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少数民族を撮り続けてきたヨシダナギが、ドラァグクイーンにカメラを向けた理由

 フォトグラファーのヨシダナギがドラァグクイーンを撮影した作品展「DRAG QUEEN -No Light, No Queen-」が8月13〜30日、西武渋谷店で開催されている。

 作品はパリとニューヨークを旅しながら、現地でドラァグクイーンをヘッドハンティングして撮影。計18人のモデルの風貌やバックグラウンドはさまざまで、日本のアニメのキャラクターをモチーフにしたメイクをしていたり、“昼の顔”はデータサイエンティストであったり。彼女たちの個性あふれるパーソナリティを一枚絵で切り取った作品47点が見るものを楽しませる。

 これまでアフリカ奥地などに赴いて少数民族を写真に収め、フォトグラファーとしてのキャリアを積んできたヨシダ氏。今回初めて異なるジャンル、それもドラァグクイーンの撮影になぜチャレンジしたのかを聞いた。

WWDジャパン(以下、WWD):個性豊かな作品ばかりですね。

ヨシダナギ(以下、ヨシダ):ありがとうございます。ドラァグクイーンを撮ると決めてから、「少数民族のカメラマンでしょ?」「ヨシダナギが撮る必要ある?」という声はきっとあるだろうし、実際そういう展示会になってしまったらどうしようという不安もありました。でも、実際蓋を開けてみると、ヨシダナギらしい、説得力のある作品展が出来上がったと自負しています。撮影では自由奔放なドラァグクイーンのドタキャンが相次いだりもして大変でしたが、一方で協力的なモデルたちの気遣いや器の大きさにも助けられ、なんとか形にできました。

WWD:ドラァグクイーンの撮影にチャレンジしようと思ったのはどうしてですか?

ヨシダ:これまでずっと少数民族を撮り続けてきて、それに安住したい気持ちがあったのは事実でした。一方で、ファンの皆さまからは「別のジャンルの作品を見てみたい」というお声もいただいていました。モヤモヤした気持ちが3年くらい続き、ふとドラァグクイーンのことが脳裏をよぎったのが2018年の夏ごろ。以前観た、ドラァグクイーンの旅を描いた映画「プリシラ」で彼女たちの華やかな衣装と、それに負けないくらい美しい生き様に心を強く揺さぶられたことを鮮明に思い出したのです。これだ!と撮影にむけて動き出しました。

WWD:ドラァグクイーンたちのどんなところが琴線に触れたのでしょう?

ヨシダ:「立ち姿が美しいこと」でしょうか。顔立ちの造型が綺麗な人はたくさんいるけれど、立っているだけで迫力あるのある人はそうそういません。その点、ドラァグクイーンたちには立ち姿に凛とした美しさがあって、今回は、その理由を探す旅でもありました。実際彼女たちに会ってみると、想像以上に美しく妖艶で、何より自由。ドラァグクイーンと一口に言ってもさまざまなカテゴリーやジェンダーがありますが、「自分がなりたい存在になる」という信念は共通していて、そのことがドラァグクイーンたらしめているのだと思います。これまで撮り続けてきた少数民族が、自分たちの文化や生活に誇りを持っている姿と重なる部分もあり、だからきっとかっこよく見えるのだと腑に落ちました。

WWD:新しいジャンルの撮影に踏み出して、成長はありましたか?

WWD:彼女たちとの対話の中で、“自分らしさ”を許容した人間から発せられる前向きなパワーをひしひしと感じ、それがしかも、私よりも若い人たちが持っていることに大いに刺激を受けました。パリで出会ったアリスというモデルは、ファッション系を本職としているクイーンが多い中で、データサイエンティストという理系クイーン。冷静で聞き上手な彼女には、日本に戻ってきてからもメッセージで悩み相談をしていたんですが、「しっかりしなさい!あんたならできる!」と肝っ玉母ちゃんのような言葉をもらいました(笑)。私は自分と違う人ほど美しく、かっこいいと感じるし、被写体として惹かれます。一方で私は自分の立ち姿に覇気がないことがコンプレックスだったんですが、「自分を認めること」「無理に枠にはまらなくてもいいこと」そして「もっと自由に生きていいこと」を教わりました。

WWD:新型コロナの影響で、作家たちを取り巻く環境も変化しています。

ヨシダ:今回の撮影を通じて、フォトグラファーとしてのヨシダナギらしさが「素晴らしい被写体選び」だと再確認することもできました。これまでは目の前の仕事に追われるばかりでしたが、(新型コロナの影響で)スケジュールが空きが生まれると、ふと「面白いものが撮れるだろうか」とナーバスな気持ちが顔を出すこともあります。そういう状況でこそ、自分らしさに立ち返り、それを大事にしながら活動していきたいですね。

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