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万博開催に向けて再開発が進む大阪・梅田 街作りの仕掛け人3人が考えるコミュニティー構築

 2025年に万博開催を控える大阪では、現在、梅田地区で「うめきた2期」(1期では13年にグランフロント大阪が開業)と呼ばれる再開発が進められている。その一環として、梅田とその周辺エリアを対象とした未来のための街作りプロジェクト「クリエイティブ オクトーバー ウメダ」が19年10月に始動。第1回目のイベントが、10月25日〜11月3日の10日間、梅田とその近隣の中津、中崎町で開催された。

 「クリエイティブ オクトーバー ウメダ」は、ファッション、クリエイティブ、アート、グルメなどのコンテンツが溶け合う梅田の街の魅力を伝える5つのプロジェクトの総称だ。アート、ファッション、フードのお祭り「イコール=フェスティバル イン 中崎町」、アジアの次世代クリエイターが集まる新感覚のアートフェア「アンノウン アジア アート エクスチェンジ オオサカ」、ニューヨークのブルックリンで話題のフードマーケットと提携した「スモーガスバーグ大阪」、街を舞台にしたコンセプチュアルアートのイベント「ザ シティ――社会を彫刻せよ――」の各プロジェクトが、会期を合わせることで国内外から梅田エリアへの人の呼び込みを狙った。阪急阪神不動産と共にプロジェクトを仕掛けたのは、PRやイベント制作等を主な業容とするワンオーと、オフィスの緑化などグリーンインフラ事業を手掛ける東邦レオ。各社の担当者に、梅田と周辺エリアの今後や具体的な取り組みについて聞いた。

鼎談参加者

谷口丹彦/阪急阪神不動産開発事業本部うめきた事業部長兼都市マネジメント事業部部長(以下、谷口)

松井智則/ワンオー社長(以下、松井)

久米昌彦/東邦レオ グリーンディベロップメント担当(以下、久米)

――既存の5つのプロジェクトをまとめて、今回「クリエイティブ オクトーバー ウメダ」を立ち上げた背景は。

松井:これまでは5つがそれぞれにイベントを開催していたが、ミラノサローネのようにひとつの大きな枠のなかで時期を合わせて開催したほうが広く集客できる。そんなイベントを梅田でやろうと、主催者全員で話し合って決めたのが、「クリエイティブ オクトーバー ウメダ」だ。

――ワンオーは梅田の隣の中崎町で、東邦レオも同じく隣の中津でこれまでイベントを企画していたが、それぞれに阪急阪神不動産とつながりがあった。そもそも、どんなきっかけで知り合ったのか。

谷口:阪急阪神不動産は梅田などに所有する資産を活用して街作りを手がけ、大阪を盛り上げていくのが役割だ。これまで、梅田の中心部でオフィスや商業施設などの開発を手掛けてきたが、(オフィス、商業施設ばかりでそこに住んでいる)生活者がいない梅田の街は、世界から見ると全くおもしろくない。梅田が世界から注目される魅力的な都市になるには、周辺も含めた広域で魅力を創出する必要がある。また、サステナブルな成長のためにも、周辺の活性化は重要な課題だという認識があった。中津と中崎町は個人的におもしろいと感じた町。建物の再開発だけではなく、コミュニティーの活性化によって、(大阪を盛り上げるという)目標を達成できると思った。ワンオーが東京・渋谷で行ってきた街のイベント「シブヤ ファッションフェスティバル」の話を聞いて、それをぜひ大阪でもやってほしいというところから、ワンオーの中崎町のイベントはスタートした。

松井:梅田には他の都市にはない雑多な雰囲気がある。周辺エリアを含めて梅田全体として魅力を創出すれば、よりおもしろいのでは思った。中崎町は、(近代的な)梅田のすぐ隣に、(昭和にタイムスリップしたようなレトロな雰囲気のまま)存在するからこそおもしろい。梅田を訪れる人たちのムードもこの20年間で大きく変わっている。古着店やカフェ、雑貨店が多い中崎町にアートを持ち込んで、梅田の中心部とつなげようということを意図した。

――具体的には。

松井:中崎町にはおもしろい才能の持ち主が大勢いるのに、発表の場が自分の店しかなかった。1店舗だけが話題になったとしても、ムーブメントは起こりにくい。そこで、広く中崎町に人を集客できるプラットフォームとして、約80店舗が参加するイベント「イコール=フェス」を立ち上げた。ただ、東京の会社が突然やってきてフェスに参加してほしいと呼びかけても信用されない。われわれは約2年前に中崎町に店舗を開設し、街の人とのネットワークを築き、コミュニケーションを大切にしてきた。

