絶好調の「ゴールデンベア」 倒産を乗り越え行き着いた“誠は無二の宝なり”

企業動向インタビュー

2018/2/6 (TUE) 12:00
小杉佐太郎コスギ社長:1972年10月23日生まれ、東京都出身。小杉産業は1883年の創業,小杉佐太郎・社長は江戸時代から続く小杉家の16代目。慶應義塾大学、丸紅を経て、2002年に小杉産業に入社。09年2月に小杉産業が自己破産、同年3月に大阪のアパレルグループ小泉が「ゴールデンベア」事業を承継する形でコスギを設立。小杉氏は16年5月から現職。なお小杉社長はコスギの株や資産は一切所有していない

 熊のマークでおなじみの「ゴールデンベア(GOLDEN BEAR)」を展開するコスギが好調だ。衣料品不振の総合スーパーを主力にしながらも2010年以降増収を続け、同社の2018年2月期は売上高が前年比3.0%増の170億円、営業利益は同43.8%増の15億8000万円を見込む。経営の指揮をとるのは、小杉産業の創業家出身の小杉佐太郎・社長だ。50歳以上のファッション業界人であれば、小杉産業と聞けばピンと来るかもしれない。2009年に自己破産した名門企業だ。

 コスギは、2009年に倒産した小杉産業の「ゴールデンベア」事業を引き継ぐ形で誕生した。小杉産業は1883年創業、ピーク時の1986年には年商800億円を超える名門企業だったが、00年代に入ると経営不振に陥り、05年に投資ファンドのジェイ・ブリッジが、07年には伊藤忠商事が当時25%出資していたレゾン投資事業有限責任組合が買収し、その傘下で経営再建に取り組むも、09年2月に自己破産した。負債総額は債権者418人に対し、約98億円だった。

 結局、同年3月に大阪のアパレルグループ小泉がコスギを設立し、「ゴールデンベア」事業のみを承継した。「民事再生ではなく、自己破産というのが当時の苦境を表している。引き取り手がいなかった」と振り返る通り、どん底からの再出発だった。小杉社長に聞いた。

WWDジャパン(以下、WWD):主力の「ゴールデンベア」事業の状況は?

小杉佐太郎コスギ社長(以下、小杉):売り上げは2010年以降、ずっと右肩上がりで増加し、直近では小売りベースで212億円の見込みです。主要な販路であるスーパーは突発的なセールが多いのでプロパー消化率は出しにくいのですが、最終消化率は94%です。

WWD:売り上げも伸びていて、最終消化率も高い。その理由は?

小杉:特別なことはしていないんですよ。増収の分かりやすい理由の1つは、以前3割にすぎなかったウィメンズを強化してきたから。今は全国にある約750の売り場のうち、メンズが375、ウイメンズが371になり、売り場の数は拮抗するまでになりました。80%がGMS(スーパー)、15%が百貨店、残りがECなど。しかし僕らはGMSだから、百貨店だからという売り場の作り方をしていません。基本的にはどの売場でも全てオリジナルの什器とPOPを作り、販売員を立てています。

WWD:スーパーの衣料品売り場にオリジナルの什器とPOPを作り、販売員を立てるのは珍しい。ただ、スーパーの衣料品売り場は不振が続いています。

小杉:基本的にスーパーは1階が食品、2階が衣料品売り場ですが、スーパーに足を運ばれるお客さまのうち4人に3人は、2階の衣料品売り場には来てすらいただけません。だからこそ、どうやって足を運んでいただくか。売り場に来ていただく理由をこちらから作る必要があります。「ゴールデンベア」は全売り場に毎週10型の商品をデリバリーするようにしています。毎週売り場が変われば、お客さまがちょっとのぞいてみようかなという気になるかもしれない。そして売り場の主役は販売員です。当社は全国に1071人の販売員がいて、彼女/彼たちに素敵な舞台を用意したい。什器はその舞台装置のようなものです。

WWD:売れ筋の商品は?

小杉:「ゴールデンベア」の売れ筋商品の一つに、ポロシャツがあります。われわれは常に、ずっと着ていただくためにどうしたらいいかを考えてきました。ポロシャツがヘタって見えるのは襟が丸まってくるから。丸まらないために襟の素材をダブルフェースにしました。コストは100円くらい上がりました。しかし出来上がった商品を社員に家で30回ほど洗ってもらいましたが、まったくヘタらなかった。

WWD:社員が自分で洗うんですね。

小杉:外部の検査機関にももちろん出しますが、それでは単にAとか、3級といった文字情報に過ぎない。自宅で30回洗うのって、すごく大変ですよ。一週間くらいはかかりますし。でも、だからこそリアリティーと説得力が出る。社内の新商品説明会の時には、30回洗った商品担当者自らが販売員に説明し、そのかいもあってポロシャツの売り上げは1.5倍になりました。

WWD:しかし、長持ちだと、その分服が売れなくなってしまうのでは?

