
2027年春夏の東京では、完成した服をランウエイに並べるだけでなく、その背景にある着想源や技術、制作の過程まで伝える発表が目立った。自宅やアトリエを再現したり、美術館のようにモデルを配置したり、反物の幅を生かして服の構造を探ったり、同じルックを異なる身体で見せたり。方法は違っても、そこに共通するのは、ブランドの考えを最もふさわしい形で届けようとする姿勢だ。服をどう見せ、何を伝えたのか。(この記事は「WWDJAPAN」2026年9月14&21日合併号からの抜粋で、無料会員登録で最後まで読めます。会員でない方は下の「0円」のボタンを押してください)
「エンフォルド(ENFOLD)」
DESIGNER/植田みずき
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テーマは「WRAPPING STRUCTURE」。建築を機能、骨組み、表皮に分解し、配管や断熱材など、壁の内側に隠れた構造まで着想源とした。無機質なコンクリートが広がる会場で、ボンディングやエナメル、リネンネップなど表情の異なる素材を重ね、体を包むもう1つの構造を描いた。ルイス・バラガン(Luis Barragan)の建築物からヒントを得た鮮やかな色彩や、山口崇多によるグラフィックも加え、冷たく複雑な構造をポップで軽やかな服へと落とし込んだ。
「アンナ チョイ(ANNA CHOI)」
DESIGNER/アンナ・チョイ(Anna Choi)
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拠点の1つとするニューヨークをはじめ日本でも見たり触れたりしたものと、その記憶を出発点に、ボーンやワイヤー、シルクオーガンジー、チュールを用いて体と服の間に立体を築いた。ボリュームを持たせたドレスから体に沿う曲線まで、オートクチュールの技術によってスカルプチャーのような仕上がりを追求した。初のフィジカルでの発表では、美術館をテーマに展示物のようにモデルを配置。観客はモデルの間を巡りながら、その技術を体感した。
「ミゼン(MIZEN)」
DESIGNER/寺西俊輔
着物の反物に由来する約38cmの生地幅を起点に、限られた面を使って何ができるかを探った。熟知するパターンの知見を生かし、生地を切り分けるのではなく、その幅を生かしながら構造を再考。伝毛織と開発した、かすりによるランダムストライプのオリジナル生地など、日本の産地や職人との協業も取り入れた。会場では、長く垂らした生地と完成したルックを並べて提示。和装の発想が現代の服へ展開されていく過程を、実験的なプレゼンテーションで伝えた。
「メグミウラ ワードローブ(MEGMIURA WARDROBE)」
DESIGNER/三浦メグ
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1980年代のデヴィッド・バーン(David Byrne)をはじめとするニューウエーブの表現を着想源に、ブランドコンセプトである360度どこから見ても美しいアウターを主役にしたショーを披露した。オーバーサイズのレインコートやレトロな花柄のブルゾン、ショルダー付きコートなど、視点や着方によって印象が変わる服がそろう。これらを年齢や性別、ルーツの異なるモデルが3人ずつ着せて見せた。中には双子も。人それぞれに着方があるように、服にもいろいろな似合い方があるということを示した。
「オートモードヒラタ(HAUTE MODE HIRATA)」
DESIGNER/平田欧子、平田早姫、平田翔
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「形を決めるのは誰か」を起点に、帽子を型取り制作する概念から、着用者自身が手を加えることで形や表情を変えられる帽子を提案した。メッシュやシフォン、細い麻ブレードなど春夏シーズンらしい涼しげな素材を用いながら、形成しやすいようハードなテクスチャーに仕上げた。プレゼンテーションでは、帽子を台上に置くのではなく、モデルが着用した状態で目線の高さから披露。顔や髪、服、体と一体になって初めて完成する帽子の姿を見せた。
「ユウショウコバヤシ(YUSHOKOBAYASHI)」
DESIGNER/小林裕翔、上原碧海
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アンデルセン(Andersen)の「人魚姫」を軸に、おとぎ話の幻想性や不穏さ、シグマー・ポルケ(Sigmar Polke)の作品から着想。ほつれたコットンニットやレース、パール、貝殻、スパンコールに加え、塗り絵を起点とした刺しゅうやプリントで海の世界を表現した。海底から水面を見上げたときの光をイメージした白や淡いブルー、ピンクを中心に、ニットには大きなほつれや垂れ下がる糸を施し、パールやリボン、貝殻を飾ったブラウス、スパンコールドレスなどをそろえた。
「シージーン(C JEAN)」
DESIGNER/チュンユアン・ジーン(Chun-Yuan Jean)
コレクション名は、音楽「ボレロ」の構造に着想した「BECOMING: BOLÉRO」。同じ旋律を反復しながら音や厚みを増していく変化を、構築的なシルエットや素材の重なりに置き換えた。天然繊維や生成りの素材を中心に、透過性や密度の違いによって少しずつ表情を変化させたほか、京都の染元しょうび苑とろうけつ染めのテキスタイルを開発。会場には台湾のアトリエを再現し、デザイナーがドレスを仕上げる姿を通して、制作のプロセスまでを披露した。
「アンソニー キャリドン(ANTHONY CALYDON)」
DESIGNER/アンソニー・キャリドン(Anthony Calydon)
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2023年に設立したD2Cブランドで、7月に26年「ANDAMファッション・アワード(ANDAM FASHION AWARD)」ピエール・ベルジェ賞を受賞したばかり。全てフランス生産の色とりどりのリブニットを使ったアイテムは、パーカやハーフパンツ、トレンチコートに加え、ビーニーや靴下、手袋、バッグまで広がる。公式サイトに登録すると月に1度のドロップ販売時に通知が届き、商品を購入できる。デザイナーを含む5人で手掛けており、今後さらなるブランド拡大を図るという。
「スドーク(SODUK)」
DESIGNER/工藤司
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テーマは「LOVE」。冷蔵庫にある食材で作った料理がおいしかったことや、それを誰かがおいしく食べてくれたことなど、日常の中の記憶の断片から始まった。琉球藍研究所で染めた過去のアーカイブ、麻のプリーツスカート、昔のじゅうたんのような素材をニーパッチに用いた岡山デニムなど。「ドレスコードがあるようでない」街の中で、身の回りの物事に愛情を注ぐことから生まれる新しい記憶を表現。廃材を活用した空間を作り日常をランウエイに演出した。
「ベンチ/ プレゼンツ スレッズ オブ ドリームス(BENCH/ Presents Threads of Dreams)」
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日本とフィリピンの国交樹立70周年に合わせ、同国のデザイナーのジャギー・グラリーノ(Jaggy Glarino)、ジョーイ・サムソン(Joey Samson)、レット・イアラ(Rhett Eala)が合同ショーを行った。実験的なシルエットと伝統技法を組み合わせるグラリーノ、精緻なテーラリングでテルノやバロンなどの伝統衣装を再解釈するサムソンら、異なる世代と作風が1つのランウエイに集結。着物やボロに加えて、日の丸を想起させるデザインなど、それぞれが2国の文化や素材、ファッション表現の幅広さを伝えた。