ビューティ・インサイトは、「WWDJAPAN.com」のニュースを起点に識者が業界の展望を語る。今週は、女性の活躍に際して考えるべきさまざまな話。(この記事はWWDジャパン2022年7月4日号からの抜粋です)
【賢者が選んだ注目ニュース】
英国発「エルヴィー」の革命的サイレント搾乳器
業界を動かす女性たち【前編】活躍する女性25人に聞いたダイバーシティー達成度
先月は「WWDJAPAN」が「女性活躍」の特集を組んだこともあり、フェムテック関連の記事でもいろいろ考えることが多かった。
歴史上、この世界は男性という「マジョリティー(数だけではなく権力という意味で)」視点によりつくられている仕組みが圧倒的に多いため、女性であることでの生きづらさについて、その当事者たちが直面している困難は、受け止めきれないほど重い。
女性として生きていくことの困難や選択肢の少なさは、もちろん少しずつ改善してきている。ある意味、男性以外と考えたときのマイノリティーとして最大集団である女性たちが、ビジネスの意思決定の場(政治の場では本当にこれからだが)に関わってきていることの大切さをかみしめた月でもあった。今回は、少し個人的な思いもこめてキーワードをいくつか出し、「WWDJAPAN」の記事も交えながら振り返り、少し先の未来を考えたい。
■ フェムテック
6月6日の記事にもあったように、ブラの中にすっぽり収まり両手がフリーになる搾乳機は、授乳における革命といってもいい。これが来年、日本に上陸する。搾乳は人にもよるが1日に2、3回、このために時間をとり、かつその間、例えばオフィスに授乳室がない場合はトイレなどで行うしかなかった。こういったフェムテック関連の製品が今後も女性のQOLをさらに上げてくれるのは間違いない。
■ 女性活躍特集
「業界を動かす女性たち」の前編、中編、後編ではさまざまな美容・ファッション・ヘルスケア関連の女性トップ・マネジメント層の方々が登場し、それぞれの取り組みや、ロールモデルとしているブランド、人などを挙げている。女性だけでなく、性的あるいは人種的マイノリティーや心身にハンディキャップのある方々への配慮を実行する企業もある。親会社、ホールディングスのトップの比重は男性が圧倒的だが、今後はそういったポジションにも女性やその他のマイノリティーが先入観なしに普通に候補となり、要職に就任することが当たり前という世界が待たれる。
■ パリテ・アカデミー
個人的に監事を務めさせていただいているパリテ・アカデミーは、上智大法学部三浦まり教授など政治やジェンダーの研究者たちによって日本の女性たちに対して「議員」という仕事の選択肢と可能性を広げる活動だ。実際、複数の女性議員が誕生している。生活に直結する政治の意思決定の場に、少なくとも半数(=パリテ)は女性議員がいるべきという信念で、三浦教授は、フランス発祥のパリテの思想を日本に広めた功績により、21年にはフランス政府から国家功労勲章シュヴァリエを受章している。
■ 「中絶禁止」を容認した米最高裁
米国のこの判決は、大きな衝撃をもって世界中に伝えられた。これがいかに女性の人生における選択肢を奪ってしまうのかを考えると「女性活躍」以前の話だ。日本でも、緊急避妊薬や本人の意思のみによる中絶などへのアクセス整備が遅れており、いかに政治の場に当事者が必要かということが分かる。セクシャル・アンド・リプロダクティブ・ヘルス・ライツについてはSDGsのゴール5であるジェンダー平等とも密接な関係にあり、中学や高校でも必修としてもらいたいと思う。
■ マスキュリズム
フェミニズムに対して男性に対する性差別に反対するマスキュリズムや、女性との関係性を避け自分自身の人生を生きようと主張するオンラインコミュニティーであるMGTOW(Men Going Their Own Way)といった動きもある。個人的には、これまで不平等であったジェンダーギャップを解消する動きのなかで、新たなギャップに対する声は対立するのではなく受けとめ考えるべきものと思う。結局は、性別や性的志向、人種・国籍、年齢、思想、その人がもつ心身の特徴含め、全ての人が思い思いの幸せのかたちを実現できる社会や企業であるべきという大きな理想の下に、それぞれの組織や個人がこつこつとできることをしていくことしか道はない。