ファッション

トム・フォードが語る過去と現在

 トム・フォードが、2014年度CFDAアワード特別功労賞を受賞した。アバンギャルドから派生した脱構築という概念が台頭した1990年代、デザイナーにはビジネス能力は不要と考えられた。しかし、デザインに加え、マーケティングに長けていた彼は、「グッチ(GUCCI)」を復活させ、その後自身のブランド「トム フォード(TOM FORD)」を急成長させた。自身の過去やファッションについて、「WWD-NY」のインタビューに答えた。

WWD:最近、パートナーのリチャード・バックリーと同性婚した。

トム・フォード(以下、トム):アップルストアでのトークセッションでリチャードについて聞かれたから、「27年を共にした。実は結婚したんだ」と発表した。こんなに興味を持ってくれるとは思わなかった。

WWD:親になり、人として変わったと感じるか。

トム:変わった。いろいろなことに気を使わなくなった。ビジネスでの成功や、豪邸に住むという目標はどんどん小さくなった。今は子どもが大切だ。

WWD:「特別功労賞」を受賞したことに驚いたか。

トム:受賞の知らせを聞いて、誰かに水をかけられた気分だった。年をとったと気付かされた。

WWD:「グッチ」での10年間はどうだったか。

トム:誇りに思っている。「サンローラン(SAINT LAURENT)」での仕事も同じ。昔一緒に働いた仲間が今、ファッション界の重要なポジションにいることも誇りだ。トーマス・マイヤーやフリーダ・ジャンニーニ、クリストファー・ベイリーらと働いた。「グッチ」が今も僕のコレクションをアーカイブと捉え、参考にしてくれているのも嬉しい。最新コレクションから自分の片りんを感じる時もある。

WWD:前回のインタビューでは「トム フォード」をラグジュアリーブランドの中で、トップ5にしたいと言っていたが、今もそう思うか。

トム:もちろん、それは今でも目標。でも、親になって、今は仕事だけが人生のメインではなくなった。

WWD:「トム フォード」での10年間で成し遂げたことは、素晴らしいと思う。

トム:「グッチ」を去ってからの10年は転換期だった。転換は、何もできなかった時にとる手段だとネガティブに捉える人もいる。でも今回の賞で、僕は10年間で何かを成し遂げられたと気付けた。

WWD:ファッション界も10年で大きく変わったが。

トム:プレ・コレクションがビジネスでの重要度を増している。僕はプレを見せることには反対。商品が絶え間なく発表されることに意味があるのか疑問だ。また、携帯端末が発達した今はショーを見ている人がSNSや写真を撮ることに夢中。純粋にショーを見て感動しているのかがわからない。

WWD:SNSの発展には反対か。

トム:みんなSNSに気をとられている。流れに反抗したかったが、できなかった。SNSは、僕が立ち入ることのできないポピュラーな文化になってしまった。

WWD:デジタル技術の向上による写真の加工については、どう感じるか。

トム:僕は写真を修正しないほうがいいと思う。どうしてみんな加工したがるのだろうか。ファッション広告のモデルは、もはや人ではない。理想化された、単なるイメージだ。

WWD:最後に、あなたにとって、ファッションで最も重要なものは何か。

トム:デザイナーとして最も大切なことは、現代のカルチャーに対する強い想いを持っているということ。デザインをやめた時に一度見失ったが、カルチャーが僕をビジネスに戻してくれた。

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