ビジネス

NOT A HOTELがNOTA(ノタ)となり、事業を拡大 濱渦社長が見据える住まいの、移動の、街の、あたりまえの、その先

先日、群馬県北軽井沢に新しく開業する「NOT A HOTEL KITAKARUIZAWA MASU」のプレスツアーに参加してきた。NOT A HOTELは2020年に起業以来、26年10月現在、10拠点で展開、2030年までに30拠点を発表予定という急成長の別荘シェアサービスだ。ラグジュアリーホテルとも単なる貸別荘とも異なるこのブランドを、連載中の「ハコ推しホテル」でもいつかとりあげたいと思いつつ、その全貌がつかめず、延び延びになっていた(成長が速すぎるのだ!)。

「NOTA」へのシフトは常識を超えた別次元への飛躍

長野県のいわゆる「軽井沢」から拡張した群馬県北軽井沢に新たな価値を生み出したこの施設は、またあらためて紹介するとして、「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」、ポケモン、帝国ホテルとコラボするような「NOT A HOTEL」はこの先どう進むのだろう?今後の展望を伝える事業戦略発表会が開催されると聞き、参加してきた。会場は中央区晴海にある本社オフィス。倉庫のようにシンプルなゲートを抜けるとスタイリッシュな空間が広がっている。それにしてもなぜここに?と探りたくなるロケーションだった。そして発表内容もフツーではなかった。

いきなり「NOTA(ノタ)株式会社」への社名変更。しかもリブランドしてイメージが一新されます、というものではなく事業そのものが大幅に拡大するという。「どっきり」に引っかかったような衝撃だ。今までのNOT A HOTELが親会社のような位置づけとなり、NOT A HOUSE、NOT A GARAGE、NOT A CITYと新たな事業会社が、横に、ななめに、拡大する。NOT A XXXX の欄には、今後もあっと驚くキーワードが入るであろう。

アパレル業界出身の濱渦社長が語るNOTAの展望

事業戦略発表会では、濱渦伸次NOTA 代表取締役社長 Co-CEO / Chief Visionary(チーフビジョナリー)が登壇し、社名変更と今後の展望を解説した。社名変更にも驚いたが、とにかくそのミッションが壮大だ。「建築とクリエイティビティーの力で、世界中の人々を引きつける目的地へと磨き上げる。それをグローバルに発信し、日本の価値を高めていくことが我々のミッション」と濱渦社長は語る。「AIだけではつくれない未来を現実にしていくことがNOTAの描く未来です」という宣言も心強い。中にはプライベートジェット「Gulfstream(ガルフストリーム) G500「NIGO JET」のシェアオーナーのようなプロジェクトも。「NIGO®さんとこんなのいいよね、と雑談していた理想を現実にしました」と濱渦社長は笑う。NOT A CITYの都市開発には一部の富裕層や美術愛好家しか目にする機会がないアートを道行く人にも開放するような意図がある。NOT A HOTELの垣根を超え、ハウス、ガレージ、シティとジャンルを拡大し、美しい社会を築く。

この急成長、NOTAならではの軽やかさはどこから来るのか。それは多様なバックボーンだと私は思う。濱渦伸次社長は宮崎県でネットショップ構築及びサポートを事業とするアラタナを2007年に創業。15年からZOZOグループとなりアパレル業界での実績を積み、20年にNOT A HOTELを設立した。各事業会社のCEOもまた、金融、都市開発など、さまざまな、旅行業界以外の経験を積んでいる。現場でも、ファッションや飲食、音楽業界など多岐にわたる業務の経験があるスタッフが集まっているのが印象的だった。

