PROFILE: 服部真二/セイコーウオッチ 代表取締役会長兼 CEO 兼 CCO

世界経済の不透明感が強まる中でも、堅調な成長を維持しているセイコーウオッチ。昨年、4年ぶりにCEOに復帰した服部真二・代表取締役会長兼最高経営責任者(CEO)兼最高文化責任者(CCO)は、創業者・服部金太郎の信条を起点として、時計事業を中核とした次の成長戦略を描く。「グランドセイコー」に続き、「クレドール」を世界のハイエンド市場へと押し上げ、日本発ラグジュアリーウオッチの新たな地平を切り開こうとしている。創業150周年を5年後に控える今、あらためて今後の展望を聞いた。
150周年に向けて、時計事業のさらなる強化を
WWD:2025年はどんな年だったか。
服部真ニ・代表取締役会長兼CEO兼CCO(以下、服部):4月1日にアメリカのドナルド・トランプ大統領が発表したトランプ関税や、長引くロシアとウクライナの戦争の影響で、世界の時計業界は近年さまざまな課題に直面してきた。コロナ禍への対策として行われた金融緩和などがもたらしたラグジュアリー・ブームでスイスの時計業界は超高級品に全力を入れたが、そのブームも終息しつつあり難しい情勢だ。しかしそんな状況でも、当社の業績は好調に推移している。世界的な時計ブランドとして認められた「グランドセイコー」を筆頭に、役員や社員一同の尽力のおかげだと考えている。
WWD:昨年4年ぶりにCEOに復帰した。狙いは?
服部:セイコーグループは、5年後の31年に創業150周年を迎える。今回、グループのルーツであり中核のセイコーウオッチのCEOに復帰したのは、その大きな節目で創業者の服部金太郎をはじめとする先人たちの足跡を振り返り、将来へとつなげるため。150周年から、さらにその先の200周年へと、当社の未来に向けた中長期的なグローバル事業戦略を企画・立案していきたい。
WWD:創業者の考えはどのように息づいているか。
服部:「社会のための時計作りをする」という服部金太郎の言葉を実践してきセイコーは“社会の問題を解決するソリューションカンパニー”。国内の株式市場で使われている金融決済システム、そして今や医療現場では欠かせない電子カルテのシステムなどを開発するシステムソリューション事業を過去に立ち上げたのもそんな思いからだ。当初はどちらの事業も社会的に必要性が認知されておらず苦戦したが、現在では当グループの基幹事業のひとつ。とはいえ、私たちの企業活動の中核は時計事業だ。150周年に向けて、同事業をさらに強化する。
WWD:時計事業のさらなる強化とは何か。
服部:具体的なアクションのひとつが、4月にスイス・ジュネーブで開催される世界最大の時計見本市「ウォッチズ・アンド・ワンダーズ・ジュネーブ(以下、WWG)」への「クレドール」の単独ブースでの初出展。セイコーとしては、「グランドセイコー」に続く2ブランド目の参加だ。「クレドール」は、1960年代に最高峰の時計&工芸技術を注ぎ込んだ「特選腕時計」をブランド化するかたちで74年に創設したセイコーのラグジュアリー・ドレスウオッチブランド。昨年7月にはブランドの世界観を体感していただく場として初の単独路面店「クレドールサロン 京都」をオープンした。ニューヨークやパリなどでも販売を開始し、「グランドセイコー」と共にハイエンドな高級時計市場への歩みを進める。
WWD:今改めて「クレドール」に注力する意義は?
服部:1980年代初頭に日本の野球界のレジェンド、長嶋茂雄さんに広告キャラクターに就任いただいたことなど、「クレドール」は思い入れのあるブランドだ。2016年に当時世界最大の時計宝飾見本市だったバーゼルワールドでお披露目した、葛飾北斎の「富嶽三十六景」がモチーフの世界8本限定のトゥールビヨン彫金モデル“フガク”が象徴するように、「クレドール」は前身の「特選腕時計」時代から現在まで、日本の美を追求する感性や伝統工芸技術を活用した時計作りを続けてきた。“白樺”や“雪白”など、ブランド哲学「THE NATURE OF TIME」に基づきコレクションを展開してきた「グランドセイコー」と共に、世界を魅了する“メード・イン・ジャパン”のラグジュアリーなタイムピースを作っていく。
WWD:今後の展望について。
服部:「グランドセイコー」「プロスペックス」「プレザージュ」に続いてカジュアルなブランド「セイコー 5スポーツ」も世界の時計市場で改めて存在感を増している。私たちには高価格帯から普及価格帯まで、複雑時計からスポーツウオッチ、レディスウオッチまで全方位で時計コレクションを展開している強みがある。時計ブランドの売上高はどれも推定値なので明確な数値目標は設けられないが、代表取締役CEOとしての私の目標は創業150周年、さらにその先を見据えて「グランドセイコー」として「世界のラグジュアリーウオッチブランドのトップ10に入ること」。この目標は、私たちの技術的な価値に加え、日本独自の感性的価値を製品に反映させることで、必ず達成できると確信している。
個人的に今注目している人
当社のアンバサダーにもなっていただいているが、デッドボールを投げてきた相手を責めるのではなく、むしろ握手を求めたりするなど、とにかく人間的にすばらしい方だ。世界の野球の常識や慣習を塗り替えてしまうような彼の行動には驚かされるし、尊敬せずにはいられない。こんな方と一緒にいられる私たちは本当に幸福だと思う。
セイコーは1881年、服部金太郎が時計の輸入と修理を生業とする服部時計店を創業したところから始まる。小売業の成功を背景に92年には精工舎を設立し、壁掛け時計の製造を開始。95年には懐中時計、1913年には国産初の腕時計“ローレル”を発売した。32年には現在のセイコーハウスにあたる銀座四丁目時計塔を竣工。60年、「グランドセイコー」を発売。2001年、純粋持株会社に移行して腕時計事業部門を分社化。セイコーウオッチを設立した
セイコーウオッチお客様相談室
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