PROFILE: (右)小林一俊/社長 (左)澁澤宏一/常務

創業80周年を迎えたコーセーは1月1日付で純粋持株会社体制へ移行し、コーセーホールディングスへと社名を変更した。さらに19年ぶりの社長交代として、3月27日付で澁澤宏一常務がコーセーホールディングス社長兼グループCOOに就任する。会長CEOに就任する小林一俊社長と両輪となって、グループ経営の高度化とグローバル事業成長の加速へと踏み出す。
社員の輝きがブランド力を底上げする
WWD:2026年からホールディングス体制がスタートする。
小林一俊社長(以下、小林):これまで縦割りだったグループ企業間の連携を強固にし、グループ全体での成長を加速させていく。顧客の購買行動がますます多様化する中で、新体制では、ブランド横断でグループ戦略が進められるよう事業会社の役員をクロスして配置した。この連携により、重複する業務の無駄や無理を省き、各ブランドがスケールメリットを享受できる合理的な戦略が可能となる。製品開発や研究、プロモーション、グローバル事業においても、それぞれの得意分野を生かし協力することでシナジーを創出できるはずだ。
WWD:シナジーを創出するために、“人”と“ブランド”を輝かせていく。
澁澤宏一常務(以下、澁澤):ホールディングス単体では利益を生むことはできない。人、ブランド、各事業の個性を最大限に輝かせることが売り上げや利益を最大化させると考える。ここで中心に据えるのが「求心力」と「遠心力」の二つの力だ。「求心力」はグループ戦略のもと、ガバナンスを効かせるとともに、中長期視点での経営戦略策定とぶれない遂行を実現させていく。「遠心力」は事業会社やブランドが、それぞれの個性を尖らせ、現場の判断で機動的に成果を出していく力のことで、これらを同時に最大化する。各事業会社には萎縮することなく、主体性を持って存分にパフォーマンスを発揮してほしい。昨年12月に決起集会を開催したが、アルビオン、コーセーコスメポートなどを含む管理職ら総勢400人が会社の垣根を越えて議論を交わしていた。その光景を見た時、これから大きな化学反応が生まれると心底ワクワクした。
WWD:社員の意識改革にも取り組んでいく。
小林:やはり最後は人と人だ。そこで働く社員が輝けば輝くほど、製品やブランドの魅力にも反映される。おかげさまで昨年は例年以上のヒット製品に恵まれたが、一方でブランド戦略においては慎重で少し保守的になってしまっている印象があった。もっと尖っていい。例えば「ヴィセ(VISEE)」や「アディクション(ADDICTION)」といったメイクブランドは本来のエッジィな世界観がもっと突き抜けていていいし、DXやクロスチャネル、クロスセルといった販売戦略をもっと積極的に取り入れることで、まだまだ新規客との接点拡大や顧客体験の向上も見込めるだろう。
WWD:南アルプス工場の稼働も控え、生産面でも盤石の体制だ。
小林:国内3カ所目となる南アルプス工場は2月に竣工、下期の稼働を予定している。脱炭素化を掲げ、地産地消モデルとして山梨県の豊かで清らかな水資源を活用し、自動化により作業負担を軽減しながら主要スキンケア製品の大量生産を可能とする。製品の安定した供給とともに、地域活性化と持続可能な社会の実現に取り組んでいく。
WWD:一方で“脱・自前”も推進していく。
小林:グローバル展開の加速にはこれまでの自前主義でなく、他社や異業種と手を組むことが鍵。同じ志のパートナーと「ビューティコンソーシアム構想」を実現していく。例えばビーガンやハラルといったグローバル特有の地域性や嗜好性に対応するには現地のOEMに委託することも一手だろう。
WWD:国内は消費者志向の取り組みに注力する。
澁澤:昨年は消費者庁が主催する消費者志向経営優良事例表彰にて、「消費者庁長官表彰」を2年連続で受賞した。障害のある人を対象とした美容セミナーの開催や、地域と連携した次世代に向けた紫外線対策の啓発など、当社独自の「一人ひとりの美しさに寄り添うアダプタビリティ」の考えや社会貢献活動を評価していただいた。引き続き生活者との共創でよりよい社会を目指し、消費者のウェルビーイング向上にも貢献していく。
WWD:26年に向けては。
小林:これまで培ってきた資産を継承しつつも、今年を新たな創業の年と捉え、現状を打破する大きな転換の年とする。意識改革の浸透を進め、“第二の創業”としてグループの新たな未来を切り開いていきたい。
澁澤:大きな節目に大役を授かり身が引き締まる思いだが、小林社長とは長年にわたる信頼関係がある。二人三脚で着実に歩みながら、社員一人一人が輝ける経営体制を目指す。
個人的に今注目している人
大谷選手は、有言実行を体現する存在。幼少期から明確な目標を掲げ、綿密な計画で一つずつ達成してきた姿勢は、アスリートにとどまらず経営にも通じる。役割を見極め、状況に応じて成果を出す計画力と、その先を見据える圧倒的な志に注目している。(小林一俊社長)
澁沢栄一は、正しきことに従い、日々自らを省みる姿勢が、コーセー創業者・小林孝三郎氏の精神とも通じる。謙虚さを忘れず、社会と向き合いながら経営に取り組む姿勢に、今なお学ぶべき本質がある。(澁澤宏一常務)
1946年に、小林孝三郎氏が化粧品の製造販売を行う小林合名会社を創業。48年に小林コーセーを設立。60年代後半から香港、シンガポールなどアジア市場を皮切りに、北米、欧州にも積極的に進出。91年にCIを導入し、コーセーに社名変更。2026年1月から持株会社体制に移行し、コーセーホールディングスを設立。24年12月期の売上高は3227億円、純利益は75億円
コーセー
03-3273-1511