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ジェネレーションギャップさく裂! “SNS世代”特集を担当した若手と先輩の座談会

 「WWDジャパン」12月2日号は“SNS世代”特集と題し、好きなデザイナーから服に使う金額、環境問題の意識まで、服飾専門学校生のファッション観に迫った。では、SNS世代の実情を知った編集部はどんな感想を抱いたのか?意識のギャップはあったのか?リアルな反応を記録するため、若手記者2人と先輩記者による座談会を実施した。

【座談会参加者】
大塚千践:「WWDジャパン」ニュースデスク。37歳男性。特集全体を統括した。中高生時代の勝負服は「20471120」のピタピタジーンズや「コージ クガ(KOJI KUGA)」のシューズなどで初デートの女性にドン引きされた経験あり。雑誌「ゲット オン(GET ON!)」(学研)や「スマート(SMART)」(宝島社)でファッションを学んだ。

美濃島匡:入社2年目の「WWDジャパン」記者。24歳男性。特集で動画クリエイター、ケミオの取材とアンケート調査を担当した。学生時代は「ヘルムート ラング(HELMUT LANG)」に傾倒。今気になるブランドは「ピーター ドゥ(PETER DO)」とモード系に憧れる反面、ケミオに真っ先に2ショットを依頼するなどミーハーな一面も。

等々力稜:入社2年目、編集制作部所属。25歳男性。今号の表紙撮影を担当し、写真家の新田桂一氏やスタッフを仕切るという大役をやりとげた。好きなデザイナーは阿部千登勢、好きなブランドも「サカイ(SACAI)」。

座談会スタート!

大塚:アンケートを担当した美濃島くんは、調査結果を見てどう思った?

美濃島:1カ月に服に使う金額が意外と低いと感じました。「3万円以上」が2~3割にのぼると予想していましたが、実際は1割のみ。代わりに「5000〜1万5000円」が約半数でした。服飾専門学校生でもあまりお金は使わないんですね。

等々力:専門学校生はバイトの時間が限られているから妥当じゃない?僕は学生時代に毎月3万~5万円くらい使っていたけど、かなり少数派でした。大塚さんはどれくらい使っていましたか?

大塚:僕が20歳前後だったときはエディ・スリマン(Hedi Slimane)による「ディオール オム(DIOR HOMME)」が全盛期。ランチを我慢して服代10万円近く使っていました。自己表現のツールがファッションしかなかったから、投資が集中していたんだよね。

美濃島:僕らはカッコつけるとき、インスタグラムで旅行の写真を上げたり、 自分の部屋をおしゃれに彩って投稿したりと、服以外でもアピールしますよ。

等々力:実際に会う時間よりSNSでやりとりする時間の方が長いから、“SNSを制するものがモテを制する”といっても過言じゃないよね。僕は食べ物を頻繁に投稿するから、イケてるレストランを必死になって探してる。毎日食べログとにらめっこです(笑)。

大塚:僕は学生時代にカップ麺しか食べてなかったから、今じゃ絶対モテないね(笑)。特集で取り上げた「フーフー(FOU FOU)」の高坂マール・デザイナーも話していたけど、「SNSが浸透したことで衣食住全てが自己表現の対象になり、お金の使い道が増えた」。その結果、相対的に服に使う金額が減ったんだね。

美濃島:でも広い意味でのファッション熱は、決して冷めていません。むしろSNSによって服に気を使う人はずっと増えたと思います。

SPA人気の立役者は「ポパイ」?
 D2Cブランドは
作り手自身の“強烈な個性”が必須

大塚:インスタグラムが「好きなメディア・雑誌」部門1位にランクインしているけど、2人もよく使う?

等々力:めちゃくちゃ見ます。新しいブランドは基本インスタで発見するし、コレクションもチェックします。でも中高生のころは「メンズノンノ(MEN’S NON-NO)」(集英社)がおしゃれの教科書でした。

美濃島:僕が服にハマったきっかけも「メンズノンノ」だった。服に無頓着な僕を見かねた母親が、「コレを読んで少しは勉強しなさい!」と買って来たんです(笑)。あとはリニューアル後の「ポパイ(POPEYE)」にも影響を受けたかな。オックスフォードのシャツに太いチノパンから白ソックスのチラ見せ。何の変哲もないアメトラなのかもしれないけど、デザイナーズばかり見ていた僕たちにとってはすごく衝撃でした。

大塚:僕は少し上の世代がアメトラを着ていたから、それほど新鮮味はなかったな。でも、そのスタイルがもっと若い世代で大流行するんだから、ファッションってやっぱり面白いね。SPAブランドの人気が拡大したのは、ベーシックアイテムをおしゃれに着る「ポパイ」発のシティボーイ像が支持されたのが一因かも。アンケートではD2Cブランドについても質問したけど、2人は利用してる?

等々力:よく使っています。作り手のこだわりが詰まっているのに、とにかく買いやすい。ECがメイン販路なのも便利ですね。少量しか受注していないので人気ブランドは売り切ればかりですが、その特別感が購買意欲を高めるのかもしれません。

大塚:僕らの世代はECに抵抗を覚える人が未だにいる。D2Cのビジネスが成り立つのは、SNS世代のおかげだよね。ベーシックなD2Cブランドってどこも同じように見えてしまいがちだけど、SNS世代はどうやって区別してるの?

等々力:ブランドそのものより、作り手の姿勢に共感できるかどうかで選んでいます。デザイナーの個性が強く、好きな世界観が確立されているから、細かなクリエイションに差が出るんです。

美濃島:「フーフー」の高坂デザイナーもすごくキャラが立っていました。普通を売りにするD2Cブランドが生き残るには、作り手の強い個性がにじみ出るもの作りが必要かもしれません。

実はそこまで高くない? 
SNS世代の環境意識

大塚:僕の学生時代はモノに溢れていて、環境問題には全く関心がなかった。でも今回のアンケートの結果は「関心がある」と答えた人が4割以上。時代の変化を強く感じました。

美濃島:サステナビリティへの意識があるのは当然です。小学生のときから「地球がヤバイ」と口すっぱく言われて来ましたからね。でも、環境のために自分の欲しいものを我慢するかと言われるとそうではない。優先順位は意外とまだ低いかも。

等々力:同感です。サステナビリティがある種のムーブメントのように見えるから、表面的に感じてしまうんですよね。アンケートで「関心がある」と答えた人も同じで、あくまで“関心がある”レベルなんじゃないかな。

大塚:メディアの取り上げ方がそれを助長しているかも。古着のリメイクや自然由来の染料などは昔から存在したのに、最近になって「サステナブルだ!」と言いたいがために誘導するような質問をする取材現場も何度か見ました。これではサステナビリティの取り組みが表面的に見えてしまうのも無理はないよね。自戒も込めて。SNS世代が環境問題を自分ゴト化するきっかけはなんだと思う?

等々力:SNS世代はどんな情報でも簡単にアクセスできる環境が当たり前で育ってきたから、信念のない表面的なものは意外と冷静に見てると思いますよ。逆に言えば、本物は全力で応援する。

美濃島:サステナビリティを真剣に考える同世代のデザイナーが現れたら、意識が変わるかもしれません。上から言われるよりもずっと説得力があるし、「自分もやらなきゃ」という気持ちになりそうです。