ファッション

「ドルチェ&ガッバーナ」はシチリアの色彩で軽やかに、「ブルネロ クチネリ」は思考の自由を解き放つ 【2027年春夏ミラノメンズコレ ハイライトVol.1】

記録的な熱波の中繰り広げられた2027年春夏のメンズ・ファッション・ウイーク。主要ブランドのパリコレへの移籍や9月に行われるウィメンズコレへの合流などに加え、サッカーW杯はイタリア代表が予選敗退で蚊帳の外ということもあり、やや寂寥感も漂ったミラノメンズ。しかし職人技と洗練が同居する質実流麗なミラノのクリエイションは、本質思考に回帰する今だからこそ新鮮に見えます。

今回編集部からは単騎出張となった本橋涼介ヘッドリポーターとパリ在住ジャーナリストELIE INOUE(以下、井上)氏によるミラノメンズの取材ダイジェストVol.1をお届けします。最初は勢いがよかったけれど、だんだんと暑さでエネルギーを奪われ、それでも気合で乗り切ったファッションウイーク取材をプレイバック。

上裸で開幕「ドルチェ&ガッバーナ」
グラニータの色彩光る旅人のワードローブ

本橋:前回の春夏でパジャマスタイルを軸にしたエフォートレス&インティメイトな提案が印象的だった「ドルチェ&ガッバーナ(DOLCE&GABBANA)」。昨年のメンズコレ2026年春夏特集では表紙も飾りました。そして前回は目の前の柱に阻まれてよく見えなかったランウエイが、今回はしっかり見渡せる好位置。たいへんありがたかったです(笑)。さて、今季はどんなスタイルを見せてくれるのかとワクワクしながら席に着きます。

「そうきたか……」。なまめかしい雰囲気でうろつくモデルたちは、やがて1枚ずつ服が剥がれていき、上裸にガウン+ブリーフに。確かに、この暑さの中だったら、もうすべて脱ぎ捨ててしまうのもありなのかもしれません。いや、そうだろうか……そんな風に逡巡していると、やがて、ちゃんと「服を着た」モデルがランウエイを歩き始め、この逡巡は杞憂へと変わります。

今季の「ドルガバ」が掲げたのは、ブランドの原点であるシチリアでの休暇“ヴァカンツェ・シチリアーネ(VACANZE SICILIANE)”。古代ギリシャの神殿やヴァル・ディ・ノートのバロック建築、モンレアーレ大聖堂のモザイクなど、島に幾重にも積み重なった文化遺産を着想源に、1950年代から60年代初頭にシチリアを訪れた旅行者のスタイルを重ねました。

シチリアのアイデンティティーと力強さを象徴する黒尽くしの章から始まり、中盤からは旅人のワードローブへ。柔らかく再構築したテーラリングと開放感のあるシルエットに、軽やかなコットンやクロシェ編み、編み込みスエード、シルクのスイムウエアを重ねていきます。砂や石灰岩を思わせる柔らかな色調に、海のブルー、ターコイズ、ピスタチオグリーンといったグラニータ(シチリア伝統の氷菓)のような繊細な色彩が相性バツグン。絵葉書のような風景プリントやレモン柄が夏の気分を高めていて、なんだか爽やかなジェラートを頬張りたくなります。フィナーレは珊瑚モチーフを散らした白で締めくくりました。重層的な文化遺産を背負いながら、仕上がりはどこまでも軽やか。熱波のミラノに、白の清涼感がひときわ映えていました。

カーゴにタイドアップ「ブルネロ クチネリ」
ドレスコードを書き換える“思考の自由”

本橋:毎回、哲学的で人間の本質に迫るようなシーズンテーマに深く考えさせられる「ブルネロ クチネリ(BRUNELLO CUCINELLI)」ですが、今季のテーマは“Thought is Free(思考は自由である)”。シェイクスピアの戯曲に登場する一句で、ルールを踏まえた上で、ルールにとらわれず自分で選び取る着こなしの自由を指します。その実例が、サルトリアルとアウトドアの自在なミックス。エポレットと4つのフラップポケットを備えたサファリジャケットはスエードやリネン、コットンと素材違いで登場し、カーゴパンツはサマーウールでサルトリアルに仕立てて、きちんとタイドアップ。ガーメントダイやウォッシュ加工で時間の経過を感じさせながら、ヴィンテージの古着とは違う柔らかな着心地とクオリティーを担保するのがこのブランドらしいところです。染色前に手作業でブラシをかけて防染し、表面だけ色を入れないニットの技法など、職人技の裏付けも豊富でした。

