アジア発のビューティブランドやトレンドは、グローバル市場ですでに強い存在感を放っている。しかしその勢いはさらに加速しているという。アジアビューティは、Kビューティ(韓国)、Cビューティ(中国)、Jビューティ(日本)の3つの地域を中心に定義される。グローバル市場におけるアジアビューティへの注目の高まりとともに、成分や処方開発のトレンドにも影響を与えている。サウジアラビア・リヤドで開催された「2025 WWD グローバル ファッション&ビューティ サミット」に、中東で高級ブランドの流通と小売りを手掛けるシャルーブ・グループ(CHALHOUB GROUP)のアンドレア・フェッツァー(Andrea Fetzer)戦略担当バイスプレジデントが登壇し、グローバル化が進むアジアビューティの未来について語った。
「アジア発のビューティブランドは、TikTok上から世界中の消費者のバスルーム、アマゾン(AMAZON)のベストセラーランキングのトップにまで進出している」とフェッツァー=バイスプレジデント。「クレンジングオイルや水光肌といった個別のトレンドはあるものの、アジアビューティの潮流は単なる一過性の流行ではない」と強調する。「以前はアジアビューティといえば流行り廃りの激しい“波”のように語られていた。しかし今では、ブランドがグローバル展開を本格化し、小売戦略やポジショニング、顧客へのアプローチが進化している」。
GCC市場で急成長
トップカテゴリーはスキンケア
サウジアラビア、バーレーン、クウェートなど中東の6カ国からなる湾岸協力会議(GCC)諸国では、アジアビューティ市場が2022年から24年にかけて年平均成長率26%を記録した。これは同期間の欧米市場の成長率15%を大きく上回る。とはいえ、GCC地域におけるアジアビューティの市場浸透率は3%にとどまり、グローバル平均の8%と比較すれば今後さらなる成長余地があることが分かる。
「現在の成長をけん引しているのはスキンケアだ」とフェッツァー=バイスプレジデントは説明する。「中でもKビューティに最も勢いがあり、Cビューティはカラーコスメで特に強く、一部ではスキンケア分野にも貢献している。Jビューティはスキンケア・メイク・ヘアケアがバランスよく成長を遂げている」という。また、国別に見るとサウジアラビアではメイクアップの売り上げがアジアビューティ市場の約3分の1を占め、GCC全体ではスキンケアが優勢な中で独自の傾向を示している。
K・J・Cビューティ
異なる戦略とターゲット
グローバル展開に成功しているブランドの特徴についてフェッツァー=バイスプレジデントは、「Kビューティは製品の革新性がカギ。ゼリー状のテクスチャーや発酵成分、Z世代向けのマーケティングが特徴だ」と指摘。「Jビューティはより洗練され、伝統と高級感の融合が魅力。消費者との信頼関係構築はオンラインではなくオフラインで行われる傾向が強く、顧客層は中高年で成熟している。価格帯も比較的高めだ」と続ける。「Cビューティはスピードとスケール重視で、eコマース発のブランドが中心。次のトレンドを常に探しており、ソーシャルコマースの影響力も非常に大きい。消費者は即効性を求める20代前半が中心」だという。
スキンケアルーティンが変化し
ハイブリッド製品がトレンドに
アジア市場で長らく主流だった10以上のステップを踏むスキンケアルーティンも変化しつつあり、現在はより多機能なハイブリッド製品へのシフトが進んでいる。これは、平均使用アイテム数が4.8個とされるサウジアラビアの消費者の実態とも一致する。
GCC諸国のZ世代の間ではKビューティの浸透が進んでおり、シャルーブ・グループの調査では「ビューティ オブ ジョソン(BEAUTY OF JOSEON)」「ミクスン(MIXSOON)」「ラネージュ(LANEIGE)」の3ブランドがZ世代の人気ブランドトップ10にランクインしているという。「これらの製品に対する認知度は非常に高く、購買意欲にもつながっている。GCCはアジアビューティにとって非常に有望な市場だ」と展望を語った。