PROFILE: 平林義規/三陽商会社長

三陽商会の新社長に三井物産出身の平林義規氏が5月28日付で就任した。2016年のバーバリー・ショックから10年。前任の大江伸治社長(現会長)による構造改革によってV字回復を遂げたものの、25年度以降は壁にぶつかり、8月末には26年度業績予想の下方修正を発表した。再び成長軌道に乗せられるのか。大江氏からバトンを託された平林氏に、復活のシナリオを聞いた。
WWD:新社長としてのミッションは何か。
平林:一言でいえば、新しいことへのチャレンジである。将来を見据えてさまざまな布石を打つ。誰もがチャレンジする気運を作る。
僕の周囲の人々に三陽商会のイメージを尋ねると、「まじめにモノを作る会社」といった回答が多かった。面白いくらい異口同音に「まじめ」という言葉で表現する。「お行儀がいい」とも言われた。中に入ってみて、僕も確かにそう感じる。
WWD:うがった見方をすれば、まじめすぎる、お行儀が良すぎると言えないか。
平林:それはその通りだろう。ファッションは競争の激しい世界だ。市場自体も過去30年くらいのスパンで見ると、国内市場規模は減っているのに、商品の供給量は格段に増えている。過剰供給で単価が下がり、プレイヤーもどんどん入れ替わる。当社の場合、16年にバーバリー事業を失い、守りの姿勢をとらざるを得ない時代が続いた。激しい変化の中で、まじめすぎて、チャレンジに臆病な部分があったかもしれない。
まじめにお客さんの声を聞いて、真面目にモノ作りしてきた。結果的に、前の年に評判の良かった商品に注力するなど、コンサバティブな判断に偏りがちになる。それが続くと、ブランドや商品の個性が削られてしまう。
「真・善・美」の精神と新販路
WWD:何から始めるか。
平林:新しいチャレンジをする前に、自分たちの強みと弱みを見つめ直し、変えるべきこと、変えてはいけないことを識別するプロセスも大切だ。創業者・吉原信之(1916〜2007年)が唱え、現在も社是として「真・善・美」を掲げる。吉原氏は「技術者集団の手と工程を踏まえた既製服は工芸品、即ち、用と美の世界」と説いた。 会社がよって立つ美の定義として、これは普遍性を持つ。洗練された美意識は変えてはいけない。
一方で、世の中は目まぐるしく変わる。主な販路としてきた百貨店も変化しているし、お客さまも変化している。何を作るか、誰に売るか、どこで売るかを見直す必要がある。既存の百貨店の売り場をさらに磨いていくのと同時に、他の販路も開拓しなければいけない。手をつけられていない販路ばかり。伸び代はたくさんある。
WWD:具体的にはどんな販路を強化するのか。
平林:まずはショッピングセンター(SC)だ。新業態「サンヨースタイルストアプラス」の第1号店を7月にイオンモール岡崎(愛知県)に開いた。百貨店で展開する婦人服ブランドの複合型ショップ「サンヨースタイルストア」をSC向けにアレンジしたものだ。「アマカ」「エヴェックス バイ クリツィア」「トランスワーク」に加え、SC向けに新たに開発した新ライン「ル ジュール」などを並べる。価格帯については一定の調整を行いながら強みとする品質を維持する。今年度内に計3店舗の体制にする。
都市部のファッションビルには、新しい婦人服ブランド「オーレム」を開始する。28年度2月期を最終年度にする中期経営計画で掲げる「新規の自社ブランド開発」の一環だ。9月10日オープンのニュウマン新宿店を皮切りに、5年後には10店舗に増やす。
WWD:百貨店販路の底上げ策はあるか。
平林:ブランドの複合業態「サンヨースタイルストア」を増やす。25年に富山大和に1店舗目をオープンして以降、地方・郊外を中心に店舗を広げ、25年3月には大丸東京店に初の都内店を開いた。現在、全国15店舗。26年下期にも3店舗出店を予定している。お客さまは選択肢が増えるし、百貨店は販売効率が上がるという結果がしっかり出ている。複合業態であってもブランドの世界観を保ちながら、しっかり売っていける。
WWD:百貨店の閉店も相次ぐ。特に地方で百貨店がなくなると、そのエリアの顧客との接点が消失してしまう場合もあるのでは?
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