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「ヴェトモン」CEOの目に映る「コロナ後のファッション産業」

 新型コロナウイルスの影響で私たちは2カ月以上もの間、これまでにない制限の中で毎日を送ることになり、生活の仕方、自分にとって大切なもの、誰と何を目的にどのように働くかなどについてあらためて考える機会を得た。ファッション産業に携わる人々も例外ではなく、ビジネスの方法やクリエイションとの向き合い方、ファッションシステムの在り方を再考する必要性に直面しており、多くの人々が議論を始めている。今回は、販路を限定した売り方やショーの開催時期を変える発表など新しい手法を戦略的に行ってきた「ヴェトモン(VETEMENTS)」のグラム・ヴァザリア(Guram Gvasalia)共同創業者兼最高経営責任者(CEO)にメールインタビューを行った。

WWDジャパン(以下、WWD):今、どんな生活している?

グラム・ヴァザリア=ヴェトモン共同創業者兼CEO(以下、グラム):私は週末を含めて毎日働いている。自分のしていることを心から愛するとき、それはその人自身の一部になる。だから、私は仕事と生活を区別する必要がない。喜ばしいのは、家にいることを楽しみ、自然を満喫できること。本を読んだり、瞑想したり、ピアノを弾いたりするのも楽しい時間だ。

WWD:新型コロナウイルスのパンデミックがあなたにもたらしているものは?

グラム:すべての物事には時期がある。外に出て人に会うための時期、家にいて自分自身をよりよく知るための時期――大切なのは、人生が私たちにもたらしてくれるものを受け入れて、実際的なレベルと精神的なレベルの両方で学びを得ること。すべてのことには意味や目的がある。でも往々にして、われわれ人間はいそがしすぎてそれが見えないことがある。

「これはなぜ「ヴェトモン」なのか? このデザインの背後にある目的と意味は何か?」

WWD:人々の価値観にどのような変化が起こっていると思う?

グラム:この世界で起こること全ては、私たちを良い方向か悪い方向に変える。今起きていることは、人々の価値観や考え方に大きな影響を与えるだろう。ただ、この経験から何かを学ぶ人がいる一方で、多くの人々はすべてが終わった後、すぐに日常に戻るだろう。季節は変わり人生は続いていくのだ。

WWD:ファッションは生活必需品として扱われない一方で、精神的に人々を元気づける役割もあるのではないかとも思う。「ヴェトモン」として何が提案できるか。

グラム:いつの時代も美は人間性において大切なものであり続けてきた。美とは、買って所有する必要があるものではない。それは特別な感情を心の中に生み出して、人生の良い点に目を向けさせるもの。だからこそ、花は人類の生活において大きな役割を果たしている。花が咲いているのを見るのは、最新流行のスニーカーを手に入れることより大きな喜びをもたらしてくれる。私たちはブランドとして、独自の美しさや意味を持ったプロダクトを作るための努力をしている。洋服をデザインするとき、2つの大きな質問を問いかけている。これはなぜ「ヴェトモン」なのか? そして、このデザインの背後にある目的と意味は何か?

WWD:今後、ラグジュアリーブランドやデザイナーズブランドは必要ないものとして淘汰されるか、それともいっそう存在感を増すか?

グラム:ラグジュアリーファッションはそもそも一部の人にとっては必要ではないもので、パンデミックによってそれが必需品になるということはない。ラグジュアリーファッションは、その他の人々にとっては必需品であり、そしてパンデミック後も必需品であり続けるだろう。ある人々にとってファッションは必要不可欠なもので、またずっとそうであり続ける。パンデミックが引き起こすかもしれないのは、人々が目を覚まして、流行に左右されない、長く着ることができる服を求めるようになるということ。本当に品質がいいものを少し買うことの方が、長持ちしないものをたくさん買うより賢明だ。ファッションはファストであることをやめ、もっとスローになるべきだ。