小杉:いいんです。コスギの社是は「誠は無二の宝なり」で、これは小杉産業の時から変わっていません。同じように「ゴールデンベア」のポリシーは、“誠実・長持ち・実用的・上品・上質”です。ポロシャツの価格は、4900円。でも、5年10年着ていただいた後でも形が変わらないし、他のどんなブランドよりも長持ちするという自信もある。いい服とは、お客の期待を超える服。いつまでも愛着をもっていただきたい。350万着を生産する「ゴールデンベア」だからこそできるプライスで、お客さまの期待を超えるのが私たちの目標です。

WWD:その先に利益があると。

小杉:そうです。

READ MORE 1 / 1 09年に負債98億円で自己破産


09年に負債98億円で自己破産、債権者418人のリストを今も持ち歩く

WWD:2009年2月に債権者418人に対し、負債98億円で自己破産しました。

小杉:小杉産業の倒産のせいで、一生かかっても返せない借金を背負ってしまった取り引き先もいます。あらゆる取り引き先にご迷惑をかけました。言葉では言い表せないですが、本当に申し訳なく思っています。それに民事再生ではなく、自己破産。本当に厳しかった。それでもなんとか再生のチャンスをいただいた。2年間1日の休みなく働き続けながらずっと考えていたのは、なぜ倒産したのか、なぜ利益をいただけなかったのかということです。たどり着いた答えが、お客さまに向き合っていい服を作った先に利益がついてくるということ。儲けるという考えにとらわれると、目先の利益を優先してしまう。お客さまに誠実であれば、その先に必ず利益がある。

WWD:今は社内に売り上げや利益を公開しているそうですね。

小杉:はい。今はインターネットやSNSが発達し、情報共有が以前に比べ、本当にしやすくなった。いい時代だと思います。目指しているのは社内にも社外にも全てを公開できる会社です。会社の決算は売り上げ、利益とも週単位で公開し、社内で共有しています。本当は社外にも、売り上げや利益だけでなく、どこの工場で作ったのかも公開したい。われわれの思いに答えてくれる素晴らしい工場があるからこそ、いい服が作れる。ポロシャツは好調ですが、もしかしたら6900円に値上げしても売れるかもしれない。でも、“売れるから値上げしよう”という会話をお客さまには聞かせられないですよね。工場には継続的かつ計画的にオーダーを出すことで、お互いに適正な利益を出す。お客さまや取り引き先に誠実であるためには、透明性と公正さが大切です。

WWD:倒産という憂き目の先に、お客に誠実である、という結論に行き着いたと?

小杉:そうです。お客さまに必要とされなくなったらと思うと、今でも怖い。当時の債権者リストは常に持ち歩いています。ただ、倒産の責任は全て経営者にあります。これは僕の、僕だけが背負うべき罪です。社員には関係ない。社員には、お客さまと向き合ってほしい。ファッションには、服を通じて日本を元気にできる、そういった力がある。それを信じてもう一歩でも二歩でも服を研ぎすませてほしいと思っています。

LINEでフォローして最新ニュースをチェック 友だち追加
メールマガジン登録

毎週月、水、金に注目コンテンツをお知らせするメールマガジンをお届けします。
今ならデジタルデイリーの1週間試し読みもご利用いただけます。
※ @icloud.com/@me.com/@mac.com 以外のアドレスでご登録ください。

フォーカスランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間
  1. 福岡の“しゃれこつ”男子が恋する「フジト」のデザイナーにこだわりを聞く

    アニバーサリーイベントインタビュー
  2. ストリート系男子が立ち上げた女子力高めのウェブメディア「リリー」

    アプリ・ウェブサイト雑誌・書籍・媒体SNSインタビュー
メールマガジン登録

毎週月、水、金に注目コンテンツをお知らせするメールマガジンをお届けします。
今ならデジタルデイリーの1週間試し読みもご利用いただけます。
※ @icloud.com/@me.com/@mac.com 以外のアドレスでご登録ください。

ブランド検索
シーズン検索
お問い合わせ各種

デジタルデイリーについての問い合わせは
下記よりお選びください。

false false true true true false true true