ファッション

アダストリア&カフェ・カンパニー、合弁の背景

 アダストリアは11月29日、カフェ・カンパニーと11月1日に設立した合弁会社ピープルズインク(peoples inc.)のお披露目パーティーと、ミニ記者会見を開いた。ファッション系企業のフード事業強化が活発化する中で、両者はどのような経緯で合弁会社設立に至ったのか。その背景や事業の可能性を探った。

 会見で新会社の社長に就いた楠本修二郎カフェ・カンパニー社長は、「これまでサントリー(『伊右衛門サロン』)やJA全農(三越銀座店の『みのりカフェ』『みのる食堂』)などとコラボレーションして新しい価値観を学ばせてもらってきた。今回は(一歩進んで)経営と事業の先輩で、尊敬する企業であるアダストリアと合弁事業とすることを、僕の方から提案させてもらった。52歳になり、残りの人生をどう過ごしどこに集中するかを考えたり、時代が大きく変わるタイミングで、より突っ込んで両社で価値を創造したいと考えた。成功のファクターである、覚悟とエネルギーと強い意志を示した」と合弁会社設立の経緯を説明した。新会社の資本金は1000万円で、出資比率はカフェ・カンパニー 66%、アダストリア 34%。主力業態移管後のカフェ・カンパニーはR&D(研究・開発)や企画会社の色合いを強めていく。

 一方、オファーを受け入れた形の福田三千男アダストリア会長兼最高経営責任者(CEO)はカフェ・カンパニーや楠本社長の魅力について「今でも何をやっているのか全容は分からないが、いろいろな人から面白いと聞く。組んでいく中で、魅力や能力に気付くと思う。契約書も隅々までは読んでいないが、どういう世界を作るかが重要であり、それが一緒にできると思った。アダストリアも今回の合弁会社を機にもっと(可能性や領域が)広がると思うし、全く異質なので、お互いの漂流している人が生きてくると思う。楠本さんが手掛けるものは、同業者が手掛けるものとは違うものができるはずだ。僕はものごとを始めるのに、気楽に考えるたちだ。ただし、計画は細かくした方がいいと伝えた。うちの会社の人間にAといったらAが出てくるが、楠本くんはAと言ったらA′やBになって返ってくる。物事が決まらない反面、面白いとも感じた。この人の下で育ったスタッフがどういう人たちなのかも楽しみだ。21世紀はどういう人が集まるところを作れるかが重要だ。(契約までの半年間で)いいコミュニケーションがとれたと思っている」と、異業種と組む相乗効果に期待を寄せる。

 ピープルズインクの事業コンセプトは、「より豊かな『NIPPON の衣・食・住』を育み、ワクワクする未来を創造していくことを目指し、飲食事業とアパレル小売事業が単なる組み合わせに留まらず、『掛け合わせ』による、密接に結びついた新たな事業の拡大、さらに、お客さまに対する新たな価値を提供する」こと。「LOVE&PEACEになるコミュニティーを作る」こともテーマに掲げている。

 楠本社長と旧知の仲で、ピープルズインクの副社長に就任した木村治アダストリア常務兼新規事業開発本部本部長によると、具体的な事業としては、カフェ・カンパニーから移管した「ワイアードカフェ」「ワイアードキッチン」を中心とした既存業態を広げていくことが一つ。二つ目として、アダストリアの17のブランドとの掛け算で、ファッション、飲食、家具など幅広い展開を考えていくという。三つ目は、海外ブランドの日本展開だ。「すでにハワイやパリなどにも一緒に視察に行っており、刺激を受けた」と話す。さらに、「アパレルや飲食だけではない、新しいカルチャーなどを作っていきたい」と意気込む。「例えば、スポーツ系のカフェを作り、隣でヨガのスクールを作り、ヨガのウエアをオリジナルで作るなど、新しいビジネスを生んでいきたい」加えて、カフェ・カンパニーが地域に根差した業態開発などを行ってきたことから、過疎化が進む地方の町おこしや、古民家のリノベーションによる新しいコミュニティー施設の開発、海外進出の構想も持つ。

 木村副社長は飲食業界のスタッフの社会的地位向上にも取り組みたい意向だ。「ピープルズインクでできることは無限大だ。楠本社長はこれだけ(器が)デカい人なので、業界を改革するリーダーシップ的な会社になれたら。その一つが、スタッフの地位向上だ。僕らがアパレル入った30年前には、販売員の社会的地位はかなり低かったが、アダストリアは今は業界でもトップ水準まで向上できた。ピープルズインクでも、飲食業界のスタッフの社会的地位を一緒に考えていきたい」と使命感に燃える。

 カフェ・カンパニーは来春、「ギンザシックス」に和をテーマにした330坪(約990平方メートル)の大フードホールを出店予定だ。さらに、芸能プロダクションのレプロと組んで「ワイアードホテル」を浅草にオープンさせるなど、プロジェクトが山盛りだ。楠本社長は「カフェ・カンパニーでの事業になるが『ワイアードホテル』は、『ワイアード』のブランディングにもつながるし、世界観やMDを連動させピープルズインクで事業展開していくことも考えている」と明かす。
 
 有形無形の相乗効果を発揮しながら、収益体質化や事業領域の拡大が図れるか、注目が集まる。

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