「J&Mデヴィッドソン」のデザイナー夫婦、ジョンとモニク・デヴィッドソン
「J&M デヴィッドソン」のデザイナー夫婦、ジョンとモニク・デヴィッドソンが来日した。同ブランドは昨年9月に青山に構える旗艦店を移転リニューアルし、9月にはロンドンの旗艦店もメイフェア地区にオープンする。青山店とロンドン店限定で発売するラグジュアリー・ピースやブランドの今後の方向性について、二人に聞いた。
WWDジャパン(以下、WWD):これまでデイリーに着られるフェミニンなウエアのコレクションを発表してきたが、今回のアストラカンを使ったピーコートやより構築的なシルエットのドレスなど、特別感のあるアイテムをそろえた。通常のコレクションとは別に今回、ラグジュアリー・ピースを作ったいきさつは?
ジョン・デヴィッドソン(以下、ジョン):特別なシーンのための特別な服を作りたかった。もっとエクスクルーシブなもの、ラグジュアリーのものを。イギリスではカクテルやイベント用の服の需要があるから、そういったスペシャルなシーンに着られる服を作った。ある意味クチュールみたいなものだ。このコレクションは青山店とロンドン店限定で発売するスペシャルコレクションだ。メインコレクションよりラグジュアリーなコレクションで、高級な生地を使用し、イタリアのクチュール工場で作った。デザインもより凝ったものにしている。一つ一つのピースがインディビジュアルな作品。今回は12ピースあって、作り過程も、素材も、全てこだわった。いつもよりディテールにもこだわっている。
モニク・デヴィッドソン(以下、モニク):メインコレクションを作るとき、商品の“ファミリー”を作る。例えば同じ生地でドレスやスカート、ジャケット、コートを作るとしたら、それら全てひとつの“ファミリー”に入る。でも今回のコレクションは一つのピースごとに生地を変えている。ファミリーはなく、それぞれインディビジュアルだ。
WWD:今回のコレクションのアイテムにはどのようなこだわりが?
ケイト・ミドルトンお気に入りのドレス
モニク:素材や裁縫、デザイン全てにこだわった。たとえばファイユという、光沢があって張りの出る織り方をシルクに使い、ドレスを作った。スティッチングもとても細かい。生地や色も慎重に選んだ。今回アストラカンのピーコートを作ったし、ケイト・ミドルトンお気に入りのドレスも色がとてもルミナスだ。
WWD:同コレクションのテーマやインスピレーションは?
モニク:1950年代や60年代のクチュール。エレガントでスペシャル、ユニークなものを作りたかった。
WWD:バッグの印象が強いが、ブランドにとって服はどういった位置付け?
モニク:「J&M デヴィッドソン」はあくまでもバッグがメインだから、服はアクセサリーにとっての"アクセサリー”。コレクションの中の華みたいにね。実際、売り上げの70%がバッグだ。でも服も必要不可欠な存在。今回のコレクションもね。バッグだけでなくて服を置くことによってコレクションが完成する。
ジョン:服に関しては、大部分はモニクに託している。大事なのは、女性によって作られたウィメンズウエアだということ。男性がウィメンズウエアを作るのと全く違うと思う。実用性の面を見てもね。
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WWD:移転リニューアルした青山店の反響は?
ジョン:とてもいい。方向性も良いと思う。青山店の一番いい商品セレクションをそろえているんだ。我々が思い描く「J&M デヴィッドソン」のコンセプトを的確に表現している店になっている。売り上げももちろん上がっている。日本全国からわざわざ青山店を目指してきてくれるなど、全国のファンのための場所になっている。
WWD:ロンドン店をメイフェア地区のマウント・ストリートへ移転する理由は?
ジョン:ノッティング・ヒル・ゲート・ストリートに店を出した時と同じだ。ノッティング・ヒル・ゲート・ストリートはもともとファッションブランドが並ぶ通りではなかったが、当時とてもポテンシャルを感じた。そして我々のあとに多くのブランドが続いてノッティング・ヒル・ゲート・ストリートに店を出した。マウント・ストリートもポテンシャルを感じる。ロンドン市内で一番いい通りだと思っている。パリのモンテーニュ大通りのように。「セリーヌ」「ラルフ ローレン」も店を構えているし、買い物客も多く集まる。トップレベルのブランドの周りにいることはとても大事だ。特に我々のようにイギリス発のレザーグッズのヘリテージ・ブランドは少ない。
WWD:ブランドのアイデンティティーは?
モニク:私達はヘリテージ・ブランド。タイムレスなものを作り続けてきた。服はアイディアを持ち続けることはできても、シーズンごとに新しいものを出さないといけない。人も常に新しいものを求めているもの。でもバッグはシーズンごとに捨てられたりしないと思う。もちろん、新色や新デザインを出していくけれど、アイコニックなバッグは30年前に作ってから今も残っている。アーカイブもすでに1655点ある。ファッショナブルでもそうでなくても、とにかくずっと残り続けるバッグを作りたい。
WWD:ブランドの今後は?
ジョン:ヘリテージ・ブランドという土台は築けたと思う。これからは認知度をあげなければならない。まだニッチなブランドなんだ。同時にブランドを広げすぎてもいけないと思っている。エクスクルーシブなものを作る、我々のブランドの根源にあるものに反することになるから。「J&Mデヴィッドソン」はまだ認知度が低いから、消費者からしたら彼らだけの“秘密”と思ってくれている人が多いんだ。周りのみんなとは違う、特別なもの、スペシャルなものだと思ってくれているみたい。でもそれは我々の認知度の低さを語っているよね。それは今後詰めていかなければならない課題だ。

モニク:そうね。もっとオープンにならなければならないと思う。派手になるとは違うけども。たとえばブランドロゴも元々バッグの内側につけていたけれど、外側に移した。モダンラグジュアリーブランドになりたいわ。今の時代モダンラグジュアリーとは、ラグジュアリーだけれども富を見せつけるようなものではない。控えめだけれどもシックで、高品質なものね。
WWD:次のプロジェクトは?
ジョン:香水やジュエリーなど、やってみたいことはたくさんある。でも全て中途半端になってしまうのはいけない。そのため、今はウィメンズに集中する。ブランドとして一貫性を大切にしている。最終的な決定権は常に我々が持っている。そうすることによってブレないブランドを保っている。デザイナーが変わるたびにコロコロブランドの雰囲気まで変わってしまうブランドと違って、それも我々の一つの強み。そういった一貫性を保つためにも、急いでいろんなことに手を出すつもりはない。
モニク:慎重になることももちろん大事だけれど、情熱を持ち続けることも大事だ。元々、私達はすぐ興奮してしまう方だけど(笑)。
WWD:消費者がこれから求めるものは?
モニク:難しいね。人が好きなものなんて絶対的に予測できないから。だから私達ができることを、やりたいことを、情熱持ってやるだけなのではないか。そうすれば自然に消費者も私達の方へ寄ってくる。
ジョン:その通り。まずは信頼を得て、そこから新しいものを徐々に出していけばいい。
モニク:私達はワンシーズンで終わらないもの、何年経ってもクローゼットから出して使えるものを作りたい。私達の顧客はそれに魅力を感じてくれている。それは絶対に続けていきたい。エレガントでタイムレスで美しいもの。それを作り続けたい。