ファッション

奇想天外なコレクションはどうして作られるのか? トム・ブラウンの美学の背景

 トム・ブラウンは希代のショーマンとして米ファッション界に出現した。彼のランウエイに登場する度肝を抜くような作品は、美しいまでに非現実的で、大抵の場合“まとも”とはかけ離れている。彼の頭はアイデアで満ち溢れているようだが、それらをどこから得たかを話してはくれそうもない。ペンシルバニア出身の品行方正なカトリックのスクールボーイは、話すことよりも見られる方が好みなのだ。

 「どうしてこれをやる人がもっと増えないのか、全く理解できないね」とトム・ブラウンは、彼の有名な“習慣”を引き合いに出していう。彼が話しているのは、今では彼のユニフォームでありアイコンともいえる“短丈”スーツでもないし、ほぼ毎晩たしなむ、1杯の冷やしたシャンパンでもない。その“習慣”とは、年2回、入念に作り上げたコレクションでランウエイショーをすることなのだ。そのショーでブラウンは、尼僧たちが厳かな儀式の中、2人の男性モデルの手によって修道衣から解放される様子を描いたり、精神病院でファンタスティックにキメた受刑者たちの様子を描いたりする。彼のランウエイからはその生き生きとしたイマジネーションを垣間見ることができるが、同時にかすかな狂気の香りも嗅ぎ取れる。

 彼は今でも、主に10年前に風変わりなショートスーツを提案したメンズウエアのデザイナーとして知られている。「メンズよりもさらに『見たい!』と思わせるものを作らなければならない」と語る彼のウィメンズに対する関心は、まさにスタート当初から沸騰していた。「美しくテーラリングされたジャケットやトラウザーやドレスを身に着けた女性ほど目に優しいものはないね」。彼のテーラードピースは、シルエットは徹底的にクラシックながら、素材はとんでもなく斬新だ。ミンクでトリミングされたギピュールレースや、ホースヘアでトリミングしたメンズ素材、さらには3-Dフラワーのアップリケを駆使する。また、2015-16年秋冬コレクションは、古臭い死体安置所を背景に悲哀溢れるビクトリアンロマンスが繰り広げられ、このシーズンで最も称賛され、話題になったショーの一つになった。それまでのコレクションよりもセンシュアルで、本人も自分の“安全地帯”ではないと認めているドレスに重点が置かれた同ショーは、彼にとってのターニングポイントになった。

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