WWD:コロナ禍では顧客や消費者とのコミュニケーションが重要になってきている。

グラム:私たちは常にプロダクトの品質とデザインで顧客たちとコミュニケーションを取ろうとしてきた。製品そのもの、そしてそれらの美しさが顧客に訴えかけるべきで、大声で主張せずに伝えることこそがわれわれが達成できる真のコミュニケーションだ。ローキー(控えめ)でありながら、考え抜かれたマーケティング――私たちの主要なコミニュケーションツールはソーシャルメディアだ。インスタグラムは最終消費者と直接つながり、概念論や衣服に関してポストモダン的なアプローチを大切にするという、私たちと同じマインドを持つ人々とのコミュニティーを作るためにとても便利なツールだ。私たちは万人のためのブランドになるつもりはまったくなく、むしろ真に理解する人々のためのブランドであろうとしている。

WWD:デジタル・ファッション・ウイークをどう考えるか。ファッションショーに代わるものになり得るか。

グラム:生のファッションショーはさまざまな感情を生み出し、大きな感動を与える。実体験はショーのいい部分だ。とても高いクオリティーのものを食べるのと、同じものを写真で見るのには違いがある。長期的に見ると、通常のファッション・ウイークのスケジュールに戻ってショーを開催するのがいいのではないか。まだパンデミックが起こってから数カ月しか経ってないが、ジャーナリストやバイヤーと話していると、皆お互いのことを恋しがり、パリやロンドンやミラノで近況を報告し合うことを待ちわびている様子がうかがえる。

WWD:パンデミック収束後、どのようなニーズが生まれると思う?

グラム:消費者はいつでも高品質でイノベーティブで新しいデザインを求めている。衣服をデザインして生産することは、収束後も私たちのメインフォーカス。テーラリングとジャージー、両方のカテゴリーを顧客たちは期待しているだろう。

WWD:これを機にファッションシステムはどう変わると思う?

グラム:業界は変わらなければならないと私たちが説き始めてから3年が経とうとしている。メンズとウィメンズのコレクションを1度のショーで見せる試みを始めたり、1年に2度のコレクションを発表したり、ショーの開催時期を1月と6月のメンズとクチュールのファッション・ウイークに移して業界で一番早いデリバリーを実現したりすることで、私たちの考えを示してきた。3年前、私たちは業界の未来を予言し、今では私たちの戦略を実施して同じことを行うブランドが増えてきた。

WWD:直近の2021年スプリング・コレクションの製作で困っていることは?型数など通常と同じレベルでのコレクションを作る?

グラム:私たちは、21年春夏コレクションに取り掛かっている。コレクションの規模は世界情勢や、ショップがオーダーできる状況にあるかどうかによるだろう。これまでのところ、日本のパートナーたちはみな支援的でオーダーを計画してくれている。「ヴェトモン」は、プロダクトから始め、環境や私たちの消費者、そして世界全体に対して敬意を持ったコミュケーションまで、私たちの行うすべてのことについて力強い存在であり続ける。

WWD:最近オンライン買ってよかったものは?

グラム:ガーデン用の家具。もうすぐ夏が始まるからもっと外で時間を過ごすことができる。鳥の歌声を聴いたり、自然を満喫したりできる。

WWD:リモートワークで便利なことと不便なことは?

グラム:リモートワークをするとき、スケジュールがとても大切だということを学ばなければならない。通勤しなくてもいいので、多くの時間を節約できるのはいい点だが、一方不便なのは、ソーシャルな要素が欠けているというところ。「ヴェトモン」では、通常コンピューターの前で働いているチームはリモートワークがより生産的だと感じ、アトリエで衣服と接する必要があるデザインやや開発のチームにとっては困難なものになっているようだ。しかしながらリモートワークは、より多くの考える時間や素晴らしいプロジェクトを思いつくための時間をみんなに与えてくれたと思う。

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2020年春夏、コロナ禍でも売れたものは何だった? 富裕層の高額品消費意欲は衰えず

「WWDジャパン」9月21日号は、「2020年春夏、有力店で売れたもの」特集です。WWDで毎シーズン恒例となっている有力店の商況調査ですが、コロナ禍に見舞われた今春夏は、多くの商業施設が営業を再開した6~7月の期間で消費動向や好調なブランドを調査しました。化粧品、特選、婦人服、紳士服などの9つのカテゴリー別に各店のデータをまとめています。コロナで大苦戦という声が大半を占めると思いきや、こと特選カテ…

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