まさかの“ZOZODOWN” 空白の26時間が残したほろ苦い教訓

企業動向EC

2017/6/18 (SUN) 11:00
「ゾゾタウン」のサービス停止中のサイト画面。復旧まで26時間を要した

 スタートトゥデイが運営するファッションECサイト「ゾゾタウン(ZOZOTOWN)」は、6月14日の午前6時頃からシステムトラブルに見舞われ、翌15日の午前8時半過ぎまで、26時間に渡ってサービスが停止した。日本最大のファッションECモールにして、月間24億PV、秒間120注文を処理する「ゾゾタウン」のトラブルは、出店テナントであるブランドのEC担当者をパニックに陥れた。多くのファッションブランドにとって“「ゾゾタウン」支店”は、リアル店舗の旗艦店をも凌ぐ圧倒的な一番店。その店舗がなんの前触れもなく停止したのだ。裏側では一体何が起こっていたのか。

 「ゾゾタウン」のエンジニアたちの長い1日の幕開けは、小さな異変から始まった。14日の早朝、ユーザーによって値段が表示されなくなったり、タイムセールが使えなくなるなどのトラブルが発生した。ただ、当初は「ゾゾタウン」側もそれほど大きなトラブルとは捉えてなかったようだ。トラブルの発生から約3時間後、テナント側にはゾゾの担当者から下記のようなメールが送られていた。

「今朝6時頃よりシステム障害が発生しており、現在、サイト・管理画面の一部で不具合が生じております。管理画面においては、データの閲覧は問題なくご利用いただけますが、データの更新作業はお控えいただきますようお願い申し上げます」

 だが、その2時間後の昼12時前に事態は急転する。

「システム障害に伴い、サイトを1~2時間程度停止する運びとなりました。復旧目処がたち次第、再度ご連絡をさせていただきます。長らくご迷惑をおかけしており、大変申し訳ございません」

 「ゾゾタウン」はトラブルを解消するため、“1〜2時間”のサイトの停止を決断。テナントであるブランド側からも、管理者画面へのアクセスができなくなった。

READ MORE 1 / 2 遅れた復旧、“絶対王者”の責任とは?

 1〜2時間と伝えられたサービス停止は、もっと長く続くことになる。数時間ごとにEC担当者にはお詫びの文面が送られてきたが、復旧の連絡はなかなか来ない。14日午後11時前にようやく復旧のメドがつき、深夜2時に復旧するという知らせが届いた。

 再び深夜2時に、復旧は早朝の5時に延期になったことが伝えられると、結局復旧は15日の午前8時半ごろまでずれ込んだ。午前中のピークタイムである通勤・通学の時間帯には間に合わなかったものの、始業開始時刻には間に合ったことで、ホッと胸をなでおろしたブランド側のEC担当者も少なくなかったはずだ。

 ファッションECの分野で、「ゾゾタウン」は絶対的な王者だ。数年前から、有力なブランドやセレクトショップが相次いで、直営店にあたる自社ECをスタートした。ECの本質が、年齢や性別、年収、購買履歴などの顧客情報を軸にしたデータベース・マーケティングである以上、社内に顧客のデータベースを蓄積し、運用することはブランドにとって最重要課題の一つだからだ。だが、今でも“ゾゾ超え”を達成できた企業はごく一部に過ぎない。ECに力を入れているブランドほど、「ゾゾタウン」への依存度は高くなる。ECのための在庫やささげ(商品画像と採寸データ、商品説明)データさえ揃えれば、「ゾゾタウン」はブランド側の自社ECよりも格段に効率よく成果を上げるためだ。それだけ「ゾゾタウン」データベースとそれに基づくマーケティングのノウハウは巨大かつ強力なのだ。

 原宿や新宿の一等地に巨大な旗艦店を持つユナイテッドアローズやビームスでさえ、「ゾゾタウン」での売り上げはその2倍、あるいはそれ以上になる。リアル店舗では考えられなかったことだ。リアルの世界で言えば、「ゾゾタウン」はイオンモールやららぽーとのような、多数のテナントを集積したショッピングモールのようなもの。“ゾゾタウン店”は、全国に多数の店舗を構えるブランドやセレクトショップであれば、数多くの直営店の中の一つに過ぎない。いくら強力なショッピングモールやファッションビルであっても、ある程度の規模以上のブランドであれば、旗艦店を超える店舗は存在しない。

READ MORE 2 / 2 全体への影響は軽微、今回の教訓とは?

 予期せぬトラブルに見舞われたとはいえ、全体への影響は軽微だ。スタートトゥデイは2018年3月期に年間の流通総額2700億円を計画しており、今回のサービス停止での損失は7〜8億円程度と見られる。株式市場も今回の事態を冷静に受け止め、15日は前日比11円高の2891円で取引を終え、大きな変動はなかった。

 今回のトラブルについて「ゾゾタウン」は会員に宛てたメールで、データベースのトラブルによるものだと説明した。今年から来年にかけて、前例のない大規模改修を控える「ゾゾタウン」にとって、今回のサービス停止はいい教訓になったに違いない。

 膨大なデータを蓄積・運用するためのサーバーと複雑なシステムを持ち、それを運用する人員を抱える「ゾゾタウン」は、リアルの世界に置き換えれば、ショッピングモールであると同時に巨大な設備を持つコンビナートにも似ている。今回のトラブルは成長とともに増築を重ねてきたシステムが限界に近いことを示している。大規模なコンビナートでは数年に1度、数十億円の損失を計上した上で設備を全停止して、設備機器を総点検する“定期修理”を実施している。大規模改修の際には「ゾゾタウン」にも同様の“定修”の実施をオススメしたい。

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