ファッション

意外と知らない喪服の新常識 今どきのブラックフォーマルとは?

喪服は“非日常の買い物”です。購入する機会が少ないだけに、失敗を避けたいという気持ちが通常以上に強く働きます。ただファッション業界にいても意外と知らない喪服の選び方。しかも今、その選び方の価値観は変化しているようです。

礼服大手の東京ソワールはこのほど、現代の喪服選びを考えるためのセミナーを開催しました。同社が提案する新機軸は、「マインドフル・フォーマル」。これまで喪服は、「周囲と同じように装うこと」が重視される服でした。しかし今は、軽さや着心地、自宅で洗えることなど、「自分が無理なく過ごせるか」が選ぶ基準になりつつあるそうです。

喪服は「横並び」から自分基準に

かつて喪服の常識は、親世代から教えてもらうことが当たり前でした。幼い頃から葬儀に連れて行かれることが珍しくなかったからです。しかし、現代はそうした機会も少なくなり、40代や50代になってから初めて葬儀に臨む人が増えているそうです。東京ソワールには、「喪服デビュー」を控え、選び方をイチから教えて欲しいと相談する来店客が増えているそうです。

家族葬が定着し、葬儀が小規模化したことで、喪服への意識も薄れたのかと思いきや、実際は逆。近しい人だけで故人を見送るからこそ、「きちんと装いたい」と考える人が増えているという同社の分析も印象的でした。

そうした中で同社が強調するのは、「人のための喪服」から「自分のための喪服」という変化です。かつての「どう見られるか」という受け身の服選びよりも、「どう快適に過ごせるか」という自分主語の態度にシフトしてきたのが令和での変化と言えそうです。

例えば旧来の喪服はワンピースやアンサンブルが中心でしたが、令和ではパンツスタイルが台頭しています。特にパンツスーツは、普段使いも視野に入れた購入が相次いでいるといいます。

暑さも喪服の変化を後押しします。昔は割と厚手の喪服が選ばれる傾向がありましたが、近年は参列者が体調を崩さないよう、素材や着心地に一段と配慮した喪服が支持されるようになっています。礼節を保ちながらも、通気性の高い素材や軽い着心地の選択肢が増えています。

「喪服は苦しい」はもう古い

セミナーでは、東京ソワール出身のパーソナルスタイリストの林道子さんによる実践的な喪服の選び方も解説されました。喪服はこれまでストレスを伴う装いとされてきました。着用が長時間に及ぶのに加え、精神的な緊張もあって、窮屈で着疲れるというイメージを持たれがち。こうした問題点を踏まえて、林さんは“自分が心地よい喪服”を推奨。「似合う」「安心できる」「扱いやすい」の3つが大切なポイントだそうです。

最近人気の骨格診断も喪服に応用できるとのこと。一例ではありますが、林さんはストレートにはパンツスーツ、ウェーブにはアンサンブル、ナチュラルにはワンピースを提案します。

例示に用いられた喪服のうち、目を引いたのは、着脱が容易なワンピースです。一般的なワンピースは背骨に沿ってファスナーが走っていますが、東京ソワールのワンピースは胸元にファスナーが備わっていて、自分だけで脱ぎ着しやすくなっています。

背中ファスナーの上げ下げを誰かに手伝ってもらえなくても、一人でサッと着られるのは、何かと慌ただしい葬儀の日には助かります。東京ソワールでは1970年代から用意されている工夫だそうです。

意外に感じたのは、黒のバリエーションです。一口に“黒”と言っても、実際にはさまざまな色味があり、それぞれに異なるムードを帯びています。林さんの説明によれば、喪服にふさわしい黒は、とても深い黒。一般的な黒いワンピースやスーツを喪服に応用するなら、“光沢のない黒”を選ぶのがおすすめです。

林さん自身がこの日着用していたジャケットも喪服でした。白のレーストップスとプリーツティアードスカートを合わせた、ロマンティックさと洗練を兼ね備えたコーディネートです。

ブラックフォーマルは、流行を追う服ではありません。それでも、家族のかたちや気候、働き方が変われば、求められる機能や価値観も変わります。今回のセミナーで見えてきたのは、「何を着るべきか」というルールではなく、「どう故人と向き合う時間を過ごすか」という視点でした。喪服は今、その時間に寄り添う服へと静かに進化しているのかもしれません。

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