PROFILE: 澤田宏太郎社長兼CEO

昨年20周年イヤーだった「ゾゾタウン」は、ファッションECの“当たり前”を作ってきた存在だ。その次の成長ドライバーとして、澤田宏太郎社長が見据えるのが「AIエージェント」の本格実装である。また、「長い夏」を解決するためのテクノロジーを絡めた「究極の最適解」とは?「AIエージェント」はファッションECをどう変えるのか?AIとファッションの交差点で起きる“非連続な進化”の行方を聞いた。
2025年の「ZOZOTOWN20周年イヤー」を振り返って
WWD:「ゾゾタウン」20周年イヤーだった。
澤田宏太郎社長(以下、澤田):20年の歩みを改めて振り返ると、われながら「ファッションECの当たり前を作ってきた」という感覚になる。正解を誰もわからない中で、試行錯誤しながら作ってきたものが、いつの間にか業界のスタンダードになっていった。配送箱をショッパーに見立ててデザインを入れたり、「ささげ(撮影・採寸・原稿)」という言葉ができる前から商品紹介の仕組みを整えたり。ファッションECにおけるモデルのポージングや検索カテゴリーの組み方まで、実に細かい部分も含め、一つ一つ階段を上るように積み上げてきた。
WWD:「ZOZOフェス」は2日で4万人が来場した。
澤田:20周年記念イベントとして、多くの人に楽しんでもらえて大成功だった。同時に新規会員の獲得施策としても大きな手応えを感じている。こうしたイベントはチケットの購入時に会員登録が必要になるため自然な形で会員化につながり、幅広い層に楽しんでいただきながらZOZOらしさも打ち出せる。「ZOZOフェス」以外にも25年にいくつかのリアルイベントを実施したが、CPA(顧客獲得単価)の検証と調整を加えながら、今後も大型・小型にかかわらず、イベントは積極的に実施したい。
WWD:一方で、前年に続き25年も「暑い夏、長い夏」には手を焼いた。
澤田:24年から検証と対策を重ね、25年も様々な手を打ったが成果は限定的だった。当社単体の小手先の施策でどうこうなるものではないと痛感した。アパレル業界全体でシーズン、あるいは年間の服の売り方をゼロベースで見直す必要がある。
WWD:処方箋は?
澤田:最終的には「パーソナライゼーション」に行き着くと思う。例えばこれまではブランドや小売りで足並みを揃えてセールをしてきたが、これからは同じ商品を売るにしても、個々のお客さまにベストなタイミングでの商品提案や価格条件も含めた最適な提案をおこなう「パーソナライゼーション」を極めることが理想的だ。積み上げてきたノウハウや知見をAIなどの最新テクノロジーと融合しながら、1to1(ワン・トゥー・ワン)の世界を実現していきたい。
WWD:「似合う」を解明するための「似合うラボ」を2022〜25年に表参道で運営し、ここで得た知見やデータを活用しながら「AIエージェント」の実装を進めていく。26年はどのような年になる?
澤田:当社は独自開発のAIエージェントを社内で「おしゃべりくん」というコードネームで呼んでいる。25年はAIエージェントを実装するためのパーツを組み上げてきた。26年は、LINEへのAIエージェント搭載をはじめとし、徐々に表に出していく年になる。「ゾゾタウン」などへの本格的な実装は、それ以降になるだろう。
WWD:オープンAIのような大元の生成AIプレーヤーが自らECに乗り出すという噂もある。影響は?
澤田:それはプレーヤーや商材による。日用品のようなコモディティであれば影響を受けるかもしれないが、当社は、ECやファッション商材ならではの優位性を持っている。ファッションはそもそもトレンドやサイズ、デザインなどの購買決定に関するパラメーターが多い上に、「似合う」のような数値化しにくい要素も入ってくる。膨大なユーザーを抱えていたとしても汎用的な「AIエージェント」では十分に対応しきれない部分が出てくるだろう。
WWD:これまでの「ゾゾタウン」はコンマ1%の改善を日々積み重ねて成長してきたが、AIエージェントの実装は、「ゾゾタウン」にどのような変化をもたらす?
澤田:AIエージェントの本格的な実装が進めば、コンバージョンが非連続的なレベルで劇的に上がる可能性は高い。ECも、これまでのようにネットとリアル(店舗)に分かれていた従来の形が変わり、より融合する形になる可能性もある。いずれにしろ、「ゾゾタウン」はAIエージェントの実装を機に大きく変わるだろう。
WWD:30年のZOZOは?
澤田:社内では野球で例えて「ゾゾタウン」は「160キロのストレート」を目指そうよと話している。ファッション&ビューティ以外のカテゴリーの拡大なども進めながら今の球速をさらに上げつつ、そのストレートを生かすためにも「切れ味の鋭い変化球」も磨いていく。変化球とは英「リスト」との連携や「ZOZOFIT」など計測技術を軸にした海外事業展開、昨年スタートした「ZOZOマッチ」などの新規事業で、今後は新たな領域にもトライし、M&Aも積極的に検討していく。変化球をモノにして、30年に目指すはワールドシリーズ制覇だ。
個人的に今注目している人
今年W杯ということもあるが、経営者目線で見たときの独特のリーダーシップに注目している。グイグイ引っ張るタイプではない印象だが、戦術はすごく知的に詰めている。それでいて、どこか「可愛げ」というか隙があるような、不思議なバランス感覚がある。あ、(ZOZO創業者の)前澤(友作)さんは、もう「ずっと注目」なので殿堂入りということで(笑)
1998年に輸入レコードの通販を目的にスタート・トゥデイ(現ZOZO)設立。2004年12月にファッションEC「ゾゾタウン」をスタート。07年12月東証マザーズ上場、12年2月東証一部(現東証プライム)に変更、19年9月にヤフー(現LINEヤフー)の傘下入りを発表。25年3月期の業績は商品取扱高6143億円、売上高2131億円、営業利益647億円、純利益453億円。従業員数は1738人(平均年齢34.2歳、25年3月末時点)