カラーはイングリッシュホワイトやサンド、タバコといったニュートラルを軸に、ラズベリーやアプリコット、ウォーターグリーンなどのパステルが差し色。中でもブルーはダストブルーからシャンブレー、インディゴ、ネイビーまで極めて広く展開し、サルトリアのブレザーに経年加工のデニムを合わせる提案が今季の核を象徴していました。「エレガント」の語源は、ラテン語で「選び取る」を意味する言葉なのだそう。何を持つかではなく、自分で考えてどう組み立てるか——。ドレスコードを軽やかに書き換えていく、このブランドならではの贅沢に大いに納得させられました。

“出会いの芸術”を実演「サントーニ」
手染めタッセルでローファーを自分色に

井上:「サントーニ(SANTONI)」はショールームで、“The Art of Encounter(出会いの芸術)”をテーマにしたプレゼンテーションを行いました。ここでいう“芸術”とは、ブランドが長年培ってきた職人技のこと。例えば、細いレザーストリップを手作業で編み込むイントレッチ(Intrecci)を全面にほどこしたローファー。装飾には、細いレザーを幾重にも重ねて彫刻のような立体感を生み出すサーペンタイン(Serpentine)のタッセルがあしらわれる贅沢なモデルが登場しました。メンズシューズでトレンドが継続しているローファーが拡充されたうえ、アイコンモデル“カルロ(Carlo)”と“カルラ(Carla)”には、付け替え可能なタッセルで表情を変えられるパーソナライズサービスが始まります。会場では職人が一つひとつ丁寧にブランド独自の手染め技法“ヴェラトゥーラ(Velatura)”で色を重ね、タッセルを仕上げる様子を実演。その手さばきを眺めていると、大量生産とは対極にある贅沢な時間が流れているようでした。このサービスは、日本でもポップアップなどで体験できる予定です。

カジュアルなラインでは、人気のスニーカー“オフデューティ(Off-Duty)”が、ソックスのように足を包み込む軽やかな履き心地に進化。木型を使ったレザースニーカーやスリッポンも、ドレスシューズの品格とスニーカーの快適さを自然に両立しています。

プレゼンテーションを堪能した帰り際、「ファッションウイーク取材のお供に」とPRの方が手渡してくれたのが、日本から持参したお菓子でした。しかも、見慣れた定番ではなく初めて見るものばかり! テーマだった“出会い”は新作コレクションだけでは終わらず、最後は思いがけない心遣いにまで続いていました。パリ在住の私にとって貴重な日本のお菓子。パリコレ終盤を迎えた今も開封できずにいます(笑)。

“書く”の先へ「モンブラン」
シルクロードを旅するライフスタイル提案

井上:「モンブラン(MONTBLANC)」は“シルクロード”をテーマに、中国からギリシャへと続く交易路が育んだ多彩な文化やクラフツマンシップをコレクションに映し出しました。異文化のモチーフを取り入れた筆記具は、ブランドの原点である“書くこと”に旅のロマンを重ねたような仕上がりです。アイコン“スターウォーカー”には、ブランド初となるアルミニウム製モデルが登場し、軽やかな素材使いで機能性をさらに高めます。

「モンブラン」と「ペン」はほぼ同義語と思えるほど強く結びついています。でも、ブランドが見据えるのは、その先にあるライフスタイル全体。昨今はレザーグッズにも力を入れており、今季も人気の“ライティング トラベラー”シリーズを軸にラインアップを拡充しました。ペンやノート、ノートパソコンを整理して収納できる仕切りを備えたブリーフケースは、出張や移動の多い現代のクリエイターを意識した設計です。柔らかなシボ革を使用したトートバッグや、女性とも兼用できそうな小ぶりのクロスボディも新たに加わりました。書くための道具をつくるブランドから、働き、旅をし、日々を楽しむ人のライフスタイルを支えるブランドへ。ヨーロッパ最高峰のモンブラン山より高みを目指す姿勢をしっかり感じ取りました。

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WWDJAPAN Weekly

JAPAN HEAT WAVE!熱波の欧州で躍動する日本のクリエイション 2027年春夏メンズコレ速報

今季の欧州を覆ったのは、史上最高気温を更新する記録的な熱波。しかしそれに負けないほどの熱を帯びていたのが、日本人デザイナーのクリエイションでした。公式スケジュールにはミラノで「シンヤコヅカ(SHINYAKOZUKA)」、パリで「ソウシオオツキ(SOSHIOTSUKI)」が新たに加わり、今回も計15を超えるジャパンブランドが名を連ねました。

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