韓国発のKビューティや中国発のCビューティに続き、アラブビューティを意味するAビューティが近年中東全域で盛り上がっている。150万人以上のInstagramフォロワーを持ち、サウジアラビアの首都リヤドを拠点に活動するメイクアップアーティストのヤラ・アルナムラ(Yara Alnamlah)が創設したコスメブランド「ムーングレイズ(MOONGLAZE)」は昨年12月、サウジアラビアのブランドとして初めて英百貨店セルフリッジ(SELFRIDGES)で販売を開始し、直後に完売した。
アルナムラ「ムーングレイズ」創設者は、「Aビューティは自信に満ち、表現力が高く大胆だ」と述べる。ブランド名は、アラビア語で月を意味する「カマル(qamar)」が美しい人を呼ぶ愛称として使われることに由来する。「ブランド名には、外見だけでなく内面も輝くようにというビジョンを反映した。私たちは、人々がそれぞれのアイデンティティーを受け入れ、高められる化粧品を開発している」といい、40ドル(約5700円)以下のチークやハイライトスティックなどを販売する。
文化と多様性を融合しつつアラブ女性のための美を追求
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一方でサラ・アルラシド(Sara Alrashed)も同様のビジョンを掲げ、2023年に「アステリ ビューティ(ASTERI BEAUTY以下、アステリ)」を創設。18〜40歳の顧客層を持ち、現在はサウジアラビアやクウェート、バーレーンなどに10店舗を展開している。「この国で生まれ育ったが、アラブ女性の肌質や土地の気候に合うブランドは見たことがなかった。グローバル基準に対応しながら、私たちの多様な文化に語りかけ、それを受け入れるブランドを目指した」。“デザート(砂漠)プルーフ”をうたい、高性能のマスカラやチーク、セッティングスプレー、リップなどをそろえる。「アラブ人は多人種であり、さまざまな見た目の人がいるので、『アステリ』は包括性を大切にしている」といい、「インスピレーションを得るためにサウジアラビアの伝統にもよく目を向ける」と付け加えた。モリンガオイルやナツメヤシ種子オイルといった地元の原料や古い儀式から着想を得ており、パッケージや店舗デザインは同地の多様な自然からインスピレーションを受けている。
「私たちは『星空の下の姉妹』をモットーとし、全ての製品にアラビア語のカリフラフィーでこの文言を刻んでいる。リップスティックのカラーシェードは全て、パワフルなアラブ女性から取っている」。先月リヤドに10店舗目をオープンした同ブランドは海外進出とカテゴリーの拡充を視野に入れており、来年スキンケア製品を発売する予定だ。
アラブのクリエイションが世界へ
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アルナムラ「ムーングレイズ」創設者はセルフリッジでの展開を受けて、「サウジアラビアのクリエイティビティーやイノベーションが世界的な舞台で認められた。Aビューティが単なるニッチではなく、必要とされていることを証明したのだ」と語った。Aビューティの多用途性や核となるフィロソフィーを紹介することで、さらに多くの市場と顧客にアプローチすることは、同氏にとって重要な優先事項だ。「ほかの大手ブランドと競合し、出店を推し進めるのは大変なことだが、プライドもある。高品質の製品作りに焦点を置くことで、戦っていく」とし、「サウジアラビア人は教育水準が高く、意識の高い消費者だ。ECであれ実店舗であれ、ブランドのコンセプトやフォーミュラの質感、ストーリーなどを体験することを好み、コミュニティーを形成する」と言及した。
本文中の円換算レート:1ドル=143円