垣根を超えた協働や前例にとらわれない冒険は、こんな多様性から生まれるケミストリーだ。無理でしょ、ありえないでしょ?をあったらいいなに変換して突き進む。

住まいをもっと楽しく、自由に、快適にする住宅プロダクト

新事業の一つが、住宅プロダクトのNOT A HOUSEだ。ホテル事業で培った建築やテクノロジーの知見を住宅領域へと拡張する。第1弾は「住宅の、次のスタンダード」を目指す規格住宅「POD」。優れたデザイン性はもちろん、NOT A HOTELの施設同様、調光や空調設定など、家中のあらゆる操作をタブレットで調整でき、室外から自身のスマホでIoT機能へアクセスすることも可能。NOT A HOTELに滞在し、そのスマートさを体感したことがあるのなら、その快適性をイメージできるだろう。

一番の特徴は吹き抜けのある大開口。スタジオタイプから3ベッドルームまでの間取りがあり、エクステリアはアルミパネルや焼杉、左官仕上げなどから選べる。大空間のLDKにはリビング階段で2階とつながり、壁面は書棚や飾り棚、DJブースなどに活用。ライフスタイルに合わせて自邸をカスタマイズする感覚だ。空間デザイン、ブランディングはお手のもの。ここで暮らす人の姿がすぐにイメージできる。単身から子育て世代の家族、別荘としてなど、さまざまなニーズがありそうだ。緑深い森で、都市で、ビーチで、もしかしたら砂漠で。世界中のあらゆる地域に広がることを想像するとわくわくしてくる。

一棟6980万円~。PODのオーナーになると、毎年、全国各地のNOT A HOTELに3泊滞在できる特典もある。予約注文開始後3日で70棟の予約注文があったという。

陸・海・空のモビリティーを通じ、移動そのものを楽しむ新常識を

NOT A GARAGEでは陸・海・空のモビリティーを自由にする。ヘリコプター・クルーザー・車を何度でも利用できるサブスクプラン「NOT A GARAGE CLUB」のサービスを開始。初期費用は1590万円、月額19.8万円でACH130 Aston Martin Edition(アストンマーティン エディション)のヘリコプターやAquariva(アクアリバ)などのクルーザーを使い放題とは夢のようだ。サービスはまずは東京ヘリポート、都内や横浜のマリーナなど首都圏からスタートする。初期募集口は20口限定だというが、なんと販売開始から1時間で完売をしてしまったそうだ。現在はウェイティング受付中で、反響を受けて機体のラインアップ拡充を検討中とのこと。

例えば都内から先日発表された群馬県北軽井沢の「NOT A HOTEL KITAKARUIZAWA MASU」まではヘリコプターで約50分の飛行。燃料代などは別途必要だが、6人乗りのヘリコプターに6人で乗ると、一人約1万円となる。各地のNOT A HOTEL滞在時に利用できるスタイリッシュな車が手配される。移動を手段としてとらえるのではなく、滞在中のドライブや海上で過ごす時間など、モビリティーそのものが高揚感をもたらす目的となっている。

プライベートジェット、「Gulfstream G500 NIGO JET」のシェア所有の販売も開始。今までにないシックなカラーリングで、流線形の機体から、キャビンの細部まで、クリエイティブディレクターNIGO®氏の感性を反映している。これはまさにあったらいいなを実現したもの。濱渦社長とNIGO®氏の雑談の中から立ち上がったプロジェクトだという。プライベートジェットの維持に不可欠なさまざまな整備や管理なども担い、乗員の訓練や資格維持なども含め、運航の体制を整える。

NOT A GARAGEはモビリティーの運航・販売にとどまらず、インフラの領域にまで広がろうとしている。トヨタとのパートナーシップにより、新たな移動インフラの確立も目指す。

街の余白に新たな意味を見出し、魅力ある目的地に

NOT A CITYの取り組みも夢がある。都市や地方の未活用空間に、新たな用途を創造し、構築していく。次の役割を待つ地域、役割を終えた建造物、都市に残された空間。その余白の持つ可能性を見出し、世界がわくわくする新しい目的地を増やしていく。

