ファッション

「ヴァレンティノ」2015-16秋冬パリ 官能的で禁欲的なモダンウエア ラストは「ズーランダー」なサプライズも

 キーワードは“センシュアリティーとインディペンデンス(官能性と自立)”。グスタフ・クリムトの愛人だったエミーリエ・ルイーズ・フレーゲと、オジー・クラークの妻でテキスタイルデザイナーのセシリア・バートウェル、二人の女性とヴァレンティノ・ウーマンを重ねた。エミーリエは、当時、経済的にも自立している先進的な女性で、多くのモデルや依頼人の上流階級の女性と愛人関係にあったクリムトにとって特別な女性だったようで、最期の言葉が「エミーリエを呼んでくれ」だったことは広く知られている。

 冒頭は、黒とアイボリーで描く厳かな世界。ミッドカーフ丈のスタイルに四角と三角とストライプとボーダーを掛け合わせたグラフィカルな柄がのせられる。モダンでありながら禁欲的でクラシック。ビッグシルエットのニットとスカートを合わせたルックは、クラシカルな“きっちり”ウエアを得意とする「ヴァレンティノ」としては珍しいスタイルだ。三角の連続柄は、エミーリエがポートレイトで着用しているドレスの柄と重なるし、グラフィカルな合わせは、セシリアのテキスタイルデザインとも重なる。

 中盤からのレースをブロッキングしたものや大胆な花や動物の世界は、セシリアの繊細でありながらカラフルでポップな作風とクロスオーバーする。レースをつなぎ合わせているものもあれば、チュールの上にビーズでレース模様を刺しゅうしたものもある。セシリアが活躍した1960年代から70年代のボヘミアンなムードは、洋服のシルエットやファーやフリンジ使いなどで添えた。

 いつもながらのさまざまなビーズやファーを刺しゅうして描く壮大な柄は圧巻で、クチュールメゾンのテクニックが随所に見られるが、あくまでモダンにコンテンポラリーな雰囲気で表現する。結果、今の「ヴァレンティノ」の快進撃につながっている。

 大人気のアクセサリーは、アイボリー×ブラックのグラフィカル柄を乗せたバッグやシューズが登場。三角形のヒールシューズもある。間違いなく人気を集めそうだ。

 ラストルックのモデルがランウエイから姿を消すと厳かな音楽から突如ポップな音楽に変わった。その瞬間ランウエイに現れたのは、俳優のベン・スティラーとオーウェン・ウィルソン。ノリノリでキャットウォークを披露し、スマートフォンで自撮りをしながら去っていく。突然のサプライズに招待客たちは大喜び。それを、舞台裏でデザイナーたちは音楽にのってダンスしながら見守っていた(正面からは見えない)。映画「ズーランダー2」のプロダクションを「ヴァレンティノ」が手掛けているからだというが、今の「ヴァレンティノ」のポップさを象徴する演出だ。

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