PROFILE: 森星/モデル・「テフテフ」クリエイティブ・ディレクター

モデルの森星がクリエイティブ・ディレクターを務めるプロジェクト「テフテフ(TEFUTEFU)」のキュレーションによる“色寂 irosabi”展が、和光 本店地階 アーツアンドカルチャーで8月20日まで開催中だ。森が2021年に始動した「テフテフ」は、日本の衣・食・住にまつわる伝統や美学を見つめ直し、その魅力を再提案するプラットホームとして、各地の職人と協業したプロダクトの開発や販売、展示の企画、自社サイトでの情報発信などを行う。同展では、時間と共に変化する色彩の美しさをテーマに、朝日焼十六世 松林豊斎、エオシーン アーツ(Eocene Arts)、大蔵山スタジオ、川合優、谷口弦、廣谷ゆかり、福村龍太、吉岡更紗、Ryan Schnirelらの作品を展示。森に「テフテフ」での挑戦と、同展に込めた思いを聞いた。
WWD:「テフテフ」の設立背景は?
森星(以下、森):大学在学中にモデルの仕事を始め、ありがたいことに世界の手仕事に触れたり、クリエイターと会話したりする機会をたくさんいただきました。そうした交流の中で、自分が日本文化について知らず、共有できないもどかしさを感じていました。加えて、パンデミックを経て、自分の住環境をどう彩るかに興味が湧きました。ルーツである祖母や母のクリエイティブな生き方を振り返りながら、自分の手で“幸せ”を生み出す暮らしについて考えるようになったんです。そうすると、日本の伝統的な暮らしの中に多くの豊かさのヒントがあることに気が付きました。今、サステナビリティやウェルビーイングといった概念が注目されています。新しい言葉のように聞こえるかもしれませんが、実は先人たちが暮らしの中で自然に実践していたことでもあります。雨が降れば「やったね、作物が育つね」と喜び、太陽が出れば「ありがたいね」と感謝する。自然との距離が近い暮らしの中で当たり前に育まれていた感性、「もったいない」や「いただきます」の精神。過去のものだと思っていた日本の感性こそが、実は今の時代の先端をいく豊かさなんだと思いました。自分がその豊かさを取り入れる方法を学んでいく中で得た気付きを、「テフテフ」というプラットホームを通じて、みんなと共有したいと思ったのがきっかけでした。
「テフテフ」は暮らしを実験するラボ
WWD:「テフテフ」で目指していることは?
森:「テフテフ」は、暮らしを実験するラボだと捉えています。さまざまな地域、そこに根付く文化、人との出会いを通じて得た気付きを暮らしに取り入れてみる、そしてその魅力を伝え、共有していく。昔と今では暮らし方は大きく変わりました。日本の美意識や知恵を今の暮らしに合った形で取り入れながら、工芸の新しい居場所を作りたい。今回のような展示の場を通じて文化と人をつないでいくことも、「テフテフ」のミッションです。会社を設立する時には、理念に「日本を元気に!」と掲げていました。なんだか、大きくて単純な言葉に聞こえるとは思うんですが、本当に原動力はそれでしかないんです。
WWD:モデルの仕事と「テフテフ」の活動はどう互いに影響している?
森:モデルという仕事自体が、私にとっては探求心の源。どういうモデルでいたいか、どんなロールモデルでありたいかを考え続ける中で、自分のライフスタイルをどう築きたいか、周りにどんな提案ができるかといった視点につながっています。だから、両立が大事。撮影の合間に時間を見つけては、自分で車を運転して日本のさまざまな土地に出かけるようになりました。でも、まだ全然見たりてないです。同じ場所でも、次に行くと全然違う景色を見せてくれる。それがとっても面白いんです。
WWD:”色寂 irosabi”展に込めたメッセージは?
森:今回のタイトルに据えた“色寂”とは、時間とともに変化する素材や景色、モノの色に注目し、その移りゆく色彩を愛でる心を表す造語です。京都を訪れると、季節の変化や時間の蓄積を肌で感じられる瞬間があります。言葉ではない感性で変化をキャッチする感受性に日本ならではの美学を感じました。このアーツアンドカルチャーという場所は、いろんな人に開かれた文化の交差地点。自然から教わる、移ろいの美学を通じて感性を磨きたい、新しいモノや見方に出合いたいと思う人たちに、ぜひ足を運んでほしいですね。
■色寂 irosabi展
日程:8月1日〜20日
時間:11:00〜19:00
定休日:無休
場所:和光 アーツアンドカルチャー
住所:東京都中央区銀座4-5-11