その例が三菱地所と推進中の第一弾プロジェクト「ジャパ・ヴァレー・トウキョウ(JAPA VALLEY TOKYO)」だ。2027年春に有楽町のビルの跡地に開業予定のこの複合空間はカルチャーの革新者であるファレル・ウィリアムス(Pharrell Williams)とNIGO®が手掛ける。カリフォルニアのナパ・バレーのワイン醸造を、日本の匠の技に置き換え、日本酒を中心に日本の文化を発信する観光拠点となるという。2027年にはカウズ(KAWS)による巨大な作品と新緑のコラボレーションが実現するのか、今から楽しみだ。

2024年に営業を終了した「帝国ホテルプラザ 東京」の地に、4年間限定のカルチャー複合施設「NOT A MUSEUM」を築くプロジェクトも始動。設計事務所DAIKEI MILLSを中心に発足したSKWATとともに、企画、プロデュース、運営を進め、最先端のカルチャーを現在進行形で体験できる場所となる。

今までの街づくりでないがしろにされがちだった文化に焦点をあて、美術、音楽、映画、文学といったあらゆるコンテンツが交じり合い、「あたりまえの、その先」を提案しようとしているのだと思う。美術館とは括れない空間となるのだろう。今後、劇場とはくくれないなにか、図書館とは括れない何かが、遊園地とは括れない何かが、日本のどこかに誕生することを願ってしまう。

鉄道駅、マリーナ、ヘリポート、空港など、移動のハブを集め、宿泊、商業、エンターテイメント施設などの拠点を構築するのがNOT A CITYの今後の展望だ。それは滞在拠点となるHOTEL、暮らすHOUSE、つなぐGARAGEなどの事業と連鎖し、街をシームレスに広げていく。

HOTELを軸に、HOUSE、つなぐGARAGE、CITYの事業は編まれていく

軸となるNOT A HOTEL事業では、安藤忠雄氏設計による、円形屋根と有機的な形状の水盤が特徴的なヴィラが近畿地方の海沿いに誕生する。またスイスを拠点とする建築家ユニット、ヘルツォーク&ド・ムーロン(Herzog & de Meuro)による沖縄の建築、フランス建築界の巨匠ジャン・ヌーヴェル(Jean Nouvel)氏率いるチームによる「NOT A HOTEL YAKUSHIMA」など、その地ならではのランドスケープを際立たせる「作品」が続々開業される。

2020年に設立したNOT A HOTELは誰も予測できなかったほどのスピードで成長を遂げ、26年にNOTA株式会社としてさらに進化し、30年には30拠点のNOT A HOTELの発表を目指す。NOTAは、「Think beyond. ― あたりまえの、その先へ。」を掲げ、ホテル・住宅・移動・街づくりに新しい選択肢をつくる。NOTは否定ではなく、進化。こうでなくてはならない、という既成概念を打開し、新しい視点とアイデアで、思い描くだけだった未来を形にするという。続く事業展開を聞いて、「オラ、わくわくすっぞ…!」とドラゴンボール悟空の心境に。このチーム力は「ワンピース」の麦わらの一味・海賊級?いや、「あんなこといいな、できたらいいな」のドラえもんの世界か。ありえなかった未来の扉が開く予感がしてきた。

NOTAが織りなす世界観が現実となる未来を見てみたい。もっと長生きしなくちゃ!困った。2027年以降もサバイブしなくてはならない理由がまたできてしまったではないか!

関連タグの最新記事

最新号紹介

CONNECT WITH US モーニングダイジェスト
最新の業界ニュースを毎朝解説

前日のダイジェスト、読むべき業界ニュースを記者が選定し、解説を添えて毎朝お届けします(月曜〜金曜の平日配信、祝日・年末年始を除く)。 記事のアクセスランキングや週刊誌「WWDJAPAN Weekly」最新号も確認できます。

ご登録いただくと弊社のプライバシーポリシーに同意したことになります。 This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.

メルマガ会員の登録が完了しました。