PROFILE: 松崎善則/社長執行役員CEO

ユナイテッドアローズは着実に成長軌道を描いている。付加価値の高い商品開発、元来の強みである接客力、さらにOMO(オンラインとオフラインの融合)を軸にした施策強化が奏功し、客単価が伸長。中国をはじめとする海外市場でも手応えをつかむ。新事業で進めた富裕層・準富裕層への接点作りも、次なる成長フェーズへの足掛かりとなりそうだ。
主力事業が好調、年間購買回数も増加
WWD:25年を振り返ると?
松崎善則社長執行役員CEO(以下、松崎):市場全体は、横ばいの1年だったと認識している。インバウンド需要の継続や長期化する夏など、外部環境は前年と大きく変わらず、想定の範囲内で推移した。大きな環境変化がなかった分、前年の課題を踏まえた施策を着実に実行できた1年であり、われわれとしては策を講じやすい状況だった。円安や物価高についても、想定から大きく乖離することはなかった。
WWD:業績をけん引したブランドは?
松崎:主力とする「ユナイテッドアローズ」「ビューティー&ユース」「グリーンレーベル リラクシング」の3事業すべてが改善し、事業全体をけん引した。円安やコスト高の環境の中、全体で平均約5%の値上げを実施したが、価値をきちんと伝えることで、お客さまに理解していただけた。中でも「ユナイテッドアローズ」は価格に対する許容度が高く、客単価の上昇が実績につながった。
WWD:消費者の購買意欲をどう見ているか。
松崎:正直、全体が盛り上がっているという実感はない。ただし、消費の二極化はより明確になってきたと感じている。価格が多少上がっても、商品やサービスの価値に納得して購入してくださるお客さまが多く、そうした優良顧客層に支えられた1年だった。インバウンド需要により客数も増加したが、年間購買回数が増えている点は特に重要な変化だ。
WWD:業績維持につながった施策は?
松崎:OMOやクラブメンバー施策への投資を積極的に行ったことが大きい。アプリを通じたパーソナルなアプローチなど、個々のお客さまに合わせた販促が効果を上げてECも成長しているが、それ以上に店舗の伸びが顕著で、われわれの最大の強みである接客が評価されていることはうれしく思う。
WWD:25年は原宿の旗艦店で新業態「タバヤ ユナイテッドアローズ」がスタートした。
松崎:計画通りに成長している。雑貨や器といった生活品のニーズが富裕層を中心に高く、海外のファッション関係者やセレブリティの来店もあった。ただ、拡大を前提とした業態ではなく、当社の美意識や文化を発信する拠点と位置付けている。
WWD:海外事業については中国への進出、越境ECのスタート、韓国「オソイ」「ナイスウェザー」の国内運営など、精力的だった。
松崎:25年1月に中国本土に初進出した「ユナイテッドアローズ」上海店、3月には「シテン」の海外1号店を台湾に出店し、どちらも想定以上に好調だ。中国ではデザイン性の高い洗練されたブランドが人気だ。これまでラグジュアリーブランドを購入していたような層に、価格とデザインのバランスが評価され、滞在時間も長い。今年は上海以外への進出も視野に、中国事業を成長の柱に育てていく考えだ。25年に立ちあげた越境ECでは、アメリカからの反応も良い。
WWD:小売業の先行きに厳しい見方もある中、成長余地をどう捉えているか。
松崎:人口動態を考えれば、国内市場全体が先細りであることは否定できない。ただし、われわれとしては富裕層・準富裕層に当たる顧客層の支持をさらに広げる余地があると考えている。商品力や接客力、ブランドイメージの向上、海外や非アパレル領域も含め、成長の可能性は十分にある。
WWD:「コーエン」売却の要因としていた事業ポートフォリオの見直しはどのように進めるか。
松崎:より明確に「選択と集中」を進めていく。昨年はわれわれの強みや価値がはっきりと示され、価格に見合った高感度と付加価値が評価された。今年は新ブランド立ち上げの計画はないが、引き続き既存ブランドの魅力を軸とした事業構成を強化する。
WWD:26年に注力することとは?
松崎:一番は昨年同様に接客。「また行こう」「心地いい」と思ってもらえるよう、他社と差別化を図っていく。さらに店舗でのストレスフリーな購買体験の向上。在庫がない、レジに並ぶ、探していた商品が見つからないといった無駄な時間を減らすために基幹システムを刷新し、在庫の可視化と適正化、無人レジの導入など具体的に進めている。また成果が出始めているOMOを通じたスタイリング提案や、EC閲覧後の来店でのスムーズな対応など、デジタルと接客を融合させた取り組みはより注力する必要がある。派手な新施策よりも、利便性と満足度を着実に高める。引き続き、デジタルと融合した店頭接客を強化し、購買体験を磨いていく。
個人的に今注目している人
日本文化を未来につないでいくことの重要性を改めて意識させてくれる作り手として、森工芸・森寛之さんに注目している。伝統に向き合いながら新たな表現へ挑む姿勢は、西洋と東洋の文化の融合を掲げてきた当社の理念とも通じる。素材の力を見極める実直な手仕事には、確かな技術と静かな美しさが宿っている。生活に寄り添う実用性と工芸としての深みを併せ持つ作品を通じ、日本文化の魅力が未来へ受け継がれていくと感じている。
1989年10月設立。90年7月、原宿にセレクトショップ「ユナイテッドアローズ」1号店を開く。東証プライム市場に上場。主力事業は「ユナイテッドアローズ」「ビューティー&ユース」「グリーンレーベル リラクシング」。2025年の主な動向は、3月に韓国「ナイスウェザー」の国内独占販売権を取得、9月に「オソイ」初の国内実店舗をオープン。11月に子会社コーエン売却の方針を発表。25年3月期連結業績は、売上高1509億円、純利益42億円だった。従業員数は4096人(25年3月現在)
ユナイテッドアローズ
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