谷口:当社も水面下でそのお手伝いをしていた。一方、中津ではニューヨークのブルックリンで支持されている食のイベント「スモーガスバーグ」を阪急電鉄主催で行っている。今回で3回目の開催だ。中津をどうおもしろくするかについては、東邦レオにもご協力いただいている。中津は現在、JRの線路で町が分断されている。ただ、線路が地下化されると街がひとつになり、グリーンインフラ事業を手がける東邦レオにとって有望なエリアになると考えた。

久米:われわれも中津(の街おこしプロジェクト)に入るなら拠点を持ちたかったので、ビルの一室を借りることにした。そこが吉本興業が11月にオープンする芸人・クリエイターのためのコワーキングスペース、「ラフアウト中津」に発展した。同スペースが入る築50年のビルは、梅田初の高級賃貸マンションだといい、かつては西川ヘレンさんも住んでいたそうだ。ビルの持ち主の企業も、地域にもっと溶け込まないといけないという思いが強く、中津をよくしていこうと意気投合した。

谷口:そのように、(ビルの持ち主などの)地域をサポートする人たちと、(東邦レオやワンオーなどの)仕掛ける人たちが融和するだけでも、梅田は新たな魅力を持ち始めていると思う。「スモーガスバーグ」開催を機に気づいたことは、大阪の料理の質やセンス、クリエイティビティがあまり知られていないこと。そこで、中津は食をキーワードにプロの料理人や料理人をめざす人が集まる場所にしていきたいと考えている。

――街作りは、外から人を呼び込むだけでなく、街の中で働く人たちの仕事が成り立つ環境作りも重要だということか。

松井:個人が家賃5〜20万円の物件を借りて古着屋をしたり、自分の作品を発表したりしているだけでは(ビジネスとして)厳しい。エリア内外から人が集まるプラットフォームを作り、そこに参加するアーティストを増やしていくことで、その土地ならではのビジネス環境を作ることができる。「イコール=フェス」では、大阪のアーティストが多数参加し、その人たちが注目される環境作りを目指してきた。

久米:東邦レオグループが中津で行っているイベント「ザ シティ」は、コミュニティーディベロップメントが目的だ。人が日常的に集う生き物みたいな場の創出は絶対必要。そのために、ぼくらは黒子に徹し、街の人を主役にしている。ただ、元々そこにいる人たちだけだと固まってしまうので、僕らは新しい風を起こす役割を担っている。商店街には昔ながらの営みが残っているので、それらを残しながら街を魅力的に変えていくためにはどうすればいいのかを、問いかけながら進めている。そうしたコミュニティー作りの活動そのものが、「社会彫刻」という(芸術の)分野になる。

――そうは言っても、活動に理解がある人ばかりではないのでは。

久米:衝突もありだと思う。衝突することで家族みたいな関係が築かれる。そのためにも定期的に話し合うことは必要だ。ただ、中津の人たちは寛容性がすごく高い。

谷口:開発といっても、昨今は単純に建物を(壊して建て直すという)再開発をする時代ではなくなってきている。一方で、古い建物がいくらレトロで雰囲気がいいからといって、残し続けることが絶対だとも限らない。われわれが関与することで、むしろ、地域の人たち自身が後押しされながら自発的に街を変えていく。いわゆる市民参加型の街作りの方が、サステナブルな成長を続けられると確信している。ワンオー、東邦レオ、阪急阪神不動産の三社は同じ思いで一致している。今後、梅田がグローバルに発展していくためには、重層的で多層的な魅力ある街でないといけない。中心部だけでなく、周辺エリアにも暮らしがあり、スモールビジネスで働く人たちがいることが都市の魅力につながる。そのプラットフォームを作るのが当社の役割だ。

――今後やりたいことや課題は。

久米:大阪万博が開催される25年に、中津万博をしたい。世界唯一の「社会彫刻」の聖地としての中津で、世界中から集まったアーティストたちによるアートイベントを考えている。もちろん、街の人と協力しながら、街をよくする活動にアートの手法で寄与していきたい。

松井:これまで“点”で行ってきたイベントが面に広がりそうな気がしている。今後注力していきたいのは、海外への広報活動。弊社のパリオフィスで、梅田の魅力を発信するイベントを企画してみてもおもしろいかもしれない。

谷口:海外観光客を呼び込む活動は、グランフロント大阪の開業時から梅田でも取り組んできた。今後は、ビジネスインバウンド(ビジネスの海外からの呼び込み)がターゲットになる。そのためには、働きやすいだけでなく住みやすく、外国人にも溶け込めるコミュニティーの機能が街に求められる。個人事業者や中堅クラスの企業を大阪に誘致することも必要になるだろう。