PROFILE: 齊藤宏之「スィ ズィ ジー(SYZYGY)」デザイナー

たかがTシャツ、されどTシャツ——。齊藤宏之さんが53歳で立ち上げたブランド「SYZYGY(スィ ズィ ジー)」は、Tシャツに特化したユニセックスブランドだ。ファッションの名門、セントラル・セント・マーチンズを卒業後、コム デ ギャルソンの生産管理として10数年勤務。その後もケイタマルヤマやマーガレット・ハウエルに籍を置き、アパレルで25年ほどのキャリアを重ねた人物が、介護職などを経て再びファッションの世界に戻ってきた。
「スィ ズィ ジー」のデビューコレクションは、首周りのリブに独特のひねりを加えた9型で構成する。リブを首の周りにぐるぐると巻き付けるように配置したり、逆にぶつ切りにしてバラバラに散らしたり。シンプルなTシャツに不思議なインパクトを与える。「リブの部分は自分でパターンの修正と調整を繰り返し、ベストな形を模索した。熟練のパタンナーなら1日で終わるところに2週間かかった。真っ直ぐではなく曲線型のリブの配置はヨレが出やすく、縫製工場泣かせ。それでも細部にクリエイティブが宿ると考え、請け負ってくれる工場を知人のつてを辿って探した」と齊藤さんは振り返る。
加えて、友人のぬいぐるみ作家でアートディレクターのPATさんとコラボレーションしたプリントTシャツ2型を用意した。題材は、齊藤さんが自ら考えた物語「マクベスくんとなかまたち」。この物語をベースにPATさんがキャラクターを造形し、Tシャツに落とし込んだ。PATさんはキャラクターのぬいぐるみも制作しており、展示会場ではインスタレーションとして展示している。
この数年の齊藤さんは、文房具の生産管理や介護の仕事に就き、アパレルから離れていた。しかし、知人のブランドを手伝ううちに「やはり自分でもブランドをやりたい」という気持ちが芽生えたという。無理なく続けられる形を模索した結果、行き着いたのが「Tシャツに特化したブランド」だった。船出を支えたのは、アパレル時代の友人知人たちだ。ベースのパターンは「ビスケットヘッド(BISCUITHEAD)」の橋爪大輔デザイナーに依頼し、縫製工場の紹介なども知人友人が次々と手を貸してくれた。「展示会の初日にはコム デ ギャルソン時代の知り合いが来て、細かい部分の仕上げなどマニアックだが貴重なアドバイスをたくさんくれた(笑)。久しぶりに『細部にまでとにかくこだわるオタク時代』を思い出した」と笑う。
一つ一つのアイテムには「破殻」「決壊」「瓦解」といった名を付けた。53歳で自らのブランドを始めるにあたり、齊藤さん自身が向き合った感覚を投影したものだ。「たったの1アイテムでもクリエイティブなことができる。そんなファッションの面白さを表現したかった」。ちょっと変わったブランド名「「SYZYGY」は太陽、地球、月など、3つ以上の天体が一直線に並ぶ現象のこと。「覚えやすいのに印象が残る字面ということで決めた」という。
展示会は今日4日まで、原宿の「New Open News」(渋谷区神宮前6-32-7 近藤ビル1F)で開催している。