ファッション

17年前も大行列を生んでいた「アニヤ・ハインドマーチ」 「明治屋」コラボもヒットの予感

英バッグブランド「アニヤ・ハインドマーチ(ANYA HINDMARCH)」は2月1日、スーパーマーケットの「明治屋ストアー」と協業し、ショッピングバッグ(2750円)を発売します。英国や香港でスーパーマーケットとタッグを組んでいる100%再生プラスチック原料を使った「ユニバーサルバッグ」プロジェクトの一環で、日本のスーパーと組むのは今回が3回目。初回は2023年4月に発売した「ナショナル麻布」、2回目は11月に発売した「成城石井」とのコラボでした。前回の「成城石井」コラボがかなり話題になったことで、「ユニバーサルバッグ」プロジェクトを知ったという人も少なくないんじゃないでしょうか。この機会に改めて「アニヤ」というブランドや、「ユニバーサルバッグ」プロジェクトを紹介します。

「成城石井」とのコラボバッグの発売日(11月23日)は、こちらも大変話題になった「ユニクロ(UNIQLO)」の「アニヤ」コラボの発売日とくしくも(?)被っていました。発売日の朝から東京・銀座の「ユニクロ トウキョウ」店頭で取材をしていると、祝日だったこともあって「朝イチで地元の『成城石井』でバッグを買ってから『ユニクロ』に駆けつけた」という声が多数。実際、「ユニクロ」の開店待ちの行列には「成城石井」とのコラボバッグを手にした女性の姿が少なくありませんでした。その後、「ユニクロ」の「アニヤ」コラボが想定以上のスピードで売り切れ、「ユニクロ」が異例の受注再販に踏み切ったことは「WWDJAPAN.com」でも報道している通りです。

伊勢丹の行列は今も語り草に

あの反応を見て、正直「『アニヤ』って、こんなに売れるブランドなの!?」と驚いた人も多かったんじゃないでしょうか。「ユニクロ」だって、あれだけ話題になると最初から分かっていたらもっと量を積んでいたはずです。でも、よくよく考えてみると、「アニヤ」ってこれまでも何度かムーブメントを作っているんですよね。前回は発売日が祝日で、認知度の高い「成城石井」「ユニクロ」とのコラボ連打、買いやすい価格と、さまざまな売れる要素が重なっていた面もありますが、「アニヤ」が正真正銘の“バズメーカー”であるということは間違いありません。

「アニヤ」が生んできた中で最大のバズといえるのが、2007年に発売した“I’m NOT A Plastic Bag”というメッセージを配したコットンキャンバス製トートバッグです。プラスチック製のスーパーのレジ袋の使い捨てに対するアクションとして発売したバッグでしたが、これが日本を含め各国で大ヒット。まだSNSがない時代だったにも関わらず、当時銀座の並木通りにあった旗艦店や伊勢丹新宿本店にものすごい行列ができたことは、ファッション業界では17年経った今でも語り草になっています。

08年ごろからのトートバッグブームを先導

サステナビリティとファッションを結びつけたという点でも、話題の商品でバズを生むという販売手法においても、「アニヤ」は業界を先駆けていたんだなと、振り返って改めて思います。その後、10年代の「H&M」のデザイナーコラボや、17年の「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」×「シュプリーム(SUPREME)」コラボなど、ファストファッションからラグジュアリーまでがコラボを連打するようになり、行列というもの自体が世の中に定着しました。それに伴い、ブランドや小売店側は整理券制などで行列を安全にさばく販売テクニックを確立、われわれメディアの間では、行列取材が1つの取材ジャンルとなりました。

「アニヤ」の“I’m NOT A Plastic Bag”旋風がきっかけの1つとなり、日本のリアルクローズマーケットでは08年ごろからトートバッグの一大ブームが巻き起こったことも忘れてはいけません。今はなきセレクトショップ「シェル(CHER)」のロゴ入りトートなどが宝島社の雑誌付録となって大ブーム。アラフォー世代以上の女性は、「アニヤ」に端を発するあのトートバッグブームの熱をよく覚えているんじゃないでしょうか。「アニヤ」と「成城石井」のコラボや「ユニクロ」コラボで行列を作っていたのは、40〜50代女性が中心でした。彼女たちの心に眠っていた当時の熱を呼び覚ました結果、あの大ヒットにつながったんだと私は理解しています。

「明治屋」コラボは実店舗5店とECで販売

さて、2月1日発売の「アニヤ」と「明治屋ストアー」のコラボバッグに話を戻します。「明治屋ストアー」のイメージカラーである青、赤、白のトリコロールのデザインで、「明治屋ストアー」の京橋、広尾、玉川、恵比寿、京都三條の実店舗5店とECで販売予定。「アニヤ」の店舗やECでは販売しないというのは、第1弾、第2弾のコラボの時と同様です。

「ユニバーサルバッグ」プロジェクトのショッピングバッグは100%再生プラスチック原料を使っており、リサイクル製品の国際的認証である「GRS(Global Recycle Standard)」に準拠して生産。10年ほど繰り返し使用が可能といい、今後、回収し再度リサイクルしていく予定だといいます。“I’m NOT A Plastic Bag”から続く、「アニヤ」のサステナビリティ意識の現在進行形が21年にスタートした「ユニバーサルバッグ」というわけですが、20年にはインラインとして“I AM A Plastic Bag”というメッセージで回収ペットボトルを原料とする再生素材のバッグを発売し、今も1つのカテゴリーとして売り続けています。

「ライフ」や「オオゼキ」とのタッグもあり得る!?

「ユニバーサルバッグ」プロジェクトはこれまで、英国の「セインズベリー(SAINSBURYS)」や「ウェイトローズ(WAITROSE)」「アスダ(ASDA)」「テスコ(TESCO)」「コープ(CO-OP)」や香港の「シティースーパー(CITY' SUPER)」「モリソンズ(MORISSONS)」などで展開(一部を除き現在も継続中)。英国では百貨店の「セルフリッジ(SELFRIDGES)」とも組んでいたことがあるので、協業相手はスーパーだけとも言い切れないですが、基本はスーパー。日本では「ナショナル麻布」「成城石井」「明治屋ストアー」と高感度スーパー路線できていますが、英国で「セインズベリー」「テスコ」「コープ」といった庶民派スーパーとも組んでいるところを見ると、日本でも「ライフ」や「オオゼキ」などと組む可能性ももしかしたらある……?かどうかは全く分かりませんが、どこと組むのだろうと想像するのは楽しいですね。

チャーミングに、プレイフルに世の中に問題提起していく「アニヤ」の姿勢は、他社にとっても参考になる部分が多いと思います。ブランドとしては、7年ほど前に業績不振で日本を含め直営店を数店閉店、その後ブランドオーナー変更といった事情もありましたが、苦しい時期を脱してコンパクトに自分のやりたいことを貫き、再び熱を帯びてきているなと感じます。

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