ビューティ
特集 CEO2025 ビューティ編

【アルビオン 小林章一社長】熱狂と感動を生み出し続け、まだ見ぬ未来を切り拓く

PROFILE: 小林章一/社長

小林章一/社長
PROFILE: (こばやし・しょういち)1963年生まれ。慶應義塾大学法学部法律学科卒業後、西武百貨店勤務を経て、88年にアルビオンに入社。「ソニア リキエル ボーテ」事業の立ち上げなど、ブランドビジネスに携わる。フランス勤務を経て、91年に取締役、95年に常務・マーケティング本部長を歴任。2004年に副社長就任、06年から現職 PHTO : SHUNICHI ODA

唯一無二の化粧水“薬用スキンコンディショナー エッセンシャル”が2024年に誕生50周年の節目を経て、高級化粧品専門メーカーとしてますます存在感を増すアルビオン。モノ作りと接客力を両輪に、さらなる成長に向けた攻めの姿勢を強めている。

“夢”と“やる気”が原動力
顧客の心に響く接客とモノ作りで成長加速

WWD:アルビオンが見据える未来の可能性とは?

小林章一社長(以下、小林):お客さまに熱狂的に支持していただける製品を生み出し続けることが、未来の可能性を切り拓くと信じている。大事なのは“夢”と“やる気”。リソースや環境にどんな制限があったとしてもそこに不可能はない。「お客さまを喜ばせたい」という夢、思いを込めた真摯なモノ作りや接客は人の心を動かし、それが結果的に売り上げにもつながっていく。

WWD:これまでも幾度となく“熱狂”を生み出してきた。

小林:琵琶湖のほとりに位置する滋賀県長浜市の人通りの少ない地で多い時には月400回ほどのお手入れを行い、年間約9000万円を売り上げている店舗がある。これも製品や接客が圧倒的であれば環境にかかわらずお客さまに支持いただけるという一例で、本社に「接客が素晴らしかった。ぜひ一言お礼を伝えたかった」とわざわざ電話してくださるお客さまも多くいる。こんな小さな“熱狂”を生むことが私にとって生きがいであり、喜びでもある。唯一無二のモノ作りと接客のレベルを磨き続け、私が現役でいる限りはその可能性を追求していきたい。どこまでも攻め続けたいという思いがある。

WWD:攻めの姿勢でヒット製品が生まれている。

小林:22年にスタートした“フラルネ”は、コロナ禍で静かな立ち上げとなったものの、今では中核シリーズに育ちつつある。昨年秋にパワーアップリニューアルした“アンフィネス”も話題を集めている。好調に推移している主軸製品に加え、7種のビタミンC誘導体を配合したスペシャル美容液“アンフィネス メンテナンス ショット 7”といった突き抜けた製品も誕生している。ただ、攻め続けるのと同時に当社が大切にしているのは“育てる”文化だ。本当に良い製品は手塩にかけて全社で育てていく。だからこそ昨年50周年を迎えた“薬用スキンコンディショナー エッセンシャル”のようなロングセラー製品も生まれる。業界を見ても50年続く製品はそう多くはないだろう。22年に刷新した“フレッシュハーバルオイル”も当初の想定を超え、今では年間20万個売れるヒット製品になった。強烈な個性を放つ製品は、根本を変えずに刷新を続けることで長く愛される唯一無二の存在に育っていく。コロナ禍で厳しい状況が続いたが、昨年「アルビオン」はおかげさまで久しぶりに2ケタ近い成長を遂げた。会員数も5年ぶりに増加し、良い勢いが継続している。

WWD:国際事業本部が手掛けるブランドの動向は。

小林:「ポール & ジョー ボーテ」は堅調に動いているが、もう少しテコ入れが必要。質感や色、ニュアンスの面でよりブランドらしさを打ち出していけるように力を注ぎたい。「アナ スイ コスメティックス」はECのシェアが伸長、「エレガンス」は10年ぶりに新色が登場したフェイスパウダー“ラ プードル オートニュアンス”が好調だが、ポイントメイクでもさらなる“可能性”の種蒔きを仕掛けていきたいと考えている。

WWD:1月にデジタル部門を発足した。

小林:秋からデジタルを活用したマーケティング施策を本格化させ、26年にはEC販売を開始する。背景には、お客さまから「EC販売はしないのか」という声が日増しに高まっている現状がある。コロナ禍の影響で廃業する化粧品専門店が相次ぐ中、近所に実店舗がないお客さまや、多忙な日々を送るお客さまにご不便をおかけしているのは本意ではない。昨年11月に開催した方針説明会では、取引先にも事情を説明し、EC販売の計画に対する理解を得た。あくまでも実店舗が主役で、ECはその補完という位置付け。アルビオンとして対面の接客を重視する姿勢は一貫して変わらない。デジタルマーケティング施策では新規客を実店舗に誘導することを目的にし、最新の肌測定機器の導入など、店頭でしか味わえないサービスや接客を一層強化していく。

WWD:美容部員の再育成も急務だ。

小林:美容部員は、コロナ禍の影響でお客さまの肌に直接触れる接客スタイルが制限され、自信を失う者も少なくなかった。人材の入れ替わりもあったが、教育やトレーニングに力を入れ、かつての接客レベルを取り戻す努力を続けてきた。今ではコロナ禍前のレベルまで戻っている。やはり実際肌に触れた数だけ成長できるもの。ようやくマスクをしなくなってきた今、日々の実践を通じてスキルを高めながら本領を発揮している。

WWD:25年、“可能性”を広げる新たな動きは?

小林:海外進出に向けて本格的に動き出す。欧州とのコネクションがある某美容家とタッグを組み、海外に向けた製品開発に取り組み始めている。また、「アルビオン」では“欠けているピース”ともいえるフレグランスの開発にも挑戦したい。そうすれば従来接点のなかった新たな層にリーチできる大きな一手となるだろう。

実現の可能性はゼロじゃない私の夢

『タップダンスをプロ級に』

20年以上続けているタップダンスでプロ級に上達したい。映画「タップ」を見て憧れて始めたこの趣味。いつかなかなか取れない長期休暇を使って、思い出の地、ニューヨークのブロードウェイダンスセンターのレッスンに通いたいと思っている。

COMPANY DATA
アルビオン

「日本一、世界一の高級化粧品メーカーを目指す」という夢を掲げて、1956年に創業。乳液先行の独自の美容理論を確立。主軸のスキンケアブランド「アルビオン」には、創業時から販売する乳液や、74年に誕生した“薬用スキンコンディショナー エッセンシャル”など、ロングセラー製品が多数存在する。そのほか「エレガンス」「イグニス」「ポール & ジョー ボーテ」「アナ スイ コスメティックス」などを手掛ける


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