ファッション

「ストリートウエアに未来はない」 ヴァージル・アブローが「デイズド」に語る

 ヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)は、英雑誌「デイズド(DAZED)」が近年のトッププレーヤーを特集するシリーズのインタビューで、「ストリートウエアはこの先10年のうちに廃れる」と予測し、今後は「消費者がファッションの知識や個人のスタイルをビンテージで表現するとても素晴らしい状態になっていくだろう」と語った。

 アブローはインタビューで、「思うに、いったいどれだけのTシャツ、パーカ、スニーカーを身につけられるというのか。ビンテージショップにはクールな洋服が山ほどあるのだから、ただそれを着ればいい。これからは新しいものを買うよりも、そういう流れが強くなっていくと思う。ちょっと、自分のアーカイブをチェックするよ、みたいな感じになるだろう」とコメントしている。

 しかし、アブローのこのインタビューはストリートウエア界で大きな反感を買った。

 「ブロークン プロミシーズ(BROKEN PROMISES)」のデザイナーのマンディ・ベンス(Mandee Bence)は、「ストリートウエアがハイファッションの新たな分野として認識されたのはアブローの影響によるところも大きい。今はラグジュアリーと言えばスニーカーにTシャツだというのに。アブローの発言は、偉大なラッパーが『ヒップホップは死んだ。今後は違う音楽を作る』と言うのと同じこと。アブローは先へ行き過ぎて何かを見失っただけだ」とコメントした。

 カッパ ノース アメリカ(KAPPA NORTH AMERICA)のドレ・ヘイズ(Dre Hayes)社長は、「ヴァージルの興味深い考えをリスペクトしているけど、ストリートウエアに未来はないという彼の発言には同意できない。人びとはパーカやTシャツ、スニーカーを着用することをやめはしない。しかも、ストリートウエアはすでにビンテージ化している。スニーカーと衣類のリセール市場はストリートウエアにとってなくてはならない部分だ。人びとはすでに毎日アーカイブから選んで服を着ているよ」とコメントした。

 11月に開催された「コンプレックスコン(Complex Con)」で行われた“ストリートウエアの未来”についてのパネルディスカッションには、デザイナーのドン・C(Don C)やエブ・ブラバド(Ev Bravado)などアブローに近いメンバーが多数参加していたが、誰一人としてストリートウエアが廃れるとは考えていない。

 「ダイヤモンド サプライ カンパニー(DIAMOND SUPPLY CO.)」創業者のニック・ダイヤモンド(Nick Diamond)は、「ハイファッション界におけるストリートウエアのコンセプトは、ラグジュアリー志向の消費者とブランドの中でのトレンドにすぎないから、人気が衰えていくのは分かる。彼の考えは、ビンテージの素晴らしさだけでなく環境保護の観点からも評価したい。衣服の製造量が減ることは地球環境にとってよいこと。しかし、ストリートウエアやスケーターファッションはブランドやデザイナーが独創性を発揮できる分野でもあるし、価格もまだ手頃だ。Tシャツ、パーカ、スニーカーなどのスケーターファッションがなくなることはない。ストリート出身の若くて独創性のある新しいデザイナーが存在する限り、ストリートウエアが廃れることはない」と話した。

 「BTFL」創業者兼デザイナーのアリハンドロ・ロドリゲス(Alejandro Rodriguez)も、「注目すべきは1980~90年代のアイテムが現在ビンテージ品として認識されていること、そして今の若者はそのビンテージ品を当時の映画やアーティストと関連付けて身近に感じているということだ。だから、ビンテージ品は確実に多くの注目を集めるだろう。しかし、ファッション界でストリートウエアのカテゴリーはすでに確立されているから、消え去ることはないだろう」と語っている。

 アブローはインタビューの中で2009年ごろの出来事を振り返り、「当時、記者はあのようなデザインをただ“ストリートウエア”とだけカテゴライズした。デザイナーとしての私は、今の時代に存在するどうすることもできない用語に直面している。フラストレーションを感じた経験から、もし“ストリートウエア”が時代の流れであるならば、それに定義付けされるのではなく、自分が定義付けしてやろうと決めたのだ。“ストリートウエア”とは何であるかを示すためにショーをしなければならない、しかも急いで。分かるだろう?」と語っている。

 しかし、アブローは一人でストリートウエアを確立したわけではない。「パーム エンジェルス(PALM ANGELS)」や「ヘロン・プレストン(HERON PRESTON)」など、ブランドやデザイナーたちの尽力によるところも大きいし、「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」と「シュプリーム(SUPREME)」のコラボなどの影響も確実に存在する。事実、18年の「CFDAアワード(CFDA Awards)」では「シュプリーム」創業者のジェームス・ジェビア(James Jebbia)がメンズウエアのデザイナー・オブ・ザ・イヤーに選出されている。

 アブローには、ストリートウエアの発展に貢献し、メンズウエアを席巻してきた功績がある。しかしまだ終わりではないはずだ。アブローは12月18日、「ルイ・ヴィトン」の2020年カプセル・コレクションのパートナーとして、「ア ベイシング エイプ(R)(A BATHING APE(R))」と「ヒューマン メイド(HUMAN MADE)」を手掛けるNIGO(R)とのコラボレーションを発表したばかりだ。

最新号紹介

WWDJAPAN Weekly

原宿・新時代 ファッション&カルチャーをつなぐ人たち【WWDJAPAN BEAUTY付録:中価格帯コスメ攻略法】

「WWDJAPAN」4月22日号の特集は「原宿・新時代」です。ファッションの街・原宿が転換期を迎えています。訪日客が急回復し、裏通りまで人であふれるようになりました。新しい店舗も次々にオープンし、4月17日には神宮前交差点に大型商業施設「ハラカド」が開業しました。目まぐるしく更新され、世界への発信力を高める原宿。この街の担い手たちは、時代の変化をどう読み取り、何をしようとしているのか。この特集では…

詳細/購入はこちら

CONNECT WITH US モーニングダイジェスト
最新の業界ニュースを毎朝解説

前日のダイジェスト、読むべき業界ニュースを記者が選定し、解説を添えて毎朝お届けします(月曜〜金曜の平日配信、祝日・年末年始を除く)。 記事のアクセスランキングや週刊誌「WWDJAPAN Weekly」最新号も確認できます。

@icloud.com/@me.com/@mac.com 以外のアドレスでご登録ください。 ご登録いただくと弊社のプライバシーポリシーに同意したことになります。

メルマガ会員の登録が完了しました。