ファッション

パリのデモ影響下の「サカイ」のショー 「ナイキ」とのコラボスニーカーはさらに進化

 パリで現在も続く政府への抗議に端を発する黄色いベスト運動の混乱を避けるため、デモが本格化する土曜日の午後ではなく同日朝の9時にショー開始時間を早めた「サカイ(SACAI)」。それでも来場者は会場にたどり着くまでに、警察による包囲網や人気のない不気味なパリ中心街を通り抜けなければならず、あのナオミ・キャンベル(Naomi Campbell)でさえ車で通り抜けられないバリケードを避けるため「ここまで歩いたわ。みんなと同じようにね」と言うほどだ。しかしショーはそのかいがあるものだった。

 「私に命は救えないかもしれないけど、人々を元気づけて喜びを与えることはできる」と語る阿部千登勢デザイナーがショーで見せたのは、「スポーティーとテーラード、エレガントの融合」と形容するウィメンズの2019年プレ・フォールとメンズの19-20年秋冬コレクションだ。得意とするハイブリッドで肩や袖口にファーを配したニットやMA-1ジャケットが登場した一方、ファスナーで開閉するニットで肩を見せ、センシュアルな面ものぞかせる。フランネルパンツにスポーティーなレギンスを融合したパンツや、裾が2つに分かれた細身のパンツにスカートを融合したボトムスも登場。“フォーマル回帰”と言われる今シーズンのトレンドには、ナイロン素材のシングルジャケットで、「サカイ」らしくスポーティーをミックスして応えた。

 19年春夏シーズンに続き「ナイキ(NIKE)」とコラボしたダウンジャケットとスニーカーも発表した。先シーズンにデビューした「ナイキ」を代表する2つのモデルを融合したローカットスニーカーとハイカットスニーカーは、ホワイトをベースにしたものとブラックをベースにした冬らしい配色になって登場した。

 今シーズンはこの2型をさらに進化させたスニーカーも登場。ファーストルックでカイア・ガーバー(Kaia Gerber)が着用したローカットスニーカーは、秋冬シーズンらしくシュータン部分にフェイクファーを取り付け、ニュートラルな配色でまとめた。一方、ハイカットのスニーカーは、今回はシューレースを左右にクロスさせずにサイドでまとめた。レザーのシュータン部分にはファスナーを取り付けてスポーティーに寄せつつ、フリンジでフォーマルさも取り入れた。どちらもホワイトをベースにしたカラーとブラックをベースにしたカラーが登場した。シュータンやスウッシュを2重にした「サカイ」らしいディテールは前シーズンのモデルから引き継がれた。

 Tシャツやフーディーにプリントされた“Bar Italia London”は、阿部が学生時代に足繁く通ったロンドン・ソーホーのカフェの名前だ。「あらゆるタイプの人が交流していた」と阿部が語るカフェのように、このコレクションではさまざまな文化とスタイルの融合を目指したという。

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