ファッション

「ルブタン」vs「エイゾー」のレッドソール訴訟 知財高裁も「ルブタン」の訴え認めず

 クリスチャン ルブタン エス アー エス(CHRISTIAN LOUBOUTIN SAS以下、ルブタン)およびデザイナーのクリスチャン・ルブタンとシューズブランド「エイゾー(EIZO)」などを運営するエイゾーコレクションが赤い靴底(レッドソール)を巡って争っていた件について、知財高裁はルブタン側の請求を全て棄却した。ルブタン側は、エイゾーコレクションが「ルブタン」の定番といえる赤い靴底のパンプスに類似した商品を製造販売したと主張し、同社に対して損害賠償4200万円などを求めて提訴していたが、一審でもルブタン側の主張が認められなかった。これを不服として控訴していたが、知財高裁でも訴えが認められず、請求が棄却された。

 「ルブタン」は、一般的なハイヒールを含む靴は1万円以下の商品が多く、1万円を超えるものは高価格帯であり、「ルブタン」の製品はもちろん、エイゾーコレクションが展開する1万6000~1万7000円の商品も消費者にとっては高価格帯の商品だと主張した。また、実店舗で靴を販売する場合は、一般的にブランドごとに明確に区切られていない場合も多いことや、ECの場合は価格帯によって流通経路が分かれているわけではなく、両者の商品が並べて陳列される可能性を指摘。消費者が「ブランド名を意識しないまま購入することもあり得る」として、両者の商品を「誤認混同するおそれ」があると主張した。これに対してエイゾーコレクションは、両社の価格帯の差を考えるとターゲットとなる購買層は異なると反論。また、百貨店のように両者の商品を扱う小売店では価格帯によってエリアやフロアが明確に分かれているため、誤認混同の恐れはないと主張した。さらに、売り場だけでなく、靴の中敷きや靴底にもロゴがあしらわれ、靴箱やショッパーにもロゴが付されているため誤認混同しないと述べた。

 双方の主張を受けて裁判所は、両者の価格帯は大きく異なること、小売店などでは「ブランド名が明確に表示されているといえる」こと、商品自体にブランドロゴが付されている点などから、エイゾーコレクションの商品は、「『ルブタン』ブランドの商品であると誤認混同する恐れがあると言えないことは明らか」と判断した。また、実店舗で購入する場合は、実際に手に取って商品を確認することが多く、ECサイトでは「ブランド名や商品の状態が詳細に説明されている」ため、誤認混同するとはいえないとした。

 エイゾーコレクションは、「エイゾー」「ビュー(VUE)」「エイゾーブラック(EIZO BLACK)」などを展開する1983年創業の日本の婦人靴メーカー。

 ルブタンのレッドソールを巡っては過去にも各国で訴訟が起きている。2012年には「イヴ・サンローラン(YVES SAINT LAURENT)」が赤い靴底の靴を販売したことを受けて提訴した。この時は、一審で「ルブタン」が敗訴したが、二審では靴底と上部の色にコントラストがある場合にのみ「ルブタン」の商標権が認められると部分的に認定し、「イヴ・サンローラン」が販売した赤い上部に赤い靴底のシューズは商標権の侵害に当たらないと判断した。また、オランダのシューズチェーン、ヴァン・ヘイレン(VAN HAREN)との間で係争している商標権侵害訴訟では、18年に欧州司法裁判所がルブタンのレッドソール商標は有効だと判断した。

 直近では22年9月、中国の皮革メーカーであるカントン・ワンリマ・インダストリー(GUANGDONG WANLIMA INDUSTRIAL CO., LTD.)が赤い靴底の靴を製造し、“レッドソールシューズ”という製品説明を用いたとして「ルブタン」と争っていたが、北京知識産権法院(北京知的財産裁判所)は両者の商品が極度に類似し、「悪意を持って侵害している」と判断し、カントン・ワンリマ・インダストリーに対して不正競争防止法違反を理由に該当製品の即時販売停止と500万人民元(約9500万円)の損害賠償、44万5000人民元(約845万円)の訴訟費用の支払いを命じた。

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