIME EXPO)」では上代100万〜150万円分の商品を持ち込み、そのほとんどを早期に売り切ったという。「次はロスでレイブパーティーだ」と五十嵐社長の鼻息は荒い。

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