ファッション

「ユニクロ」と協業のイネスが栗原類、滝沢直己と語る“ヒュッゲ”な時間とこれからの服

 「ユニクロ(UNIQLO)」は、フランスを代表するファッションアイコンと協業した「イネス・ド・ラ・フレサンジュ(INES DE LA FRESSANGE)」初のメンズラインデビューとイネスの来日を記念したトークイベントを9月5日、グローバル旗艦店のイベントスペースであるユニクロ銀座店12階で開催した。ゲストに迎えたモデル・俳優の栗原類と、滝沢直己「ユニクロ」スペシャルプロジェクト デザイン・ディレクターとともに、今回のコレクションのテーマである“ヒュッゲ(HYGGE)”に込めた意味や、“ヒュッゲ”を感じる瞬間、服作りに込めた思いなどを語った。

 白シャツに紺ジャケット、濃色のデニムに、自身がグローバルアンバサダーを務める「ロジェ ヴィヴィエ(ROGER VIVIER)」のビジュー付きサンダルといういで立ちでさっそうとステージに現れたイネスは、長い脚を大きく広げた男前なポーズで「朝10時という早い時間から集まってくれてありがとう。誰も来ていないんじゃないかと思った(笑)。9月1日の発売直後から売れ行きは好調で、成功だと言ってもらえて喜んでいる。古い友達のナオキと再会できて良かった」と、朝が遅いといわれるメディア関係者や、滝沢デザイン・ディレクターに対するお礼からトークをスタート。2014年春夏からスタートしたこのコラボも8シーズン目を迎えたが、滝沢デザイン・ディレクターは、「普通のブランドでさえ8シーズン目を迎えるのは難しいこと」としたうえで、「彼女がパリを拠点に多くの良いものを見たり着たりしてきた経験や視点が顧客に新鮮さを持って受け入れられているからこそ、継続できているコレクションだ」と評する。

 メンズのデビューについては、もともとメンズにインスパイアされた服も多く、イネス自身が思春期からメンズの服を愛用し、父親の服をこっそり借りてきていたことなどを明かした。「ナオキとも、ウィメンズの商品をそのままサイズを大きくしてもメンズにピッタリだと話していたし、実際に男性にも買ってもらえていると聞いていた。人生で初めてメンズが手掛けられて良かった。『ユニクロ』は幅広い年齢層の顧客を持っており、私の服もエイジレスで、年齢を問わずに着ていただけるのがうれしい」とニッコリ。

 5歳からモデルとして活動をしてきた栗原は、19歳で念願のパリコレにデビュー。「今も1月、6月のメンズ・コレクション開催時期には、日本の仕事は入れずに、常に新しいファッションやトレンドを研究している」というファッションオタクだ。そんな栗原は「イネスはパリジャンシックの憧れの存在。スタイルがいいだけでなく、頭の先から足の先までスタイルがあり、ディテールへのこだわりが素晴らしく、存在感に圧倒される」とイネスを称賛。「初めてのメンズラインのローンチに関われて光栄」といい、当日着用したセットアップについても、「着た時に気付くディテールや、肌触りの良さが心地いい。普段こういうセットアップを持っていないので、次の1月にはこれを着てパリやミラノなどの海外のショーを見に行けたら」「今持っているものと合わせやすいものがたくさんあり、自分の気持ちを、喜怒哀楽を表現できる服がたくさんある。大切な人、家族や友人にも勧めてほしい」とコメントした。

 今回のコレクションのテーマは“ヒュッゲ”だ。デンマーク語で、人と人とのふれあいから生まれる温もりや、心地よい雰囲気や空間、幸福感に満ちていることなどを意味するもの。滝沢デザイン・ディレクターは、「イネスと写真を見ていた時、母娘の温かさを感じるべきところが、何かお互いがけんかをしているように見えた。今の時代はなぜこのようになってしまうのか。やはりもっと、温かいムードを作るための服というのが必要なのではないかと思った。そのときにイネスから出てきたのが“ヒュッゲ”で、生活の中から出てきた自然な言葉だった」と説明。イネスは「人生の中で生きていると次第に大切なものが分かってくる。あるものは重要性を増し、あるものは、重要性を失っていく。そんな中で、幸福や友情、温かさを求めるようになる。デンマークは世界一、国民が幸福な国だといわれている。私も好きな人、大切な人と過ごす時間が一番重要だと思うようになった。そして、服は自分自身が求めるもの回答であり、一言でいうと、幸福だと思う。『ユニクロ』は、常にメッセージを伝えてきたブランドであり、服を通じて幸福を提供することは、『ユニクロ』の哲学にもピッタリと合うものだと思う」と、コレクションに込めた思いを明かす。

 ヒュッゲな時間について、栗原は「猫に囲まれて寝ること。4匹に囲まれながら僕がまっすぐに寝て、気が付くと1匹が僕のおなかの上で寝ているというのが理想」と回答し、メディアや関係者らをまさにヒュッゲな雰囲気に包みこんだ。一方のイネスは、「今、この瞬間だ。とてもヒュッゲな時間だと思う。静けさに満ちて、心地良くて、人々との出会いもある。一瞬一瞬を楽しむことが大切なこと」と答えた。

 さらにイネスは、「こういったことが服とどう関係があるのかと思われる人もいるかもしれないけれど、着る服によって自信が持てる、より心地良く快適な気持ちになれることがとても大切。そして、着る方のパーソナリティーや価値を高めるのが服の役目だと思うし、モードにおいて関心が持てるのはそういう点だ。『ユニクロ』は世界中に店があるユニバーサルなメッセージを伝えているブランドなので、世界中の方から理解されるだろう」と持論を述べた。これを受けて滝沢デザイン・ディレクターは、「服の立ち位置が時代と共に変わってくる中で、デザイナーのエゴではなく、相手のために服を作ることがますます重要になってきている。イネス自身のパーソナリティーからくる愛をテーマにコレクションを作っているが、今回は特にこのコレクションに出てきている」と自負する。特に「ローキー(抑制された、控え目)な服、ということもできると思う。袖を通してほわっとするとか、楽になる、気持ち良い、ということを考えてフィッティングをしている。セーターの襟ぐり、ジャケットの袖付けなど。小さなことだけれども、着る人に対する僕らの愛情を込めている。そういうところを感じてもらえたらうれしい」と付け加える。

 イネスは「私自身もナオキも長年モードの世界で仕事をしてきているが、その中で大切なのは、時を超えても残っている服だと感じている。ブランドは関係なく、タイムレスに流行に左右されず長く愛され、そして、着る人が自分のものにしていける服。それが、服作りの一番の面白さでもあると思っている。私はそれを音符のようなものだと思っている。どのようなシンフォニーにもどのようなハーモニーにも使える音符をだんだん求めるようになってきた。一瞬のファンタジックなものを求めるのではなくて、多くの人に多くの国で長く愛されるものを作りたい。今回のコレクションでは、そんなユニバーサルなものを提供することに成功できたと思う」と自信を見せた。

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