半年前、パリにやってきた「ヴァレンティノ」のメンズ。カットアウトしたレザーを丁寧に張り合わせて描くカモフラージュや、デニムで作るサルトリア仕立てのスーツなど、クチュールメゾンならではのテクニックに由来する、若い世代にもアピールできそうなエレガンスの提案は、さらに磨きがかかっている。クチュールという文化を、次世代にも継承していこうという意気込みさえ感じさせた。
今シーズンはまず、半年前にも試したデニムで作るサルトリアスーツに挑戦。前回との違いは、濃いインディゴからライトまで、様々なブルーのデニムを一着の中で複数用いていることだ。しかし、そのハイブリッドは、ランダムに生地を張り合わせ温もり溢れる一着を生みだす手作り感覚の"パッチワーク"とは全く別次元のもの。たとえばファーストルックは、ジャケットの身頃や袖はもちろん、ポケットのフラップまで2色のデニムで切り返しているのに、その境目はほとんど目立たずスリーク(なめらか)。卓越した職人技が光っているハズなのに、決してそれを押しつけない。構造が複雑なメンズのスーツにおいて、色と色の境界線を左の袖と身頃、そして右の袖まで一直線に仕上げるのは、相当大変なこと。それをスマートにこなしてしまうあたりが「ヴァレンティノ」らしさだ。合わせたパンツは、適度にユルいストレート。センタープレスを加えることで、カジュアルとフォーマルの絶妙な中間点を捉えている。
今シーズンのトレンドアイテムとなりつつある、ラグランスリーブ&オーバーサイズのTシャツは、デニムやコットンポプリンで美しく。ボンディングレザーで作る体を浮遊するシルエットのブルゾンも、一部をレザーで隠したマグネットポケットにすることでミニマルに。シルクジャカードの花柄パンツやインターシャのカモフラニット、トロピカルモチーフをプリントしたチノパンも同系色でまとめてスマートだ。異彩を放つのは、スタッズを含むかかとの部分をネオンカラーで切り返したカモフラスニーカーと、「ハワイアナス」とコラボレーションしたビーチサンダル。ビーチサンダルは、鼻緒にあたる部分にクロコダイルを用いている。圧倒的なテクニックが詰まっている分、どうしても価格が高くなりがちな「ヴァレンティノ」にとってのエントリーアイテムになりそうだ。
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