ファッション
特集 CEO2024 ファッション編

【ジュン 佐々木進社長】まだ見ぬワクワクとカルチャーを創出

PROFILE: 佐々木進/ジュン社長

佐々木進/ジュン社長
PROFILE: (ささき・すすむ)1965年生まれ。アメリカ留学後、四方義郎率いるサル・インターナショナルで国内外のショーの演出や選曲に携わる。89年にジュン入社。「アダム エ ロペ」や「アー・ペー・セー(A.P.C.)」のオンリーショップを立ち上げる。98年に常務に就き、2000年9月から現職 PHOTO:HIRONORI SAKUNAGA

アパレルからフード、フィットネスとジャンルに縛られない事業展開で生活者を刺激してきたジュン。今年は表参道の「モントーク(MONTOAK)」跡地での新プロジェクトやセレクトショップ「ビオトープ(BIOTOP)」の新規出店など、物販の先にある“カルチャーの創出”を目指して、攻めの施策を走らせる。
(この記事は「WWDJAPAN」2024年1月29日号からの抜粋です)

目指すは、経済を越えた価値提供

WWDJAPAN(以下、WWD):2023年はどんな年だった?

佐々木進社長(以下、佐々木):増収増益でまずまずの年だった。特に伸びたのは「アダム エ ロペ(ADAM ET ROPE)」「サロン アダム エ ロペ(SALON ADAM ET ROPE)」「ビオトープ」。コロナが明け、社会が快活なムードにあふれる中で、人々を楽しませる色や柄、デザインが支持された。ただ下半期はどのブランドも落ち込む傾向にあった。暖冬のほか、保守的なMDに逃げてしまったことも反省点だ。これを踏まえて、2024年は攻めのMDを増やす。

WWD:好調な「ビオトープ」は事業部を独立させた。新たな動きは?

佐々木:新規出店を計画している。立地も含めて、これまでと異なるアプローチになる。現在は東京・白金台、大阪・南堀江、福岡・大濠公園の3店舗で、いずれも非常に好調だ。商品、ロケーション、店舗デザインそれぞれに独自性があり、オリジナルレーベル「ヨー ビオトープ」も人気だ。産業全体でハイエンドとマスファッションの二極化が進む中、当社は高感度層をつかむ事業が手薄になっていた。「ビオトープ」の拡大は、ポートフォリオとしての価値もある。

WWD:婦人服の「ロペ(ROPE)」は2024年春夏にリブランディングする。

佐々木:「ジル サンダー(JIL SANDER)」などで経験を積んだディレクターを迎えて、クリエイティビティーをより発揮するブランドにする。当社の主要事業のうち“ロペ”と名のつくブランドが3分の2ほど占めている。ほぼ“ロペ”の企業だ(笑)。その本山である「ロペ」のあるべき姿を考えたとき、世界観の構築だけでなく、服作りの本質を追求し続けることが重要だと気づいた。時代の空気を読み、服のイロハを熟知し、コレクションに反映する。そんな姿勢を貫くブランドにしたい。展示会での評判は上々だった。これからもっと磨きをかける。

WWD:閉業から2年近く経つ表参道「モントーク」の跡地はどうなる?

佐々木:「モントーク」をプロデュースした山本宇一さん、「ザ・コンビニ(THE CONVENI)」などをディレクションした(藤原)ヒロシさんと共に、新たなプロジェクトをやる。さまざまな企業とクリエイターを巻き込む。原宿から表参道はかつて、独自の文化の発信地だった。今では世界中の一流ブランドが路面店を構えるラグジュアリーストリートになった。集客力もあるし、洗練されているし、どんな人も楽しめるが、“らしさ”が失われているのも事実。利益だけを考えれば他社に貸すのが一番だが、魂は売れなかった(笑)。経済を越えた文化を創出し、原宿を原宿たらしめるような場所を目指す。

WWD:ECやSNSでの成果は?

佐々木:リアル店舗に行けるようになった今、本当の商売力が試されている。コロナ禍にインフラ整備と情報システムに積極投資して、70点程度のレベルになり、売り上げも伸びた。ただし、自己評価は「発展途上」だ。というのも、CVR(コンバージョンレート)やアクセス数、ABテストなどの指標ばかりに気を取られて、ファッション屋としての姿勢が崩れてしまっていた。それでは、コンテンツやUX・UIもそれなりのレベルで満足してしまう。そうではなく、担当者それぞれの「本当に気に入った商品だから、絶対に届けたい」という思いを起点に、デジタルでどう表現するのかを考えるようにしたい。そのPDCAサイクルを回していくことで、真に商売力のあるECに近づくはずだから。

WWD:若手や女性の役員登用など、“攻め”の人事も見受けられる。

佐々木:一定の成果もある。特に「サロン アダム エ ロぺ」を統括する執行役員の原田(晴美ブランドイノベーション事業部サロン責任者)は、ポジションを与えたことで判断力やリーダーシップを発揮し、業績拡大に大きく貢献した。人事制度を整え、然るべき人材に然るべきタイミングで舞台を用意することの重要性を再認識した。常々話しているが、事業は人で決まる。社員一人一人に向き合い、活躍をサポートすることが経営の務めだ。

WWD:新卒社員が親睦を深める“同期会”や店長同士が交流する“店長会”など、横のつながりを生む施策も実施している。

佐々木:参加した社員からポジティブなフィードバックをもらい、離職率の低下など数字の成果も出ている。離職はどの企業も抱える課題で、賃金や労働環境などティップスはさまざまだが、究極はコミュニケーションにあると思っている。何かあった時に会社に相談できる上司がいるか、仕事の愚痴を話す仲間がいるか、あいつには負けないと心を燃やせるライバルがいるか。リモートワークで希薄になったこの関係性を、会社が率先して創出していく。また昨年11月には、リモートワークから原則出社に切り替えた。オフィスでの何気ない会話からアイデアが生まれ、逆に事業の課題を発見することもある。社員のつながりからファッションビジネスをアップデートし、人々の情緒を動かしていく。

会社概要

ジュン
JUN

現会長の佐々木忠氏が1958年に会社設立。同時に「ジュン」ブランドをスタート。69年にファッション業界初のフランチャイズチェーン1号店を構える。70年代の飲食業を皮切りにゴルフ場運営、ワイナリーなど事業を広げる。アパレルは現在「ロペ」「ロペピクニック」「アダム エ ロペ」「ビス」「ビオトープ」「ジュンレッド」「サタデーズニューヨークシティ」などを運営。2023年9月期は売上高549億円

問い合わせ先
ジュンカスタマーセンター
0120-298-133

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